【アメリア】Flavor of the Month 45 中野真由子さん
  読み物
Flavor of the Month
<第45回>  全4ページ


仕事は金融翻訳、趣味は文芸翻訳!?

中野:実は、アメリアに入会したときに、フェロー・アカデミーの通信講座を受講したんですよ。

坂田:通信講座ですか。新しい分野にチャレンジしようとしたとか?

中野:仕事では金融以外に新しい分野を開拓しようとは考えていません。もともと大学は文学部ですし、文芸翻訳に興味があったので、マスターコースの「ロマンス」の講座を受講したんです。課題はロマンティック・サスペンスでした。

坂田:では、いずれは出版分野の翻訳もやってみたい?

中野:いいえ。まったくの趣味としてやってみたかっただけです。ちゃんとまじめに課題を提出しましたよ。こなれた日本語の文章を書くという意味で、すごく訓練になりました。

坂田:金融翻訳とまったく違いますか?

中野:もちろん、まったく別物です。金融翻訳の場合、多少わかりづらくても、単語を勝手に省いたりしてはいけないというのが基本的なルールですが、文芸では日本語で読んでスムーズに話が伝わるかどうかが重要です。その場の臨場感、主人公の年齢、バックグラウンドなどに応じてセリフの言い回しを変えたりしなければならない。楽しかったですし、勉強になりました。

坂田:翻訳の出来はどうでしたか?

中野:やはり実務の翻訳にとらわれていることがあったのか、あまり原文を変えてもいけないだろうという思いが常にあって、なかなか思い切った訳になっていなかったようです。自分では思い切って訳していたつもりなんですが。講師のコメントでも文章が硬いと指摘されました。

坂田:でも、中野さんは本を1冊出版していますよね。

中野:はい。『セレンディップの三人の王子』というペルシャに起源をもつ冒険物語です。でも普通の出版ではなく、いわゆる自費出版なんです。私の妹は韓国語の翻訳者をしているんですが、友人からこの本の原書を日本語で読みたいから翻訳してほしいと頼まれたんです。それで、フランスから帰って来たばかりの私と、定年退職して時間のあった父も加わって、3人で分担して翻訳することにしたんです。それで翻訳が完成すると、せっかく1冊翻訳したんだから、本になればいいねという話になり、自費出版することにしたんです。

坂田:家族3人で共訳なんてすてきですね。

中野:いいえ、とんでもありません! もう、大変でした。みんな、どこかで「自分は英語ができる」と思っているんですよ。で、家族だから遠慮がない。全体をチェックしたのは私なんですが、解釈を間違えているところや、日本語の表現がこなれていないところを指摘すると、たとえその指摘が正しくても、「そんな言い方しなくてもいいじゃない」って感情論になってしまうんです。何度もケンカになりました。

坂田
:あぁ、わかる気がします。

中野:もう過去のことになったので今では笑い話ですが、父に原稿を真っ赤にして返しても、なかなか納得してもらえなかったですね。TOEICを受けると、父がダントツで点数がいいので、文法的な面では相当に自信があるんですよ。でも、文法ができるのと翻訳がうまいのはイコールではありません。言葉遣いに世代のギャップもあるし、直訳調のところが気になったので、いろいろと指摘したのですが、いろいろと意見が対立しました。

坂田:では、苦労して訳した1冊なんですね。

中野:本当に、出版翻訳って大変だなと思いました。20歳ぐらいの頃に文芸翻訳家に憧れたこともありましたが、いろいろと社会経験を積んだ今となっては、これから文芸翻訳家を目指そうとは思えませんね。

坂田
:でも、出版持込ステーションはときどきチェックしていらっしゃるんですよね。

中野:はい。よく見ています。今はまだ自分で訳したいと思えるほどの原書にであっていませんが、もし、絶対に自分で訳して紹介したいと思える本が見つかれば、そのときは出版持込ステーションに応募しようと思っています。

坂田:最後にひとつお尋ねします。何か今後の計画はありますか?

中野
:今のところ、ないですね。フランスから帰って来てから3年になるので、そろそろまた別の国に住んでみたいな、とは思います。でも、外国で暮らすのは、楽しい反面、大変な部分もあるので、具体的にはまだ考えていません。

坂田:自由な発想なんですね。住むとしたらフランスですか?

中野:いいえ、世の中には知らない国もいっぱいありますから、また別の国がいいですね。今はニュージーランドに憧れているんです。

坂田:また全然違う国に住んだとしても、アメリアの場合、ネットさえつながれば日本にいるのと同じ様に活動できるのでいいですよね。

中野:そうですね。ニュージーランドで良い本が見つかったら、文芸翻訳をやってみたくなるかもしれません。

坂田:翻訳というのは、本当に世界中どこでもできる仕事ですね。今日は楽しいお話をどうもありがとうございました。

 
    ご自身では“行き当たりばったり”と表現されていましたが、自分は今何をすべきかをきちんと考えてマイペースで突き進んでいく中野さんは、とても輝いていました。そこには努力と責任がともなっているので、仕事でもプライベートでも信頼を得ることができるのでしょう。次はどの国で活躍しているのか、私も楽しみにしています。
 

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