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  情報コラム
アンゼたかし映像翻訳トーク!トーク!トーク!

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菊池浩司×アンゼたかし
記念すべき第1回目のゲストは菊地浩司さん。現役で活躍する字幕翻訳者としては、戸田奈津子さんに次ぐキャリアを持つベテラン翻訳家であり、映像制作会社〈ACクリエイト〉の創立者・代表でもある菊地さん。謎に包まれた(?)菊地さんの少年時代の話から、劇場作品の字幕翻訳者として活躍するまでの波乱万丈の経緯など、アンゼたかしさんが鋭く切り込みます。
【2013年8月、〈ACクリエイト〉本社にて取材】
1,000作品以上を訳してきたベテラン翻訳家の少年時代とは?

アンゼ: 記念すべき第1回のゲストは、大先輩の菊地浩司さんです。今日はお時間を取っていただきありがとうございます。

菊地: いやいや、かまわないよ。

アンゼ: 菊地さんのことはウィキペディアにもいろいろ載っているので、そこではあまり触れられていない部分のお話を、今日はお伺いできればと思います。

菊地: そうそう、ウィキペディアの記事は誰が書いたんだろうね?

アンゼ: 菊地さんのファンじゃないですか?

菊地: ファンなんていないと思うけどなあ(笑)。

アンゼ: 最新作の『ホワイトハウス・ダウン』、昨日見てきました。菊地さんにとって何作目の翻訳作品か、覚えていらっしゃいますか?

菊地: 覚えてないなあ(笑)。いちばん仕事をしたのは40代のころで、当時は年間60作くらい翻訳してたから、40代の10年間だけで600作は訳してる。だから、1,000作は越えてるだろうね。

アンゼ: 1,000作以上ですか……それはすごいですね。

菊地: 最近、二次使用許可の確認がよく来て、「この作品はあなたの翻訳ですか?」とか訊かれるんだけど、ぜんぜん覚えてないんだ(笑)。

アンゼ: 1,000作品も覚えられませんよね(笑)。そんな長いキャリアを持つ菊地さんが、どのような経緯で翻訳家になったのか、今日は子供時代の話からお伺いできればと思います。たとえば、小学校時代はどんな子供でしたか?

菊地: 小学校時代と言えば、1950年代……いい時代だった。兵庫県の芦屋に住んでいたんだけど、近所にはまだ田園風景が広がっていて、凧揚げにコマ回し、小川でメダカを取ったり、海で釣りをしたり……

アンゼ: では、家にいるよりは、外で遊ぶほうが好きだったんですね?

菊地: 当時は外で遊ぶしかなかったからね。ただ、昔から読書も好きだった。実は、小学校2年生のときに腎臓病にかかってしまって、学校にも行けず4ヵ月間ずっと家にいたんだけど、当時はラジオを聴くか、本を読むかしかなかったから、『少年少女世界文学全集』みたいなのを読み漁ったよ。『車輪の下』とかね。

アンゼ: テレビはまだなかったんですか?

菊地: テレビを買ったのは、ぼくが小学校の3年生のときだから、1955年か56年くらい。テレビ放送が始まったばかりのころで、近所にはまだテレビのない家が多かった。だから、放送が始まる夕方5時になると、近所の子供たちがみんな集まるんだ。

アンゼ: 映画やドラマにもよくそういうシーンが出てきますよね。なんだか光景が目に浮かびます。では、映画を初めて劇場で観たのはいつですか?

菊地: 初めて観たのは小学校2年か3年のとき、ディズニーのアニメ映画だったなあ。『ダンボ』かな。

アンゼ: そのころは、白黒映画だったのでしょうか?

菊地: いや、カラーだったよ。ディズニーはカラー化が早かったんだ。あと好きだったのは、「ゴジラ」シリーズかな。

アンゼ: 「ゴジラ」シリーズは、ぼくも子供のころ白黒のを見ましたけど、海から出てくるシーンとか、すごく怖かったのを覚えてます(笑)。ほかに、そのころ観た映画で印象に残ってる作品はありますか?

菊地: なんといっても、中学校のときに観た『ウェスト・サイド・ストーリー』だね。音楽も映像も斬新で感動したよ。実は、のちにビデオになったとき、その『ウェスト・サイド・ストーリー』をぼくが翻訳したんだよ。いまでもときどき劇場にかかることがあるけど、あれもぼくの下手な翻訳なんだ(笑)。

アンゼ: 下手だなんて(笑)……でも、子供のころ観ていた名作を訳すっていうのは、すごい巡り合わせですよね。感慨深かったんじゃないでしょうか。

菊地: そうだね。ただ、ぼくはビデオの草創期に仕事を始めたから、名作を訳すのは珍しいことじゃなかった。その当時の大御所の翻訳家は「ビデオ? そんなもの聞いたこともない!」って感じだったから、ビデオ会社も先生方には頼めない。昔の原稿を使うっていう発想もなくて、よく仕事がまわってきたんだ。だから、昔の名作はたくさん訳してる。それで、先生方の名訳が残らないで、ぼくのが残っちゃったわけ。ほんと、すいませんって感じだよね(笑)。「ゴッドファーザー」のパート1と2とかも、ビデオではぼくが訳しちゃってるんだよ。

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