【アメリア】Flavor of the Month 12 大西俊之さん
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Flavor of the Month
<第12回>   全3ページ


オンサイトのフリーランスは駆け出しの私には理想的な形態です

坂田:会社を辞めたというのは、翻訳の仕事を始めることになったということですか?

大西:いいえ、まだ翻訳の方は勉強中で、仕事はありませんでした。

坂田:では、会社を辞めて翻訳の勉強に本腰を入れ、なるべく短期間で仕事につなげようと考えたわけですね。

大西:そうです。

坂田:でも、会社を辞めるのは不安ではありませんでしたか? 奥様は反対しませんでしたか?

大西:もちろん不安でした。でも、カミさんの反対はありませんでした。カミさんのほうも、それまでは専業主婦でしたが、何か仕事をしたいと考えていた頃で、仕事をするならパートではなく専門的な事をしたいといっていたんです。それで、ホームページ制作のスクールに通い始めていました。当時は、私の仕事の都合で名古屋にいましたが、カミさんの実家は東京ですし、もとは東京で働いていましたので、ふたりとも新しく仕事を始めるなら東京がいいと思っていました。転職する上で年齢的なタイムリミットもあります。私はもう30歳でしたので、ぐずぐずしていられないと思い、会社を辞めて東京に戻ることに決めたというわけです。

坂田:家族の生計をすべて支えている立場にいると、翻訳の勉強に時間を割いたり、転職を考えたりするのに、勇気がいると思うのですが、大西さんの場合いかがでしたか?

大西:そうですね。それまで培ってきたものが大きい分、失うものも大きいですからね。

坂田:家族の理解が得られるかどうかも重要な点ですよね。

大西:それはいちばん大切なことだと思います。夫婦も、同じ考え方をもって、同じ目標をもったパートナーという関係が理想的ですよね。

坂田:奥様も「働くなら手に職を付けて専門的な仕事を」と考えていたあたり、大西さんと考え方が同じで、気持ちがよくわかったんでしょうね。

大西:そうですね。カミさんも家にこもりきりになるのが嫌だったようで、転勤先の見知らぬ土地では友達も少なく、仕事がしたいという欲求が出てきていたようです。

坂田:それで、ふたりで東京に移って、どのような形で翻訳の勉強を進めたのですか?

大西:翻訳の通信講座の受講を続けたのと、技術翻訳の通学コースに通ったりもしました。あとは情報を仕入れるために雑誌を読んだり、図書館に行って本を読んだり、インターネットのフォーラムに参加したり、それからアメリアのトライアルに応募したりといった感じでした。

坂田:会社を辞めた以上、目標は翻訳の仕事を始めることだったと思うのですが、ご自分ではどのように計画を立てていましたか?

大西:会社を辞めて1年ぐらいを目途に仕事を見つけられればなあ、と思っていました。しかし、全く経験がないわけですから、最初からフリーランスで家でひとりでやるとなると吸収できるものが非常に少ないでしょうから、できればオンサイトで働きたいと思っていました。

坂田:実際には、どんなキッカケで、どのような仕事が見つかったのですか?

大西:アメリアの情報誌に挟み込まれていた求人情報を見ていたら、あるローカライズ会社が日本法人を立ち上げたところで、スタッフを募集しているという情報が出ていました。職種は「オンサイトのフリーランス翻訳者」でしたが、「我が社で働きながら勉強をしませんか?」といった感じの募集内容で、経験を問わないというところも私にぴったりでした。そこに応募してトライアルを受け、無事合格してその会社で働くようになりました。それが東京に出てきて1年目ぐらいだったと思います。

坂田:お話を聞いていると、計画通り、とてもスムーズに翻訳の仕事にたどり着いたようですね。

大西:もちろん、仕事が決まらず、自宅でひとりで勉強をしていたときは、嫌になったこともありましたよ。マンションに住んでいたのですが、平日の昼間に男がひとりで出かけようとすると、近所の目が気になるものなんですよ。「あの人、一体何をしている人なのかしら?」ってジロジロと見られている気がして、気軽に散歩にも出られませんでした。ピンポーンって誰かが訪ねて来ても居留守を使って出なかったりしてね(笑)。

坂田:奥さんがフルタイムで働いていて、大西さんが自宅で勉強をしていた頃は、家事はどちらがやっていたんですか?

大西:うちは家事はどちらか時間のある方がやるというスタイルなので、当時は私も家事をやっていましたよ。洗濯や掃除もしたし、食事はカミさんが帰ってきてから一緒に作ることが多かったですね。自分では今でもかなり家事をやっているつもりです。いや、でもカミさんに言わせれば、それほど役には立っていないのかも知れませんけどね。

坂田:オンサイトのフリーランスという形態はいかがですか? メリット・デメリットはありますか?

大西:自分にとってはメリットのほうが多いですね。まず、まわりに大勢の人がいるという環境がありがたいです。仕事を進めるにあたっての疑問点もすぐに尋ねられるし、いろいろな最新情報も入ってきます。在宅フリーランスの場合でも今ならメールでやり取りすればいいだけですが、言葉はキャッチボールですから、タイムラグがなく、ちょっと行って、ちょっと聞けば済んでしまうという環境は、私にとって非常に魅力的です。

坂田:特に翻訳者としての経験を積みたいという人にとって、オンサイトは理想的と言えますね。ほかにもありますか?

大西:ツールが揃っているなど、作業環境が整っている点です。たとえば、マシンの調子が悪くなったときに、在宅だと自分ひとりでなんとかしなければなりませんが、オンサイトだととりあえず他のマシンを借りて仕事が進められますし、会社がマシンのメンテナンスをしてくれます。

坂田:オンサイトで働くフリーランスのデメリットはありませんか?

大西:在宅にくらべて自由度は当然落ちますから、規則や時間に縛られるのが嫌いだとか、自由が欲しいから翻訳者になったんだという方にはオンサイトは合わないかも知れません。でも、正社員の方とくらべるとコアタイムが決まっていないなど、かなり自由です。フリーランスは自分の裁量に任されていますので、たとえば結果として出来上がるものがいっしょであれば、1週間のうち1日自宅で仕事をするといったこともできるんです。

坂田:逆に、今日は仕事がないので会社に行かない、ということもあり得るわけですか?

大西:もちろん、可能性としてそういうこともありますが、在宅フリーランスの方よりは優先的に仕事をまわしてもらえますので、仕事はコンスタントにありますね。反対に、基本的に土日・祝日が休みですが、忙しいときには週末自宅で仕事をしていることもあります。金曜日に急な仕事が入って、月曜日の朝イチに納入しなければならない、そういうときに「何とかしてくれない?」って言われて、自分のスケジュールが合うのであれば受けたりします。

坂田:会社員には夏休みなどまとまった休みがありますが、フリーランス契約の場合は、そのあたりはどうですか?

大西:有給休暇というのはもちろんありません。働いたら働いた分だけお金がもらえるというシステムです。だから、風邪で倒れて休んでしまったりすると収入が減ってしまいますね。

坂田:その場合、受けていた仕事はどうなるのですか?

大西:社内の他の方に振ってもらうなど融通はききます。その点、在宅よりも楽ですね。

坂田:海外旅行に行きたいので1週間休みたい、ということもできるのですか。

大西:私はまだ3日以上の長期休暇は取ったことがありませんが、早めに申告しておけば取れると思いますよ。




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