絵本の翻訳者としてご活躍の小寺敦子さん。 Flavor
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小寺 敦子さん

第117回

自分で見つけた原書が初の訳書に!そのあと続けて、科学ものの「しかけ絵本」を3冊訳すことに 小寺 敦子さん

Atsuko Kodera
自分で見つけた原書を持ち込み 翻訳家デビュー

池守 :今回のゲストは、昨年、『ぼくが本を読まない理由(わけ)』(PHP研究所)で出版翻訳家デビューを果たした小寺敦子さんです。その後も引き続き児童書の訳書を出されている小寺さんですが、この最初の訳書は、小寺さんがご自身で原書を見つけたそうですね。

小寺 :はい。日本出版クラブが開設している「洋書の森」のことをアメリアで知りまして、その図書室に初めて行ったときに、いきなり出会ってしまいました。原題は『My Life as a Book』というのですが、読書そのものがテーマとなった本はおもしろいな、と思ったのと、読んでみたら文章が読みやすくて読む楽しさを実感できたんです。

池守 :それで、シノプシスを書くことにしたんですね。

小寺 :ええ。フェロー・アカデミーで「リーディング講座」を受講していましたが、勉強以外でシノプシスを書いたのはこのときが初めてでした。「洋書の森」で、持ち込みをお手伝いしてくださるコーディネーターさんの存在を知り、連絡をとりました。そのとき出版のあては全くなかったのですが、勉強のつもりで1冊まるごと訳し、コーディネーターさんにお願いして、あちこちの出版社に声をかけていただきました。

池守 :そして見事企画が通ったということですね。企画が通るまでにどれくらいかかりましたか?

小寺 :本を見つけたのが2013年の夏で、出版が決まったのが2015年の4月でしたから、2年近くかかったことになりますね。実は、出版が決まって、しかも翻訳者として採用していただけると連絡をいただいたのが4月1日だったんですよ。思わず「エイプリルフール?」と思ってしまいました。

池守 :ほんとですね! それで、その時はすでに全訳されていたということですが、そこから刊行まではスムーズに進みましたか?

小寺 :いえいえ、全然。刊行を前提に訳文の見直しをすることになったんですが、その際に担当の編集者さんと小学校5年以上の漢字にはルビをふる、という取り決めをしました。ただ、実際に見直しを始めたら、熟語や複合動詞のときはルビをふるより、漢字を開いたり別の表現を探したほうが読みやすいのではないかなど、いろいろと迷ってしまいました。

池守 :子どもの本の翻訳ならではの難しさですね。

小寺 :他にも、登場人物の性格を決定づける「ぼく」「おれ」「おまえ」「きみ」などの人称代名詞をどう使い分けるか、基本的に現在形で書かれている原文の時制をどこまで忠実に反映するか、訳注はどの程度、どうつけるのが好ましいのかなど、訳しながら何度も揺れてしまいました。また、見ていただければ分かると思うんですが、この本は欄外に、原文に出てきた英単語とその意味を表すイラストが載っていて、そこに日本語も併記したのですが、訳者としてはプレッシャーでした。

池守 :それは確かにプレッシャーですね。ただ、それもこの本の魅力のひとつになっていますよね。それと、この本は日本語の本としてはめずらしく横書きですね。

小寺 :はい。イラストを横に配置する関係もあったと思います。縦書きと横書きの両方のレイアウト見本を作ってもらい検討した結果、横書きに決まりました。一行の文字数が少ないためレイアウトされたのを見て、今度は一文の長さが気になったり、句読点を打つ頻度に悩んだり……。最後まであれこれ悩みました。

池守 :でも、その甲斐あって刊行後1年足らずで増刷になったそうですね。おめでとうございます。

小寺 :ありがとうございます。

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