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  ディケンズ発砲事件 提案者:充田
用語: THE PEOPLE
訳語候補: パート1/ユニット2
説明: 州裁判所の判例で州が訴訟当事者になったのは、アイオワ義父殺人裁判に次いで、今回が2度目ではないか(サンノゼ歩行者転倒事件では、サンノゼ市が訴訟当事者)と思いますが、アイオワ義父殺人事件では訴訟当事者がSTATE OF IOWA(アイオワ州)と単純に州名が記載されていたのに対して、今回のディケンズ発砲事件ではTHE PEOPLEとなっております。

極めて限られた範囲ながら検索して見たところでは、大部分の州裁判所判例で州が訴訟当事者となる場合は、上記のSTATE OF IOWAのように州名をそのまま表記する例が多いが、そうでない場合少なくとも下記の3つのスタイルがあることを発見しました:
(1) THE PEOPLE
(2) THE PEOPLE OF THE STATE OF NEW YORK
(3) COMMONWEALTH OF PENNSYLVANIA(英米法辞典により「ペンシルバニア州」と理解いたします)
そして、(2)の場合は、例えばTHE PEOPLE OF THE STATE OF SOUTH DAKOTAなどの例が見当たりますが、(1)の場合はどうもカリフォルニア州だけに限定されているのではないかと思われます。

そこで、このTHE PEOPLEの訳し方ですが、仮訳文では「カリフォルニア州市民」と訳されております。 これはTHE PEOPLEの表現に特に配慮した訳出で、良く理解できると思いますが、何分われわれにとっては初めての体験であり、今後また出てくる可能性があるかも知れませんので、(2)の場合も含めて訳し方についてリーダーコメントを頂戴できればと存じます(英米法辞典にも訳語が見当たりません)。

 THE PEOPLE 吉本 2005/08/23 11:57:08
確かにこのプロジェクトで扱った判例では州が原告になったものは少なかったですね。

原告をTHE PEOPLEと書くのは、検察が「州=州民」をrepresentする形で原告の立場にあることを示しているので、THE STATE OF〜やTHE COMMONWEALTH OF〜のように書く場合と基本的には意味が変わらないものと思われます。つまり、刑事事件で王や女王が原告とされるイギリスと異なり、THE STATE(THE COMMONWEALTH) OF〜としている場合でも、原告は州知事などではなくTHE PEOPLEであるという了解があるわけです。

他の州でもTHE PEOPLE OF THE STATE OF〜の形はよく見られますので、カリフォルニアにこの表記が多いことは慣例の範囲であり、特別な含意があるわけではないと考えます。判例の引用形式(サイテーション)ではどの州でも原告の部分に州名を表記する(California v. Martinのように)だけですから、本件の日本語表記も「カリフォルニア州対〜」としている次第です。

「市民」という言葉は政治運動の主体を表す意味でよく使われる言葉ですが、自治体である「市」の「民」という意味と混同される可能性もあるでしょう。原告が市民というと行政訴訟のように市民自体が訴訟の当事者という印象を与える可能性もあります。これは「人民」「州民」などを用いても同様。いずれにしろ、THE PEOPLE自身が直接原告となっているわけではなく、THE PEOPLEの名の下に訴訟を提起しているわけなので、その点の誤解がないように表記した方がよいのではないでしょうか。

したがって、この場合のTHE PEOPLEは「カリフォルニア州」とすることをご提案いたします。