【アメリア】Flavor of the Month 35 籠宮史子さん
読み物
Flavor of the Month
<第35回>  全4ページ


肌で感じたニュージーランドの最新出版事情&映画事情!

坂田:ニュージーランドの出版事情はいかがですか? 日本だと、欧米の作品は“翻訳もの”になりますが、ニュージーランドの場合は同じ英語圏なので“輸入もの”でしょうか?

籠宮:英語圏の出版業界はアメリカとイギリスのほぼ独占市場ですので、ニュージーランドの売上ランキングでも、8、9割がイギリス、アメリカ、残りがニュージーランドかオーストラリアの作家の作品です。国内の出版社から発行しているのは、ニュージーランド独自のもの、例えばニュージーランド人作家の本、ニュージーランドの歴史・文化・自然をテーマにした本、ニュージーランドの先住民族で、全人口の約2割を占めるマオリ関連の本、ということになります。

坂田:ニュージーランドで有名な作家には、どのような人がいますか?

籠宮:日本で知られていそうなのはマーガレット・マーヒー、現代ニュージーランドを代表する児童文学作家だそうです。ケリ・ヒュームは『ザ・ボーン・ピープル』で1985年にブッカー賞を受賞したニュージーランドのマオリ系作家、詩人です。ニュージーランド人の作家として最も有名なのは、キャサリン・マンスフィールドでしょうか。この作家はニュージーランド生まれですが、後にイギリスに移住してしまったので、イギリス人と思われている方もいらっしゃるかもしれません。

坂田:日本の場合、日本語で書かれているのはほぼすべて国内の作家の作品、海外の作家の作品はすべて翻訳もの、とはっきりしていますが、英語圏の場合は違いますよね。ニュージーランド人の読者は、そのあたりどのように捉えて読んでいるのでしょうか?

籠宮:あえてニュージーランドものしか読まない人、というのはいないと思いますが、基本的にイギリス英語の流れを汲んでいる国ですので「アメリカ英語は嫌いだから読まない」という人はいるようです。

坂田:アメリカ、イギリス、オーストラリアの本はどのように入ってくるのですか? 海外と同じエディションのものが売られるのか、あるいはニュージーランド版が制作されるのか?

籠宮:国外から入ってくる新刊本は、版権がイギリスの会社にあり、印刷はイギリスかオーストラリアでされたものが多いようです。例を挙げれば、ニュージーランドで販売されている『ハリーポッター』シリーズはイギリスで印刷されたもの、最近私が読んだアメリカ人ジャーナリストのノンフィクション本は、イギリス版の版権表示がされていて、オーストラリアで印刷されたものです。アメリカの作家の本もイギリスの版権で印刷されたものが販売されています。もちろん、アメリカ版しかないものはアメリカから入ってきますが、数は少ないようです。メジャーな出版社だとイギリスに本社あるいは大支社があって、その下にニュージーランド支社、あるいはオーストラリア支社があるというケースが多いようです。この場合、版権がどうなっているのか、そこまで詳しくはわからないのですが。

坂田:では、ニュージーランドの翻訳出版事情はいかがですか? フランス語、ドイツ語などの本が翻訳出版されていますか?

籠宮:文芸に関しては、世界的に著名な作家の作品であっても、翻訳書を読む人は読書家か知識人、外国の文化に興味を持っている人などに限られているようです。要するに、翻訳書市場は市場全体からみるとほんのわずかしかありません。実用書などは状況が少し違って、他の国で先行している技術や学問を取り入れるために必要ですから、少し市場が広がります。ビジネス書などは、ちょっと古いですけどソニーの本、トヨタのかんばん方式などの翻訳書が販売されていました。絵本や児童書は海外の翻訳本が意外と多いですね。アンデルセンの童話など、ちゃんとあります。童話は親から子へ、語り継がれるものだからかもしれませんね。

坂田:映画はどうですか? 日本の場合、日本語字幕を作る必要がありますが、英語圏ならその必要がないので、公開も早いのでは?

籠宮:翻訳する必要がないので早いとお思いでしょうが、映画の公開は日本のほうが早いことも少なくありません。なにせ人口400万人の国ですから、1億2800万人の市場よりも後回しにされてしまいます(笑)。興行主が他地域の興行成績を見てから興行権を買っているせいでしょう。逆に確実に収益が見込まれそうなもの、例えばスター・ウォーズシリーズや、資本はアメリカですが監督からスタッフまでニュージーランド産の映画『ロード・オブ・ザ・リング』や『鯨の島の少女』、ハリウッド映画だけどロケが我が家の近所で行われたトム・クルーズ主演の『ラスト・サムライ』などは、アメリカとほぼ同時か先行公開でした。

坂田:そうなんですか。やはり需要があるからこその供給ということですね。

籠宮:そういえば、アメリカのTVドラマ『24』は日本でも放映されて大人気だったそうですが、その主人公を演じたキーファー・サザーランドが主演する映画が、昨年ワンガヌイで撮影されました。150年前にイギリスから移住してきた人々の歴史物語で、我が家の前を流れるワンヌガイ川が舞台だったんです。そんなわけで、来年(2006年)1月にワールドプレミアがなんと我が町で行われるそうです。これも真っ先に公開されるでしょうね。

坂田:地元民としては見逃せませんね。

籠宮:劇場公開がアメリカより随分と遅れる分、DVD販売はとても早いですね。しかも、私が住んでいる町は大都市ではないので、さらに劇場公開が遅くなって、公開が始まらないうちにDVDがレンタル屋さんに並んでいたりします。映画の料金は地域によって若干違うのですがが、だいたい12ドル(日本円で900円くらい)。毎週半額日があるので、それを利用する私は6ドル(日本円で450円くらい)でいつも観ています。ちなみにチケットは席の分だけしか販売しないので、立ち見でも入ることはできません。

坂田:英語以外の外国映画は字幕が多いですか? それとも吹替?

籠宮:字幕が多いですね。ヨーロッパの映画はときどき上映されますが、アジア映画は普通の映画館ではめったに観られません。ただ。最近は日本製ホラー映画のリメイクブームに乗って、レンタル屋さんには日本のホラー映画が結構揃っています。以前は、アニメか“世界のキタノ”、あるいは宮崎駿の作品ぐらいでしたが、いまは『リング』シリーズもありますよ。
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