ウォール・ストリート・ジャーナルの金融経済記事の翻訳でご活躍の藤澤さん Flavor
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Flavor of the Month
<第108回>  全5ページ
目指すところは「翻訳の奇術師」。英語独特の格言やユーモアを、日本人にもわかりやすく仕上げていきたい。

岡田 :現在は金融・経済翻訳者として毎日ご活躍の藤澤さん。今後はどんな翻訳、どんなお仕事を目指していますか?

藤澤 :分野としては今後も金融や経済の分野でスキルを磨いていきたいと思っています。そしていつか金融・経済翻訳の講師として、自分の経験や知識を伝えられるようになれれば本望ですね。目指す翻訳は、原文に忠実でありながら、日本語として自然でニュアンスが正確に伝わる文章です。以前私が訳したブルース・ベンダーソンさん(小説家、エッセイスト、翻訳家)のコラムの一節を紹介させてください。

「一語一句を厳密に訳していく訳など存在しない。うまい翻訳をするには奇術師でもあるべきだろう。本文の一部を手品師の鳩のように跡形もなく消し、自らの感覚で部分的に手直しして、全く違う場所に復活させる。これはすべての生き生きとした魅力あふれる翻訳の決まりの悪い事実である」
これを読んだとき、実に見事に翻訳の核心をついていると思いました。

岡田 :なるほど、「奇術師」とは深い表現です。

藤澤 :格言やことわざ、たとえ話のようなものの中には、そのまま日本語に訳しても意味が通じないものもたくさんあります。皮肉やユーモアのセンスも欧米と日本ではだいぶ異なるので、その辺りを日本人にうまく伝えたいと思っています。以前は悩み苦しみましたが、最近ようやく、それをチャレンジとして楽しめるようになりました。

岡田 :まさに翻訳の真意、ですね。「決まりの悪い事実」というところに翻訳者が抱える苦悩がうかがえます。藤澤さん、最後に翻訳学習中の読者の皆さんへメッセージをいただけますか?

藤澤 :そうですね、最初は挫折や失敗もあるかと思いますが、とにかく一つひとつの仕事にベストを尽くしてコツコツと実績を積み上げていくしかありません。経験が自信を生み、自信がチャンスにつながると信じています。英語、日本語、それに翻訳の勉強は一生続くと思いますが、お互いに頑張りましょう。

岡田 :藤澤さん、今日はお忙しい中どうもありがとうございました。藤澤さんの記事を見て、経済の動向を知る方もたくさんいらっしゃるはず。今後も「奇術師」のような翻訳技で、読者の方の刺激になる記事を送り出していってください。ますますのご活躍を期待しています!

■ピンと背筋のとおったジェントルマンの藤澤さん。さすがはニューヨークの高級ホテルのバトラーさん。物腰もエレガントで、話しているこちらも「ちょいセレブ」な気分にさせてくださいました。私も柄になく丸の内あたりのカフェで世界経済をチェックしてみたくなりました。カッコだけ? いえ、奇術師の記事なら大丈夫!

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