【アメリア】800字エッセイ
読み物
 
Ballon d‘Or (バロンドール)
Capone さん

 なでしこジャパンのキャプテンの沢選手がFIFA2011年度の年間女子最優秀賞(バロンドール)を受賞した。
さて、バロンドールとはフランス語で「黄金の球」であることはこのコラムの読者ならば当然有している常識である。英語に直訳すればBall of Goldである。英字新聞などの英訳は“The Golden Ball”とされている。
ん?待てよ、どこかで聞いたような響きである。
40数年前、大学のクラブ、英語会のミーティングでこれが話題になったことがある。例の、♪たんたん狸のXXXXは・・・♪で始まるあの歌の英訳を議論していた時のことだ。
最初のXXXXの英訳で意見が二分されたのである。Ballに依存はなかったがgoldenなのかgoldなのかで意見が分かれた。英語会の俊英にとってもかなり高度な難易度の高い問題であった。結局我々の間では結論が出ず、顧問の英国人に意見を求めた。この先生は前職がBank of Englandの銀行員と言う教養も申し分ない立派な人物であった。この問題はこの先生をしてもしばし回答を出すのを躊躇わせるほどの難題であった。何度か口の中でもごもごとgoldとgoldenを繰り返した後ようやく「gold ballであろう」と結論した。
そして完成した例の歌の英訳は、♪“Ba,Ba,Badger’s gold ball, swinging slowly without wind”♪であった。
ではなぜバロンドールの場合はgoldenと訳されるのだろう。どちらも同じ「金の玉」ではないか。いや、実は同じではないのである。バロンドールの方の「金の玉」は材質も硬質な人工のballであるのに対し、歌に出てくる「金の玉」の方は生物の雄が有する臓器の一種でタンパク質で形成された軟質の素材で、蹴られたりすればとても痛い。この違いこそが教養のある英国人をも一時狐疑逡巡させたのである。Golden ballは蹴れば痛いが、gold ballは蹴られると痛いのである。 何と明快かつ截然たる差であろうか。
最後になったが、なでしこジャパン、「金の玉」賞の受賞、おめでとう!

(12.2.02)