在宅フリーランスの翻訳者としてご活躍の坂本真理さん。 Flavor
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Flavor of the Month
<第116回>  全5ページ
独立1年目から、大学・研究機関の文書の翻訳を開始。 英訳の仕事にチャレンジし、ネイティブチェッカーとのやりとりで飛躍的に力をつける。

高橋 :その他には、どんなお仕事をしたのですか。

坂本 :インドに本拠があるアカデミック専門の翻訳会社によくしていただいて、この会社のお仕事で、学術分野のお仕事の面白さに開眼しました。ただ、本来、この仕事では翻訳実務経験7年以上の方を求めていたらしくて、私のことを気に入ってくださった担当コーディネーターの方が離職されると、こちらのお仕事は遠のき、あまりお仕事を深めていくことは出来ませんでした。その後しばらくして、今もお取引がある環境系のシンクタンクから声をかけていただきました。世界各国の環境法規に関する動向をモニタリングして速報を配信するとともに、重要性に応じて法令やガイドラインを訳して企業に届けるのが主なお仕事です。速報記事の作成、法律、規則類、ガイドラインの英日・日英翻訳を行っています。NEDOで携わった再生可能エネルギー分野のみならず、弁理士試験の勉強で暗記した法律の条文や知的財産の知識が本当に役に立ち、何ごとも無駄ではないんだなと実感しています。

高橋 :2012年から、防災、除染分野のお仕事もされたんですね。

坂本 :はい、東日本大震災後の除染活動について、IAEA(国際原子力機関)と日本側とのやりとりを翻訳するもので、技術文書から契約書のような実務的なものまでさまざまな文書を手がけました。一読してぱっと内容が理解でき、現場の方々が意思疎通しやすいものにしようと本当に力を入れて取り組ませていただきましたが、翻訳請負先が入札で決まるため、残念ながら2年で終了しました。非常にやり甲斐のあるお仕事でしたし、取引先が広がってきた今は、こうした情熱を絶やさずにできるお仕事をしたいと思っています。独立して3年ぐらいはがむしゃらで、来るものはなんでも引き受けていましたけれど、引き受けすぎてもよくないと思うこともありますので。

高橋 :さらに、今は学術系のお仕事もなさっているんですよね。

坂本 :そうですね。現在は、英日が4割、日英が6割程度で、主に大学・研究機関の論文や研究実施計画、広報資料、ウェブサイト、学会の研究ハイライト集、国際機関の政策提言資料やニュースレターなどを手がけています。独立して半年ほど経った頃、大学・研究機関を主なクライアントとする翻訳会社から、米国環境保護庁の報告書の和訳の打診がありました。原文を見て難しいなとは感じましたが、頑張ってやってみたら及第点だったようで、それから大学・研究機関のお客様の論文や研究に関する資料、評価報告書などの和訳のお仕事をいただくようになりました。学術分野の和訳にもようやく慣れてきたある日、同じ会社から今度は英訳の打診を受けました。「とてもできません。和訳でいっぱいいっぱいです」と一度はお断りしたのですが、ネイティブがつくから一度やってみてください、と言われ、自信はないながらもやってみたんです。すると、ネイティブの方がすごく丁寧にみてくださって、稚拙な表現の英文も、非常に志が低い言い方で恐縮ですが、ちゃんとした英語の論文になったんです。まさに、お金をいただきながら、添削指導を受けている状態でした。私の英訳をネイティブの方が添削すると、原文と乖離するところが出てくるので、それをまた私が直して趣旨を説明し、何回も突き合わせをします。このやりとりをくり返すあいだに、凄く力がついたと思います。英文法はもちろん、英語として正しいメッセージを発する動詞の選び方や、冗長な表現を回避する方法が分かりましたし、複数と単数、冠詞の区別もつくようになりましたので、それが和訳にも生きてきて、本当にいい勉強になりました。オン・ザ・ジョブトレーニングしていただけるようなお仕事に恵まれて、本当にラッキーでした。

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