【アメリア】Flavor of the Month 51 河崎 有美さん
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Flavor of the Month
<第51回>  全5ページ


河崎 有美さん

第51回
英語が苦手の理系人間。好きな技術に接する一生の仕事を探して特許翻訳にたどりつきました
  河崎 有美さん
Yumi Kawasaki


英語の授業は好きになれず、化学に面白さを発見
坂田:今回のゲストは、大学では応用化学を専攻し、大学院卒業後に化学メーカーに就職して開発のお仕事をされていたという経歴をお持ちの河崎有美さんです。その後、いくつかの職場を経て、現在はフリーランスの特許翻訳者をなさっています。理系出身の河崎さんが翻訳者になるまでのいきさつを、ぜひ伺ってみたいと思います。よろしくお願いします。

河崎:こんにちは。よろしくお願いします。

坂田:河崎さんは大学は理系に進まれたそうですが、学生時代、英語は得意でしたか?

河崎:いいえ、得意とはいえませんでしたね。英語に触れたのは、小学校のころに通っていた英会話学校が最初でした。そこは、イラストを見ながら英単語を覚えたり、みんなでゲームをしたり、とても楽しかったことを覚えています。でも、中学に入って学校で英語の授業が始まってから、高校を卒業するくらいまでは、英語は嫌いでしたね。

坂田:どうして英語が嫌いだったのでしょう?

河崎:学校の授業で関係代名詞が出てきたときに、英語の先生は「〜するところの…」と訳すようにと教えたんです。でも、それって日本語としてスムーズじゃないですよね。そこで私は、勝手に2文に分けて訳してみたりしたんです。すると、「もとの英文が1文なんだから1文で訳しなさい」って怒られてしまって……。なんだかつまんない、って思うようになり、英語に興味がもてなくなりました。英語は好きだけど、学校の英語は嫌いというかんじでしょうか。高校では「きみの英語力でいける大学はないね」と言われたし、大学でも教養課程の英語の先生に「きみは英語が苦手だね」と言われたことがあります。

坂田:そんなに苦手だった英語を仕事にしているなんて不思議ですね。大学では英語で書かれた論文や文献を読む必要もあったのでは? 英語が苦手だと辛いですよね。

河崎:はい。大学の研究室では英文をたくさん読みましたが、それほど辛かった記憶はありません。そういえば、一般教養の「英文学」の授業は嫌いでしたが、「化学英語」に関する授業は好きでした。大学3年のときに化学論文をみんなで訳す「外書購読」という授業があったのですが、これはとても面白かったです。その後、この外書購読を担当していた教授の研究室に入ったのですが、自分で選んだ英語論文について調べて発表する会に参加したり、研究のためにやまほどの論文を読んだり、この頃から英語に対する苦手意識がなくなっていったのだと思います。さすがに海外に出す論文をみずから英文で書いたときは、教授にほとんど直されましたが……。

坂田:そうですか。英語に興味がわかなかったということは、当然、その頃に翻訳者になりたいという希望はなかったんでしょうね。子どもの頃は何になりたいと思っていたのですか?

河崎:小学校の卒業文集には「人の役に立つ仕事をしたい」と書きました。具体的には「看護婦さんになりたい」と書いた記憶があります。でも、弟が目の近くを怪我して病院で2針縫ってもらったとき、この夢はあきらめました。私もその場に立ち会ったのですが、そのときに自分が血が苦手だということに気付いたんです。

坂田:看護婦をあきらめて、次になりたいと思ったのは?

河崎:高校のときに教えてもらった化学の先生が、とにかく化学が大好きという人だったんです。見た目は宇宙人みたいなんですが(笑)、この先生の授業を聞くうちに「私も化学をやりたい」と思うようになり、大学は工学部の応用化学科に進みました。

坂田:中学や高校の頃の先生の影響は大きいですよね。化学の授業はどんなふうに楽しかったのでしょう?

河崎:とにかく先生が「オレは化学大好きやねん」という雰囲気を醸し出していました。よく授業に小道具を持ってきていましたね。分子模型だったり、ビーカーになにやら怪しげな液体を入れてきたり……。あの頃、「化学っておもしろい!」という印象を植え付けられたように思います。

坂田:大学は応用化学科に進んだということですが、どんな勉強をする学科ですか?

河崎:応用化学科というのは、「化学を産業に役立てる」ことを追求する学科です。実際には高価すぎたりして役立てられないことも多々あるのですが、最終目標は、会社で使える化学反応を見つけること、といえると思います。

坂田:河崎さんご自身がなさっていた研究は?

河崎:卒業論文と修士論文は「サマリウム」という金属の使い道についての研究でした。というのも、当時国から補助金がでるテーマがありまして、サマリウムもそのひとつだったんですよ(笑)。例えば、ものすごく高い温度で、ものすごく圧力をかけないと進まない化学反応があったとして、そこに触媒というものを入れると、室温で圧力もかけずに反応が進行したりします。私はその「サマリウム」を触媒にして、いままでに発表されていない新しい反応をいくつか発見し、それを卒論&修論として発表しました。ありがたいことに、海外の雑誌にもいくつか投稿して採用されました。

坂田:大学院卒業後はどうしましたか?

河崎:たぶん、理系の大学院生は研究者になりたいという人が大多数だと思いますが、私も就職活動のときは、大学か化学メーカーの研究者になりたいと思っていました。結局、ある化学メーカーの開発職として就職しました。

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