【アメリア】対談の部屋 11-3 スペシャルトライアルから新人翻訳家が誕生!〜本を作る。編集者と新人翻訳家の共同作業〜
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<第11回>  全6ページ
第11回 スペシャルトライアルから新人翻訳家が誕生!   〜本を作る。編集者と新人翻訳家の共同作業〜

3.大学時代の友人とお互いを磨き合った“ふたり勉強会”

--独学というと、どのような勉強をなさったのですか?

飯野:実は、大学時代の友人にも翻訳家を目指している人がいて、彼女といっしょに“ふたり勉強会”をしていたんです。とはいえ、その頃は私はもう東京から北海道へ転居していましたので、電話で何時間も話をするというのが私たちの勉強会でした。

国頭:具体的にはどのようなことを話し合うのですか?

飯野:同じ原文を訳していても、人によって目を付けるところが違いますよね。彼女がすごくこだわって、訳文を練っているところを、私が気付かすに読み過ごしていて、解釈を間違えていたりする。人と相談すると、そうしたところに気付くことができて、お互いにすごく勉強になるんです。しかも、私たちの場合はお互いの得意分野が違ったので、そこがまた良かったようです。つまり、彼女は物語のストーリー性を考えて読む読み方が鋭くて、一方私は予備校の英語の先生だったこともあり文章を分析して文法的に読み解くことができるんです。だから、目の付け所がおのずと違って、ふたりで話しているととても勉強になりました。今から考えると、彼女と相談をしながら、さまざまなコンテストに応募していた数年が、自分が一番伸びた時期だったような気がします。

国頭:私も後から知ったのですが、実はその方も今回のスペシャルトライアルの最終選考に残っていらっしゃったんです。

飯野:そうなんです。彼女は私より先に翻訳家として仕事をはじめていたのですが、今回のトライアルにも“ふたり勉強会”をしながらそれぞれ訳文を練り上げて応募しました。

--お互いに相談もするけど、ライバルでもあるという感じですか?

飯野:そうですね。いくら相談をしても、日本語の文章にはそれぞれの特徴が色濃く出ます。それはお互いにもよくわかっています。彼女はどちらかというと純文学に合うような文章を得意としていますし、私はもっと大雑把でノリだけで書くところがある(笑)。

--スペシャルトライアルの選考は、どのように進んだのですか?

国頭:選考は、社内でもかなりもめました。きっちりとクラシカルに訳した方がいいという意見と、そうじゃなくてこれはどちらかというと日ごろあまり本を読まない子たちを取り込む本だという位置づけで、そのためにある程度テンポよく訳した方がいいという意見があったのです。結局、方針は後者に決定し、それに沿って選考が進められました。

--最終選考に残ったのは何名ですか?

国頭:4名です。最初の段階で、誤訳の多い方や、あまりに誤字脱字が多い方を除いて、それから文体や雰囲気を見ながら4名にまで絞りました。この段階まで残った方は、みなさん実力はある方でした。ただ、文体や全体の雰囲気はかなり違いました。今回の作品に関してはテンポのよさを重視したので、飯野さんの訳文が一番合っていたということです。

飯野:作品そのものとの相性も良かったんでしょうね。自分に合っていないと、うまく訳せないこともありますから。

国頭:スペシャルトライアルのいいところは、英語力、翻訳力を判断した上で、最終的に「この方なら私たち(出版社側)と同じ感性というか、同じ見方でこの作品に取り組んでいただけるな」と思える方を選べる点です。実際にあることですが、出版者側と翻訳者側の捉え方が違うと、不幸以外のなにものでもありません。どちらかが妥協しなければいけないわけですから。スペシャルトライアルではその点を見極めて選べるので非常に助かります。
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