【アメリア】Flavor of the Month 88 田辺 千幸さん
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Flavor of the Month
<第88回>  全5ページ


中学を卒業し、高校、大学はイギリス留学。翻訳との出会いはある日突然に……。

岡田 :2ヶ月に1冊の翻訳を仕上げる田辺さん。実力あってこそのスピードですが、英語や翻訳の基礎はどのように身につけられましたか?

田辺 :英語は子どものころから好きで、高校からロンドンに留学、大学もロンドンで出ました。翻訳のほうは帰国後数年してから翻訳学校の通信、通学講座を受けました。

岡田 :なるほど、イギリスで勉強されたんですね。それにしても高校生から留学とは、多感な時期に思い切った決断でしたね。

田辺 :中学2年の時にスイスでの英語のサマースクールにいったんです。先生方はイギリス人ですが、主催は日本の会社で、引率も日本人の先生なので中学生でも安心、というのが売りのサマースクールでした。夏の間、空いている寄宿舎で過ごし、全国から集まった同じ年頃の子どもたちといっしょに1ヶ月過ごしました。それがとても楽しくて。当時は子どもでしたから、きっと留学生活というのはその延長で、ずっと楽しさが続くような気がしたんです(笑)。帰国して、高校から留学したいと親に言ったのがきっかけでした。ありがたいことに両親はわりとすんなりと受けいれてくれましたね。

岡田 :ご理解のあるご両親ですね。寄宿舎で過ごしたんですか?

田辺 :最初の1年は郊外の寄宿舎で、2年目からはロンドンにホームステイしていました。

岡田 :中学のサマースクールと比べると厳しい毎日なのでは?

田辺 :たいへんでしたね(笑)。田舎の寄宿舎なので外に出ることもなく、わけもわからずに過ごしていました。勉強にもついていかなければならないし。自分の好きな教科を選べましたし、勉強の内容そのものは難しくありませんでしたが、やっぱり英語がたいへんでした。

岡田 :16歳の日本の女の子が一人でイギリスで過ごすのですから、つらいこともあったと思います。英語は最初の1年でかなり上達しましたか?

田辺 :とりあえず不自由しなくなるという程度までできるようになりました。2年目から通った学校ではさほど苦労しなかった覚えがあります。

岡田 :大学もイギリスで進学ということですが、専攻は?

田辺 :心理学です。中学の頃から興味があって、ずっと学んでみたいと思っていました。

岡田 :ということは当時は翻訳という道はまだ考えず?

田辺 :ぜんぜん考えたことありませんでしたね(笑)。はじめて翻訳を意識したのは、二十歳くらいの頃、大学の本を買うために本屋さんに行った時です。多重人格者の話を書いたノンフィクションの作品を見て、唐突に「あ、この本を訳してみたい!」と衝撃が走って……。子どもの頃、小説らしきものを書いたことはあっても、それまで自分で翻訳したいと思ったことはなかったので、まさに突然の出会いでした。数年後に日本の本屋さんで訳書を見つけてショックだったというオチがあるんですが、そのできごと以来、翻訳を意識するようになりました。

岡田 :まさに出会いは突然に……ですね。それまで意識することがなかった翻訳と、今ではどっぷりお付き合いされるようになりました。

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