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持込成功の秘訣
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第1回 デビュー作も持ち込み。多読が生んだ訳書の数々
持ち込み企画の採用確率8割を誇る弓場隆さん
Takashi Yumiba
約10年前まで、弓場氏は予備校で英語を教えていた。今は、年間5冊ほどの訳書をコンスタントに世に送り出す出版翻訳家だ。8年間にざっと40冊の訳書が出版されたが、そのうち出版社からの依頼で訳したものは1冊だけ。残りの39冊はすべて自身の持ち込みから翻訳出版が決まったものだ。翻訳家としてのデビューも、もちろん持ち込みだった。

「教える仕事には向いていなかったようです。私は生徒の意欲を引き出す授業ができませんでした」と苦笑する弓場氏。「日本の英語学習ではテストで点をとることばかりが強調され、本来の目的がわからなくなっている。英語学習の本来の目的はコミュニケーションです。それは会話に限らない。本との対話もコミュニケーションのひとつ。そんなわけで私は、教えることよりも自分で訳すことに意義を見いだすようになりました」

英語教師をしながら多読を始めた。読むうちに訳したい原書が次々と見つかった。初めての訳書となった『自然の恵み健康法』(春秋社刊 1998年)もそのひとつ。原書を読んで惚れ込み、類書の出ていた版元に持ち込んだところ、編集者に気に入ってもらえた。

次第に翻訳の仕事に専念したいと思うようになり、英語教師の仕事を辞した。以来、多読をし、自身で訳したい原書を見つけ出して出版社に持ち込むというスタイルは今も一貫している。

「はっきりいって私は翻訳がそれほど上手ではありません。ですから、自分で積極的に持ち込みをしなければ、一生待っていても出版社からお声はかからないと思います。でも自分で原書を発掘すれば、良書はいっぱい見つかります」

自分で原書を発掘して企画を持ち込むタイプの翻訳者は、かなり少数派だ。でも翻訳者としては、多読をし、自分の力で原書を発掘するほうが合理的だと弓場氏は言う。

「出版社としても、売れそうな原書なら、実績のある翻訳者に頼みたいと思うもの。となると、新人翻訳者にまわってくるのは、あまり売り上げが期待されていないものということになります。それでは、いつまでたっても収入は安定しません。それに、仕事は待っていても来るとは限らない。だったら自分で良書を発掘した方が早い」

中途半端な努力をしても中途半端な結果しか出ない。やるからには、とことん努力をすること。

「新人翻訳者は儲からないものと諦めている人も多いようですが、努力をせずに待っていてもダメ。普通の人の10倍努力すれば、必ず結果は出ます」
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