【アメリア】Flavor of the Month 88 田辺 千幸さん
読み物
Flavor of the Month
<第88回>  全5ページ


勉強会や下訳を積み、いよいよプロの道へ。多忙なスケジュールも満喫!「趣味と実益を兼ねた仕事、という感じです」

岡田 :イギリスから帰国後数年して翻訳学校に通いはじめ、いよいよ翻訳の道を歩みだされた田辺さん。当時の思い出を聞かせていただけますか?

田辺 :通学科の授業に初めて出席したとき、平日の昼間にもかかわらず大勢の生徒さんがいらして、翻訳を志している人はこんなに多いのかとショックを受けたことを覚えています。衝撃でしたね。最初の課題の詩の分野では、手も足も出ず……。一方ですばらしい詩に仕上げてきた方がいて、そのときはかなり落ち込みました。ひとつひとつ、気持ちを新たにした覚えがあります。

岡田 :なるほど。そのたびに立ち上がってこられたことと思います。

田辺 :私は高校、大学がイギリスなので、日本語の古典や詩をしっかりと勉強したことがなく、そこが自分の中で欠落している部分だと思っているんです。今でもなるべくシェイクスピアなどを心がけて読むようにしているんですが、学生の時と違ってインプットしてもすぐに出て行ってしまって(笑)。当時からがんばらないといけないなというのはありました。

岡田 :努力を欠かすことがありませんね。その後は先生からお仕事の紹介を?

田辺 :はい。角川書店からハリーポッターの関連本のお仕事を紹介していただき、それを機にロード・オブ・ザ・リングのビジュアル本の翻訳をしたりするようになりました。翻訳者と編集者の忘年会で知り合った編集者さんからお仕事をいただいたこともあります。安定してお仕事がはいるようになったのはここ4、5年でしょうか。

岡田 :最近では2ヶ月に1冊のペースでお仕事をこなしていらっしゃいます。毎日のリズムなど、お仕事ぶりをお聞かせ願えますか?

田辺 :リズムとしては、今は6時半頃に起きて主人を送り、家事をして9時半ごろから仕事にとりかかります。子どもたちが小さいころは5時起きでしたが、今は2人とも大きいので、家事は極力手を抜いています(笑)。メールのやりとりなどをしたあと、午前中は2時間程度の仕事、午後は4時ごろまで仕事をしてから犬の散歩や家事、夕食をすませてゆっくりして、寝るまでまた何時間か仕事をしています。

岡田 :意識的に土日にはお休みを?

田辺 :いえ、時間的に余裕がなくて土日もありません。2ヶ月に1冊のペースだとだとなかなか……。

岡田 :それはそれは……。体がついていかないということは?

田辺 :肩はバリバリですが、翻訳は趣味の世界なのでつらくはないんです。趣味と実益を兼ねた仕事、という感じですね。

岡田 :それだけのお仕事量は好きでなければ難しいかもしれませんね。素朴な質問ですが、「英語がわからない」ということはないのですか?

田辺 :ありますよ、そういうこと(笑)。微妙なニュアンスや作家さんのクセ、突然出てくるフシギな言い回しなど、頭を抱えることはありますよ。そういうときはひたすら前後の文をくり返しくり返し読む。読んでいるうちに、なんとなくこういうことかなというのがわかってくるんです。

岡田 :なるほど。わからないところも思い込みに走らず、くり返し読むことで全容がつかめるようになるのですね。

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