【アメリア】Flavor of the Month 45 中野真由子さん
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Flavor of the Month
<第45回>  全4ページ


会社勤めかフリーランスか、仕事のスタイルを模索

坂田:密度の濃い3年間だったんですね。修士課程を終えて、その後はどうしようと考えましたか?

中野:むこうでフランス人の夫と結婚したのですが、卒業したからといって専業主婦になるタイプではないし、仕事はずっとしていたいと思ったんですね。でも、フランスという国は外国人が仕事をするのは制度上とても難しいんです。だったら日本に行こうか、ということで夫と一緒に日本に帰ってきました。あまり先のことは考えていないんですよ。行き当たりばったりなもので……。

坂田:行き当たりばったりですか(笑)。 ところで、フランスでも翻訳事務所でお仕事をしたとのことですが、留学するときにもいずれは翻訳を仕事に、という気持ちがあったのですか?

中野:もともと文学が好きで、語学も好きで、高校生のときに1年間イギリスに留学しました。日本語で文章を書くのも好きだったので、できるとしたら翻訳が自分には一番合っているのかなと思っていました。でも、なにせ行き当たりばったりなもので、その頃はまだ具体的に翻訳を仕事にしようとか、そういうふうには考えていませんでした。ただ、ずっと「いつかは翻訳を」というのは頭の片隅にありましたね。

坂田:日本に帰ってきて、どうしましたか?

中野:帰ってきた時、31歳になっていました。3年間も日本を離れていると、通勤電車に乗るのも辛いし、就職しようかどうしようか悩みました。結局、きちんと就職した方がいいだろうと考え、女子大のキャリアコンサルタントの仕事を見つけました。学生の進路相談を受けるスタッフです。自分の留学経験が生かせるかなと思ったんですが、実際にはじめてみると、英語もフランス語もまったく使わないことに焦りを感じるようになって。何のために留学したのかと。その頃から、ずっと頭の中にあった「翻訳」という仕事を本格的に目指してみようかなと思うようになりました。

坂田:具体的にどのようにして翻訳の仕事を探しましたか?

中野:以前、金融機関にいたので、その分野の実績をアピールして仕事を見つけようと思いました。派遣会社に登録したのですが、そこを通して経済産業省の仕事が決まりました。英語の他にフランス語ができること、金融のなかでも保険に関して詳しかったことが条件に合っていたようです。

坂田:派遣会社を通して、省庁の仕事もあるんですね。初めて知りました。

中野:公の職場なので、入札制度を取っています。面接などは一切なし、派遣会社数社が条件にあった翻訳者の書類を添えて入札するんです。最も安い派遣料の会社が落札されるしくみになっています。

坂田:この仕事は週に3日ということですね。日本語講師の仕事は、その後はじめられたのですか?

中野:はい。知人に声をかけられて、会社などに講師を派遣している語学学校に登録しています。日本に駐在しているビジネスマンのための3カ月の日本語講座、などを受け持っています。

坂田:教える仕事をしようと思った理由は何ですか?

中野:翻訳というのは一人の世界なんですよね。人との摩擦がないのはいいのですが、人と接するがゆえに楽しいこともありますよね。翻訳だけしていると、そういうことがないので、楽だけれど、ちょっと寂しいというか。

坂田:経済産業省の翻訳の仕事は、オンサイトですよね。

中野:はい、そうです。ただ、私の仕事は外出はないし、電話もいっさいとりません。もう、翻訳だけです。もちろん、隣の人と話すことはありますが、ほとんど自分1人の世界です。ずっとパソコンに向かいっぱなしなので、この1年で視力がずいぶん落ちました。

坂田:在宅翻訳者なら、気晴らしに散歩をしたりできるかもしれませんが……

中野:気晴らしにトイレとか、気晴らしに近所のコンビニとかですね(笑)。

坂田:講師の仕事は、それとは正反対。

中野:そうですね。授業では、人前に立って話をしなければならない。翻訳とは正反対です。でも、言葉を使って仕事をしていることに変わりはないので、関連性はありますよね。欧米のビジネスマンに日本語を教えていると、彼らのヨーロッパ的な発想に出くわし、その違いを教えることがあります。翻訳のときに、日本語の表現に悩むことがあるのですが、そんなとき、その違いを教えた経験が役に立つんです。具体的にはうまく説明できませんが、感覚的に非常に関連があると感じます。

坂田:さらに、フリーで翻訳の仕事もしているんですよね。

中野:はい。講師の仕事は主に夜なので、週に2日は昼間の時間があります。その時間に在宅の翻訳もやっていきたいと考えたんです。

坂田:その仕事を見つけるためにアメリアに入会されたんですね。

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