【アメリア】対談の部屋 11-1 スペシャルトライアルから新人翻訳家が誕生!〜本を作る。編集者と新人翻訳家の共同作業〜
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対談の部屋  
<第11回>  全6ページ

第11回 スペシャルトライアルから新人翻訳家が誕生!   〜本を作る。編集者と新人翻訳家の共同作業〜
     飯野眞由美氏   国頭昭子氏
          飯野眞由美氏          vs.        国頭昭子

 出版翻訳家になるには幾通りかの方法がありますが、アメリアが開催しているスペシャルトライアルもそのひとつです。今回はスペシャルトライアルに応募して見事翻訳家としてデビューを果たしたアメリア会員・飯野眞由美さんと、スペシャルトライアルの仕掛け人として、そして児童書の編集者として飯野さんと一緒に本を作り上げた文溪堂の編集者・国頭昭子さんにお越しいただき、トライアルから本の完成まで、全過程をお話いただきました。

※スペシャルトライアルとは、書類選考がなく、課題があらかじめ発表されているトライアルです。定例トライアルとは別に、翻訳会社が早急に翻訳者を募集する際に実施します。今回ご紹介する文溪堂の『スパイダーウィック家の謎』の翻訳者募集は2003年4月23日〜5月9日にかけて行われました。なお、こちらは、フィクションノミネ会員もしくは訳書を出版されたことがある方限定のトライアルでした。

スパイダーウィック家の謎


『スパイダーウィック家の謎』 シリーズ

ニューヨークから古びたスパイダーウィック屋敷に引っ越してきたマロリー、ジャレッド、サイモンの三兄弟は、ある日、屋敷の隠し部屋で1冊の謎の書を見つけた。
そこには、エルフ、ブラウニー、ゴブリン、トロルなどなど、いい者も邪悪な者もあわせて、妖精たちの秘密がすべて書かれていた!
そして、その日から、この書を巡り、3人の子どもたち、妖精たちを巻き込んだ、奪い合いがはじまったのだった…!

(第1巻)人間、見るべからず (第2巻)魔法の石をさがせ
(第3巻)エルフとの約束 (第4巻)ドワーフと鉄の森
(第5巻)オーガーの宮殿へ



・プロフィール

翻訳者 飯野眞由美氏 (写真左)

翻訳学習歴約20年。子どもの本の翻訳者になりたいという中学生の頃からの夢を叶えて、今回『スパイダーウィック家の謎』の翻訳者としてデビュー。


編集者 国頭昭子氏 (文溪堂 図書出版グループ) (写真右)

文溪堂は主に児童図書、学校用教材の出版・販売を手掛ける出版社。国頭さんは編集者として、絵本や児童図書の編集に携わる。


1.チャンス到来!スペシャルトライアルで児童書の翻訳者を募集


--『スパイダーウィック家の謎』シリーズを出版することになった、そもそものきっかけを教えてください。


国頭:実はそれまでに弊社が出版していた翻訳書というと、絵本かテーマ性のしっかりした読み物、それに公共や学校図書館向けの学習図書などが主で、エンターテインメント系の読み物は出したことがなかったんです。それが、新しい分野を開拓しようと作品を探していたところ、この本のことを知り、私自身ファンタジーが好きでしたし、リーディングをお願いして上がってきたレジュメを見ると内容も非常に面白そうだったので、ぜひこれをやってみようということになったんです。

飯野
:「社運がかかっている」とは聞いていましたが、こういうことだったのですね。

国頭:だから、この作品の出来が悪ければ、エンターテインメント系にはその後も手が出しづらくなるということで、編集者としてはプレッシャーの掛かる仕事だったんですよ。本がすべて出来上がった今だから言えることですが……。

飯野:私にとってはすごく大きなチャンスで、とても感謝しているのですが、翻訳者をトライアルで選んだのはどうしてだったのですか?

国頭:以前からアメリアのスペシャルトライアルというシステムは面白そうだなと思っていたんです。私自身、新しいもの好きでもあったので(笑)。編集者としてこの作品を日本語の本としてどのように仕上げたいか考えたときに、まず思ったのは「ノリのいい本にしたいな」ということでした。翻訳をお願いする際にいつも悩むのが、どこまで原典重視でいくかということ。翻訳者によっては、原典に非常に忠実に訳す方もいらっしゃいますが、今回の場合はそれではちょっと困ると思いました。そのため今回は、どちらかというと、良くも悪くも発展途上で、出版者側の投げ掛けに対して、楽しみながら柔軟に対応してくださる方を……という希望がありました。実は、スペシャルトライアルを開催する前に、何名か翻訳者候補の方がいらしたのですが、誰か一人に決めてしまうと、訳文が上がってきて雰囲気がこちらの希望するものと違っても、そこでお断りすることができません。だったら、最初から訳文を見て翻訳者を選びたい、それならちょうどスペシャルトライアルが適しているということで、開催することにしました。

飯野:私はこのスペシャルトライアルの告知を『翻訳情報メルマガ【Biz-Amelia】』で見て、跳び上がるほど喜びました。まず、子どもの本の翻訳者を募集していること自体少ないですし、それでもノンフィクションならまだ見かけますが、フィクションのトライアルというのはそれまでにもまず見かけたことがありませんでしたから、もうこれを逃したら次いつ出会えるかわからない、という気持ちでチャレンジしました。

--スペシャルトライアルは、2003年のちょうどゴールデンウィークを挟んだ日程で開催されたのですよね。

国頭:はい、応募締切が5月9日でした。締切の設定については随分と迷いました。あまり短いと応募が少ないのではないかという懸念もありましたし、反面、応募が多すぎたら選ぶ作業が大変だという思いもありました。それに、実際の翻訳に入ると短い期間で訳していただかなければならないので、トライアルにあまり時間を与えすぎるのも適当ではないという意見もありました。ゴールデンウィークでお出かけのかたもいらっしゃるということを配慮して、告知から締切まで、約2週間に設定しました。

飯野:時間的には十分でした。訳し終わってから推敲する時間もありました。実際に仕事になると、1冊を1カ月ほどで訳さなければならなかったので厳しかったですが……。
 
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