絵本の翻訳者としてご活躍の小寺敦子さん。 Flavor
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Flavor of the Month
<第117回>  全5ページ
英文学の研究から 英語講師に

池守 :今は児童書の翻訳をされている小寺さんですが、子どものころから読書好きだったのですか?

小寺 :はい。岩波少年文庫をよく読んでいて、その頃から外国の作品が好きでした。

池守 :それでは、英語の学習についてはいかがですか?

小寺 :う〜ん。英語好きというより、文学好きな子でしたね。それと、当時は勉強よりも部活動でバイオリンを頑張っていました。中学校は受験で入ったのですが、その後は大学まで受験なしで進学できる学校だったので、自覚して英語の勉強をし始めたのは、大学の文学部英文学科に入ってからです。大学3年生の夏には3週間イギリスに短期留学もしました。卒業論文のテーマはアメリカの詩人エミリー・ディキンスンで、その頃には研究を続けたいという気持ちになっていて、就職活動はせず、受験をして大学院に入りました。大学院の修士論文も同じくディキンスンを取り上げて、論文のために詩の翻訳もしました。

池守 :その研究がきっかけで、翻訳の道を志したのですか?

小寺 :いえ。詩は、読み方によってさまざまに解釈できるので、翻訳するのがとても難しかったですし、その時は翻訳の道に進むことは思いつきませんでした。それよりも、当時の私は、大学に残って研究者になるかどうか、ということで悩んでいました。英文学は実社会とはあまり繋がりがない分野だということも気になりましたし、自分が文学の研究者としてやっていけるんだろうか、という不安もありました。それで、大学院で教職の免許を取って、修了後は短期大学と看護専門学校で英語講師として働き始めました。

池守 :講師の仕事はいかがでしたか?

小寺 :教えることに充実感はありました。「英文速読」「パラグラフ・ライティング」などの授業は自分の勉強にもなりましたし、「英語講読」の授業では、自分でテキストを選ぶことができたので、ロアルド・ダールの『マチルダは小さな大天才』、『オ・ヤサシ巨人BFG』、ローラ・I・ワイルダーの『大草原の小さな家』、ジーン・ウェブスターの『あしながおじさん』などを取り上げたんですが、そこで児童文学の魅力を再発見することができました。

池守 :課題をご自身で選べるとなると、やりがいもありそうですね。

小寺 :はい。ただ、実は講師になったのに人前に出るのが苦手でした。それに1コマの授業の準備にものすごく時間がかかるので、自分の力不足を痛感したのも事実です。それで、講師を始めた2年目の夏に4週間ほど、イギリスのヨーク大学に語学留学にいったりもしました。ただ、それでも講師を生涯の仕事にする決心がつきませんでした。そんな時、住まいの近くの和光大学に、翻訳家の大島かおり氏の翻訳講座があることを知り、受講してみたいと思ったんです。

池守 :ミヒャエル・エンデの『モモ』を翻訳された方ですね。

小寺 :はい。その講座で翻訳の難しさと同時に奥深さを教わり、初めて翻訳の面白さに目覚めました。他の受講生の訳文も配られるので、とても刺激になりましたし。週1回の講座だったと思いますが、毎回講義に出るのが本当に楽しかったです。半年間の講座終了後もメンバーで勉強会を開いたりしました。

池守 :ついに翻訳の道を歩み始めたんですね。

小寺 :はい。その後通信講座で出版翻訳やリーディングの講座をとったりして学習を続けました。ただ、出産後は子育てと、それに関わるもろもろに夢中で、翻訳を忘れかけた時期もありました。

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