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■とにかく翻訳漬けになれ

田口:いまも翻訳に興味があるという人が結構いて、さっきも話したような大変な状況の中でそれは奇跡かなと思うんですよ。そういう人たちに対して、俺としてはやっぱり翻訳の面白さみたいなものを伝えていきたい。わかってくれる人にね。ただ詐欺はしたくないから、「こんなに売れますよ」とは言わないけども(笑)。そんな感じで、川副さんのほうからこれから翻訳を学ぼうとしてる人、学んでいる人に何か言いたいこと、伝えておきたいことはありますか。通信講座では教えてもう長いんでしょ。

川副:長いですね。

田口:教え始めたころといまとで、生徒さんの違いとか何かお感じになることはない?

川副:教え始めてしばらく初歩的な講座(注  現在の「はじめての出版翻訳」とは別な講座)を担当していたんですが、そのころは「この人、本当に本の翻訳をやりたいの?」って思うような人もいたんですよ。方向性もまだ決まっていないような人たちもいたのでしょうがない面はあったんですが、文芸をやりたいと思っている人でも本を読んでいない。でも、小説の翻訳をやりたいなら、やっぱりある程度は翻訳小説を読んでおかないと。仕事にしようと思うんだったら、好き嫌いじゃなくてリサーチとして必要じゃないですか。それをしていないのはおかしいと思うんです。

田口:そのとおりだね。

川副:結局、本当にやりたいのかどうかということですよね。通信の上級講座やいま担当している通学講座には本好きの人が結構いて、こっちも「いっしょにがんばろう」という気になるんです。直接講義のときには「翻訳はお金にならない」とか厳しいことも結構話しますよ。でも、本当に翻訳する行為そのものが楽しければ、先のことはあまり気にならないはずなんです。上級講座の生徒さんは「あと何年でプロになれますか」なんてことは口にしないですよ。むしろそういうことを気にするのは初歩講座の人たちのほう。最初は「プロになるなんて無理だろう」と思うのが、ふつうの感覚じゃないですか。

田口:うん、なるほどね。

川副:私は「何年たったらなれますか」なんて絶対に口が裂けても言えなかったし、思いもしなかった。勉強を続けていくなかで自信のかけらができて、ちょっと欲が出てきて本気になって、そのぐらいになれば言ってもいいと思うんです。そのレベルに達しないうちに「あとどれくらいで」と口にするのは違うんじゃないかと。少なくとも1年や2年、余計なことを考えずに勉強に没頭する期間があっていいと思います。偉そうなことを言うようですけど。

田口:いや、わかるよ。池田真紀子も言ってたけど、まずは翻訳漬けにならないとね。勉強している間は24時間ずっと翻訳のことを考えてるぐらいが当然なんであって。振り返ってみれば俺だって最初はそうだったもの。面白くて面白くて、何をやってても翻訳のことを考えてる、みたいな。テレビを見てても「あ、この台詞使えるかもしれない」とかさ。

川副:文芸翻訳はお金にならないという現実にしても、物書きはむかしから儲かったためしがないんだから、気にしてもしょうがない(笑)

田口:芝居だってお笑いだって、みんないろいろ働きながらやってるんだし、翻訳だけそんなにうまくいかないよ。

川副:ただ、がんばって仕事が取れるようになったとき、あまりにお金の面で悲惨だと可哀想ですけどね。

田口:そうだね。じゃあ、生徒に言いたいこととしては、いつなれるかとかお金のこととかはひとまず考えるなと。

川副:それと、翻訳漬けになりなさいということです。そこを通らないで翻訳者になった人はいないと思う。

田口:どんな人も必ず一度は翻訳漬けになってるときがあるはずであって、いまならずにいつなるんだと。それは同感だな。田口先生と同じことやっててもダメだよ。競馬とかパチンコばっかりやっててもうまくなんないよと(笑)。

川副:はい(笑)。




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