【アメリア】Flavor of the Month 7 辰巳敏彦さん
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Flavor of the Month
<第7回>   全3ページ





  




坂田:今回のゲストは辰巳敏彦さんです。こんにちは。よろしくお願いします。

辰巳:こんにちは。よろしくお願いします。

坂田:辰巳さんは、総合商社、製紙会社で50年に渡って社内翻訳や通訳に携わってこられたそうです。1995年からアメリアの会員になり、同時にフェロー・アカデミーの授業にも通い始め、現在7年目。翻訳者として大ベテランの立派な経歴をもつ辰巳さんが、なぜフェローで勉強を始めたのか、そのあたりから教えていただけますか。

辰巳:翻訳の勉強を始めた理由ですか? 僕もだんだん年をとってきて、この先どうしようかと考えたときに、これまでのキャリアを生かして「英語の職人になってやろう」と思ったわけです。でもね、僕のような古い世代になると、ヒアリングやスピーキングの分野では、大勢の帰国子女も含めて、どんどんネイティブのレベルに接近している最近の若い世代にはかないっこないわけです。そうすると、読み書きで取り組める翻訳しか残された道はない――それが翻訳の勉強を始めた理由です。それに、会社で社内翻訳をやっていると、社内に僕の訳したものをチェックしてくれる人がいなかった。会社の責任者の手紙を英訳してもノーチェック。これは怖いことです。だから誰かにチェックしてもらいたかった。ちょうどフェロー・アカデミーが会社から近かったので、ここに来たら先生にチェックしてもらえるのではという気持ちもありました。

坂田:それが7年前のことですね。

辰巳:ええ。本当のことを言うと、50年間もビジネスで英語に携わってきたのだから、「僕は英語がかなりできる」と腹の中では思っていたんです。ところが、最初にとった授業が柴田耕太郎先生だったのですが、先生の授業のお話をうかがったり、先生がお書きになった『英文翻訳テクニック』を読んで、僕はペシャンコになっちゃった。でも、"Better late than never."という言葉があるでしょう。始めるのは遅くても、何もしないよりはいいじゃないですか。だから、それ以来ずっとフェローで翻訳の勉強を続けていて、今も頑張っているわけです。

坂田:"ペシャンコになった"とは、どういうことですか?

辰巳:つまりね、僕の英語は間口が狭すぎる。製紙業の中だけなんです。その分野の中では深いかも知れないけれども、広さがない。フェローに来るようになって思ったのは、「毎日会社で繰り返している英語は、なんて易しいんだろう!」ということ。アメリアのトライアルみたいな、あんな意地悪な英語は出てきません! 慣れもあるのでしょうが、もっとビジネスライクな、易しいものですよ。

坂田:これだけ経験を積まれた辰巳さんにとっても、自分の未知の分野を訳すとなると、難しいものなのですね。

辰巳:それに僕がそれまで使っていた英語は"手段"だった。会議のために英文資料を訳しても、それを読むのはビジネスに関係している人だけ。内容のポイントがわかればいい。でも、フェローで教えてくれる翻訳は"目的"なんですよね。マーケットを意識した翻訳。先生方なんて、実にビューティフルな訳文をお書きになる。社内翻訳はスピードが求められますし、内容が間違いなく伝わればよいのであって、関係者以外の人々に読んでもらう必要はなかった。だから、そんなマーケットに受け入れられる日本語の文章を書こうという意識もなかった。これじゃいけないと思いました。

坂田:フェローで翻訳に磨きをかけて、マーケットに通用する実務翻訳家になろうと思われたわけですね。

辰巳:ええ、なれたらの話ですがね。ところが、社内翻訳者というのは急な仕事が多くてね。日時の決まった常務会のために急遽英文資料を訳すとか。僕のオフィスはフェローから歩ける距離なんですが、夜9時頃授業が終わって、それからオフィスに戻るということがよくありました。でも、昨年やっと退職をしまして、今は非常勤なんです。最近は仕事があるときはメールで送ってもらって自宅で翻訳をしているので、自由になる時間が増えました。

坂田:サラリーマン生活を終え、翻訳の勉強に専念できるようになったわけですね。

辰巳:今は、吉本先生の授業に出るようになって3年目なんですが、勤めていた昨年の秋までは、仕事が忙しくて復習ができなかった。でも、先生の授業は蘊蓄が深いんですよね。あの先生の授業に出ていて、過去2年間復習ができなかったことを、いっとう後悔している。講座の合間に、行間にも、いろいろとあるんですよ。大切なことが散りばめられているわけです。ところが復習しないと、それが身につかない。翻訳の勉強に時間がとれるようになって、とりあえず1年間、復習をしっかりやろうと決意し、昨年の10月から頑張っています。

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