【アメリア】Flavor of the Month 52 岩木 貴子さん
読み物
Flavor of the Month
<第52回>  全5ページ


実務翻訳と文芸翻訳をバランスよくこなす翻訳者になりたい

坂田:いちばん最初に翻訳のお仕事をされたのはいつ頃で、どのような内容でしたか?

岩木:学習を始めて8カ月くらいの頃です。英訳の通信講座を受けていて、その成績が良かったのか、声をかけていただきました。会社案内の英訳でした。その後も、Webサイトの英訳など、日英のお仕事をいくつか受注しました。さらに、インターネット上で開催された英訳のトライアルに合格し、ビジネス書の翻訳をしたこともあります。アメリアのJOB INDEXを通して応募したお仕事にも合格するようになって、実務系のお仕事を中心に少しずつ始めました。

坂田:徐々にトライアルに合格する実力がついていったということですね。

岩木:この頃は数打ちゃ当たると多数受けていましたので、受かったり落ちたりです。最初の頃は落ちてばかりでした。やはり実務経験がないと厳しいですよね。いくつか仕事をした後には、トライアルも徐々に受かりやすくなっていきました。

坂田:合格するようになった理由はなんだと思いますか?

岩木:やはり、通信や通学の勉強の積み重ねの結果だと思います。自分では実感はなかったのですけれども、地道にうまくなっていたんだと思いたいですね。

坂田:日本語をうまく書くために行った勉強法などありますか?

岩木:一時期、図書館に通って、いろいろ本を借りて読みました。でも結局あまり翻訳の勉強にはならなそうな、自分の好きな本ばかり読んでしまいましたが。あとは、田口先生のゼミでは、毎回お題をいただいてエッセイを書くのですが、文章を書く訓練は日本語力アップに効果絶大だと思います。

坂田:では、最初は実務の仕事がかなり多かったのでしょうか?

岩木:実務のお仕事がいただけるようになったのと同時期に、リーディングのお仕事もいただけるようになりました。それから、リーディングを何冊かした後に、書籍翻訳のお声がかかりました。

坂田:書籍翻訳のお仕事というと?

岩木:リーディングをしてレジュメを書いた本だったのですが、納品して3カ月後くらいにお電話をいただいて、「あの本が急遽出版されることになったんですが、翻訳してもらえませんか」と聞かれました。私以外にベテラン翻訳者の方も候補に挙がっていたそうなので、多分その方の都合がつかずに、私にお話が来たのだと思います。ラッキーでした。

坂田:それはよかったですね。

岩木:その後も、リーディングがご縁で翻訳のお仕事をいただくというケースがいくつかありました。ちょうど結婚式の直前の頃に何冊か重なって、嬉しいのですが非常に忙しく、文明人とは思えない限界ぎりぎりの生活をしていました。結婚式の後は燃え尽き症候群になりましたが(笑)。

坂田:実務翻訳の仕事をしながら、リーディングもこなすというのは、大変ではありませんか?

岩木:リーディングは、自分があまり読まない分野の本にも出会えるので、とても楽しいです。以前は、ビジネス書なんてほとんど読んだことがなかったのですが、リーディングで読んでみると、意外と面白くて。ノンフィクション系やセルフヘルプの本なんかもそうですね。自分の世界を広げてくれて、しかも本代を払うことなく、逆にリーディング料をいただけるなんて、私にとっては本当に“おいしい”仕事です。

坂田:実務の仕事が忙しい中、リーディングの時間というのはどのように確保されていたのですか?

岩木:リーディングは、分量にもよりますが、時間があれば本自体はたいてい1日で読み終えることができます。出版社からいただける時間はだいたい2、3週間、早くて1週間ですので、他の仕事の予定を確かめて(リーディングのお仕事を)お請けするようにしています。

坂田:それは留学時代にものすごい量を読みこなしたことが力になっているんでしょうね。

岩木:そうかもしれませんね。

坂田:翻訳のお仕事は実務からはじめて、徐々に出版系にも広がっていったようですが、岩木さんご自身はどの分野を希望なさっているのですか?

岩木:もともと本が好きだったので文芸翻訳希望だったのですが、早く生計が立てられるようになりたいという思いもあり、実務の講座も受けるようになりました。実務のほうが仕事の絶対量が多いと考えたからです。でも今では実務のほうでも夢があります。現在はどんな種類の文書でも依頼されるものは引き受けていますが、将来的には契約書を専門にできればいいなと思っています。理想としては、午前中に契約書の仕事をして、午後から文芸の翻訳ができれば最高ですね。

坂田:文芸のほうでは、どんな分野の翻訳がしたいですか?

岩木:そうですね。希望の分野は三つあって、歴史ミステリーとファンタジーとヒストリカルロマンスです。

坂田:留学時代に読んだ本の中で、まだ日本語に訳されていないものもたくさんあるのでは?

岩木:留学中は授業で読む本で手一杯で、趣味で本を読む時間はなかったのですが、卒業後はエンターテイメントの作品を読み漁っています。実は、以前からこれは面白いなと思っていた本が、つい最近出版されたんです。どうして出版されないんだろうと思っていたんですが、「しまった!」と思いました……。

坂田:それは、早く出版企画の持ち込みをすればよかったですね。

岩木:アメリアの「出版持込ステーション」に応募したことが1度だけあります。もっと応募したいと思ってはいるのですが、なかなか実行に移せなくて……。それにしても、画期的なシステムですよね。私は日本に帰ってきたとき、どうすれば翻訳家になれるのか、それが最大の疑問だったんです。企画を持ち込むことも考えましたが、出版社の誰に、どうやって送ればいいか見当もつかなかったし……。だから「出版持込ステーション」が始まった時は興奮してしまいました。私は何でも都合よく考える方なので、「これは時代が私に『翻訳家になりなさい』と言ってくれている」と思いました(笑)。といっても利用しないのではお話にならないのですが。
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