【アメリア】Flavor of the Month 87 大久保 雄介さん
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Flavor of the Month
<第87回>  全5ページ


30歳を目前に海外へ 田舎暮らしの良さを再認識

濱野 :翻訳会社で順調にキャリアを重ねていったようですが、プロジェクト・リーダーとしてご活躍後、退職してフリーランスに転向されたのですか?

大久保 :会社の仕事はすごく楽しかったのですが、入社して6年目に退職しました。ちょうど家族に不幸があったり、東京の生活に疲れたりしたこともあって……一度退職して人生をきちんと考えてみようと思ったんです。退職して1年ほどはフリーで翻訳をしていたのですが、30歳を目前にして、ある心残りがありました。「ずっと英語を勉強してきたんだから、一度は海外に行ってみたい」という気持ちが自分の中にずっとあったんです。それで、2010年にワーキング・ホリデーでニュージーランドに1年行くことにしました。その後、同じくワーキング・ホリデーでオーストラリアに1年行き、2012年の4月まで計2年間は海外で生活しました。

濱野 :30歳になるまえって、いろいろと考えますよね。わかります。ワーキング・ホリデー中はどんなことをされていたんですか?

大久保 :ニュージーランドで語学学校に少し通ったあと、南島の「マルイア・スプリングス」というホテルでしばらく働きました。フロントやカフェ、レストランなどを担当し、いろいろな業務を経験しました。オーストラリアのときは、ワーキング・ホリデーも2年目で貯蓄もそれほどなかったので、何かお金のかからないことをしようと考えて、WWOOFに参加しました。

濱野 :うー? うーふ?

WWOOFで滞在したオーストラリアの農場にて

大久保 :ウーフです。Willing Workers On Organic Farmsの略で、「有機農場で働きたい人」のためのNGOの活動です。欧米ではかなり有名なプログラムで、農家の手伝いをする代わりに、食事と宿泊場所を提供してもらうというものです。1年間そのプログラムに参加して農業を手伝いながら、「自分が田舎に置いてきたもの」を再発見することになりました。

濱野 :そんな活動があるんですね。知りませんでした。そのプログラムを通して、改めて農業や田舎の良さを発見したということですね。

大久保 :ええ。体を動かして汗をかいて、人と会話をして……そういう「人間味」を忘れていたというか。自分が求めているのはそういうものだったんだな、と。

濱野 :人間味、都会の生活では忘れてしまいがちですね。海外での経験というのも、きっと大きかったのではないでしょうか?

大久保 :それはそうですね。いろいろな経歴や職業、国籍の人たちと出会い、話をして……それまでの私の人生ではなかなか経験できなかったことです。日本での生活では、会社の同僚や大学の同級生と飲みにいくくらいで、生活が小さな範囲で完結してしまっていたので。海外でそれまでの日本での生活と異なるものに触れ、帰国して長野の田舎に戻ったとき、もともと育った場所の良さに改めて気づかされました。それで、田舎に腰を据えて、しっかり田舎で認められるように、地道にやっていきたいと思うようになったんです。まずは生活をするために、翻訳の仕事を再開しました。

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