【アメリア】Flavor of the Month 21 ハーパー保子さん
読み物
Flavor of the Month
<第21回>  全4ページ


教えてもらうことを素直に吸収できるようになったとき 翻訳の勉強が楽しくてしかたなくなりました


坂田
:そもそもハーパーさんが翻訳を仕事にしようと思ったきっかけは何ですか?

ハーパー
:以前は、長いあいだ英会話講師をしていたんです。でも、結婚をして、その後、生まれ育った大阪から奈良に引っ越したこともあって、徐々に仕事を減らし、ほとんど専業主婦の状態が何年か続いていました。そろそろ何かやりたいなと思って、まよわず翻訳を選んだのは覚えているのですが、なぜ翻訳だったかは記憶にないんですよ。おそらく語学力が生かせるから、みたいな安易な動機だったんじゃないでしょうか。子どものころは学校の図書館の本をぜんぶ読みたいと思うぐらい本好きだった、とか。それで、英語はそこそこできるんだから、子どもの本なら訳せるんじゃないかというオーソドックスな勘違いをして、その方面のコンテストに2度ほど応募しました。

坂田:その結果は?

ハーパー:もちろんまったくダメでした。中学時代からの友人で、海外の絵本の翻訳もしている二宮由紀子という児童文学作家がいるのですが、彼女の訳した作品なんかをいま見ると、とても私にはできないと思います。「子どもの本なら」なんて思ったことを、彼女や児童書の翻訳にかかわるすべての方々に土下座してお詫びしたいぐらいです。これはきちんと勉強しないと、かえって遠回りになると思い、数ヵ月後にフェロー・アカデミー通信講座で勉強を始めました。それが1997年の春です。同時に、アメリア(当時はFMC)へも入会しました。

坂田:翻訳の勉強は、どのように進めましたか?

ハーパー:とにかく、フェロー・アカデミーの通信講座とアメリアの定例トライアルで2年間みっちり勉強して、3年目から徐々に仕事に結びつけていこうという計画をたてました。アメリア内でその土台を作るために、まず最初にしたことは、各ジャンルの定例トライアルをひと通り受けて、自分に向いている分野を決めることで、これは予想通りノンフィクションになりました。次の目標は、そのノンフィクションでノミネ会員に登録されることでした。

坂田:計画はうまくいきましたか?

ハーパー:はい。定例トライアルにチャレンジし続けて、2000年の春に〈出版〉のノンフィクションでノミネ会員として登録されました。

坂田:すごい! まさに計画通りにノミネ会員になったわけですね。そこへ到達するまでの勉強法を、もう少し詳しく教えてください。

ハーパー:フェローの通信講座で受講したのは「STEP24」、「Beta24」、マスターコース「国際情報」(経済関係の記事を訳す講座)、マスターコース「ノンフィクション」の4講座です。かけもち受講の時期もありました。それぞれに面白くて身になったのですが、いろんな意味でいちばん印象に残っているのは「STEP24」です。

坂田:どんなふうに印象に残っているのですか?

ハーパー:それまで英会話を教えていて自分が生徒を評価する立場だったので、逆の立場になったとき、情けない話ですがすごく抵抗がありました。最初のうちは添削された部分を見て、私の解釈のほうが筋が通ってるのに、とかブツブツ言いっぱなしだったんです。4、5回そんなことを繰り返したあと、私は何をやってるんだろう、こんなことをしていても何も身につかない、とある日突然ふっきれて……。それからですね。教えてもらうことを素直に吸収できるようになって、勉強が楽しくてしかたなくなったのは。添削の先生が私のつまらないプライドに気づきながらも、うまく誘導してくださったおかげだと思っています。

坂田:そうですか。身につく勉強というものは、本来楽しいものなんでしょうね。楽しくないと感じている人がいるとしたら、それは身についていないということかもしれませんね。


ハーパー:この先生からはコース終了時にも、とてもありがたい総評の言葉をいただきました。といってもそのありがたさに気づいたのは、ずっとあと、共訳を終えて仕事が途切れたころのことですけど。引越し後の片づけで出てきた「STEP24」の答案をパラパラと見ていたら、総評のなかで「しっかりと目標を掲げて次々とそれをクリアしていく姿勢に、こちらも背筋を伸ばして立ち向かった」というふうに書いてくださっていて、それを読んだとき、そうか私は"目標達成魔"だったのか、と。行き当たりばったりの私の人生で、ちゃんと計画を立てて、まがりなりにもその方向に進んでいるのは翻訳だけですから。それは常に具体的な目標を設定することで前に進んできたからではないか、ということに思い至って、その後、意識的に中期的・短期的な目標を作るようになりました。また、「あなたには翻訳という苦しく楽しい道程を進んでいくパワーがある」ということも書いてくださっていて、ちょうどこのまま仕事がなくなったらどうしようと不安な時期でしたから、そうか私にはパワーがあるのか、と。ほとんどこじつけの自己暗示ですが、まあずいぶん気が楽になりました。「イージーミスが多い、表現力を磨きなさい」という指摘もあって、それはいまだに進歩がなくて先生ごめんなさいという感じです。

坂田
:翻訳の勉強のいちばん最初に、とても良い出会いがあったんですね。だから計画通りに勉強を続けることができたのかもしれませんね。

ハーパー:私はフェロー・アカデミーの通信講座で勉強をしましたが、翻訳の力というのは、ああでもない、こうでもないと自分で訳文を練り上げていくプロセスで身についていくものだと思うので、鉄の意志がある人なら、本を買って独学も可能だと思います。ただ私はそれほど意志も強くないし、締め切りとか添削の先生の叱咤激励とか、前に進む手助けをしてくれるものが必要だったわけです。その点でフェローは、挫折しないで続けられるようなシステムがうまくできていて、助けられました。優秀な成績をとるといろいろと特典があるので励みになったし、1課題ごとに締め切りがあったのもよかったです。実はあるスクールの無料受講券をいただいて申しこんだことがあるのですが、一度も課題を提出しないまま期限切れになってしまいました。すでに仕事が忙しくなっていたこともありますが、最後にまとめて提出してもOKというシステムが、私にはだめだったみたいです。
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