【アメリア】Flavor of the Month 63 福市恵子さん
読み物
Flavor of the Month
<第63回>  全5ページ


ゲーム翻訳は文芸と映像の両方の要素が合わさっている

坂田:ゲームの翻訳について、知らない人も多いと思うので、教えていただけますか? まず、どのようなものを訳すのですか?

福市:RPGの場合、一番ボリュームが大きいのはキャラクターのセリフですが、それ以外にも、システムメッセージ、例えば「スタートボタンを押してください」といったものや、トライアルで出てきたようなクエストの内容、アイテムの説明などもあります。ファンタジー系のアイテム説明になると、ドラマチックに仕上げなければなりません。そういうところは文芸翻訳にも似ていますし、キャラクターのセリフは映像翻訳に近いですし、文芸と映像が半々というような感じですね。

坂田:実際の仕事は、どのような流れで進めるのですか?

福市:まず原文を読んで全体を理解し、何をプレーヤーに伝えるべきか、どの部分を強調すべきかを読み取ります。それを日本語にする段階では、事務的な文章になってしまうとつまらないので、キャラクターの個性を生かしながら、必要とあらばユーモアなども加味しつつ、でもやはりプレーヤーに伝えなければいけない情報をわかりやすく伝えるという基本を逸脱しないように注意をしながら訳していきます。

坂田:翻訳会社からはどのような資料が届くのですか?

福市:まず、私が初めてゲーム翻訳の仕事をしたのは今から6年前の2004年だったのですが、その頃と今とではかなり違ってきています。2004年頃は、資料などはほとんどない状態で、テキストだけが送られてきて、それを読んで想像しながら訳してください、という感じでした。

坂田:翻訳するテキストだけ、ということは、それがどのような内容のゲームで、登場人物がどんなキャラクターで、といった情報が何もないということですか?

福市:そうなんです。送られてくる原文は、翻訳会社によってスタイルは違うと思いますが、私の場合はエクセルの表に原文が書いてあり、その隣に訳文を入れるように空欄が設けてあり、そこに訳文を書き込んでいくんです。セリフは必ずしも話の流れ通りに並んでいるわけではないし、キャラクターが何歳くらいなのか、男なのか女なのか、あるいは人間なのかどうかもわからないような状況で翻訳しなければなりませんでした。ゲーム自体の開発と並行して翻訳を進めるので仕方ないのですが……。

坂田:それでは、本当に正確な翻訳ができませんね。

福市:もちろん、開発が進んで、最終的には画像と合わせたところで修正をするのでしょうが、最初の翻訳はそのような状況なので大変です。もう、想像力を働かせるしかありませんでした。

坂田:それが6年前で、現在はどうなのでしょう?

福市:最近は、特に大手の開発会社の仕事に関しては、原文と一緒にかなりの量の資料が届きます。全体のストーリー、キャラクターの人物設定ーー日本の芸能人でいうと誰か、といったところまで細かく書かれている場合もーー場合によっては開発途中の動画を送ってもらえることもあります。そうなると、すごくやりやすいですし、やりがいも増してきました。

坂田:その資料というのは日本語ですか? 英語ですか?

福市:日本語に訳されたものがくることもありますが、それはまれで、だいたい英語のままくることが多いですね。

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