【アメリア】Flavor of the Month 73 武藤 陽生さん
情報・コラム
Flavor of the Month
<第73回>  全5ページ
武藤 陽生さん

第73回

若い頃は溺れるほどゲーム漬けの日々。後悔を乗り越えて、今ではゲーム翻訳のプロに。ゲームの経験がフルにいかされ「人生、無駄なことなんてないと実感しています」武藤陽生さん

Yousei Mutou


30歳を前にインドからギリシャの旅へ。翻訳という新しい道を歩む決心をしました。


岡田:今回のゲストはゲーム翻訳のプロで、フェロー・アカデミーの短期集中講座でも講師をつとめていただいた武藤陽生さんです。今注目のゲーム翻訳のお話や、ご自身のこれまでとこれからのお話をお聞きしたいと思います。武藤さん、先日の講座はいかがでしたか?

武藤:そうですね。講座の時間は100分だったのですが、最初は実は「そんなに長い時間、話すことがあるだろうか」とちょっと不安なところがありました。ですが実際にやってみると、100分では全然足りなかった。今はもうゲーム翻訳の話なら、何時間でもできるような気がしています。講座では初心者の方も大勢いたので、なるべくわかりやすいように、ゲーム翻訳の歴史や仕組みといった基本的なことからお話ししました。みなさんからも鋭い質問が出たりして、僕がふだん半ば無意識的に処理しているポイントについて改めて考えてみるきっかけにもなり、充実した時間を過ごすことができました。

岡田:ゲーム翻訳は今、注目のジャンルですね。参加者のみなさんは生きた情報に触れられて刺激になったようです。ゲーム翻訳のお話は後ほどお聞きするとして、まずは武藤さんが翻訳をはじめたいきさつをお聞きしたいと思います。翻訳の勉強をはじめてどれくらい経ちますか?

武藤:今35歳ですが、ちょうど30歳になるときにはじめました。そろそろ6年くらいですね。

岡田:はじめられたきっかけは?

武藤:大学のころ、将来を考えたときにフリーランスという働き方に憧れがあって、いろんなフリーの職種を調べました。ちょうどその頃、柴田元幸さんや村上春樹さんの翻訳書を読んで、翻訳家への憧れはあったんですが、自分がそれで食べていけるとは想像できず、憧れのまま忘れていました。結局、卒業後は大学のころからやっていたコールセンターのアルバイトを8、9年続けました。30歳を前に、このままでいいのかなと思うようになり、当時読んだ沢木耕太郎さんの『深夜特急』に影響され、インドのコルカタからギリシャのアテネまで電車とバスで3ヶ月半くらいかけて旅に出たんです。それが生まれてはじめての海外旅行。旅先でいろんな旅人たちと出会ったんですが、たまたま職業が「translator」という方が多くて、学生時代の憧れを思い出したんです。その時、自分は30歳近く。とにかく今のうちに好きなことをやってみようと覚悟を決め、帰国してフェロー・アカデミーに入学しました。

岡田:ということは帰国子女だったり、留学の経験があったりというわけではなかった?  大学は英文科ですか?

武藤:法学部です。特別な英語のバックグラウンドはまったくありませんでした。英語の勉強はふつうに受験勉強程度。大学付属の高校だったので、毎日ゲームばかりしていて勉強は満足にしていなかった。でもなぜか日本語には自信がありました。まるで根拠はないんですけど(笑)。

岡田:30歳で大きなスタートを切られたんですね。その後の集中力がうかがえます。

武藤:実は他にもちょっとしたきっかけがあって、旅行に行く前にたまたまTOEICを受けたら700〜800点の間くらいだった。受ける前はたぶん400〜500点くらいじゃないかと思っていたので、その時は「オレは英語の才能があるんじゃないか」と(笑)。今思えばすごい勘違いでしたけど。

岡田:そう思ってもおかしくないスコアですよ。

武藤:当時は「これはもう翻訳をやるしかない!」と思いました。ホントに大きな誤解でしたけど、きっかけとしてはよかったですね。

岡田:大きな一歩を踏み出されましたね。自由で縛られないライフスタイルをお望みだったんですか?

武藤:そうですね。でも今、翻訳で原文に縛られまくってます(笑)。

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