アメリア公式ブログ

翻訳者ネットワーク「アメリア」が、
最新情報やアメリア会員の方の
翻訳実績を綴ります♪

こんにちは。アメリア事務局の並木です。

すっかり秋も深まってきましたね

先日参加いたしました日本翻訳連盟(JTF)主催による

『辞書・コーパス・用語集』最新情報というセミナーが大変勉強になりました。

講師:

高橋聡先生深井裕美子先生

セミナー概要:

本セミナーではまず、翻訳者が使える辞書環境の最新情報をお伝えし、さまざまな辞書の正しい使い方を復習する。

その後、実際の翻訳ではどの辞書をどのように使うべきかという話に進み、各種コーパスを紹介した上で、辞書にない用語をどうするかという話にまで踏み込む。

(JTFのHPページより)

講師のお二方のブログにも貴重な情報が満載ですので、ぜひアクセスしてみてください。

高橋先生禿頭帽子屋の独語妄言

※10/29発売の『翻訳力を鍛える本』でも辞書についての記事(pp.16-21)を執筆されています。

深井先生Nest翻訳講義 資料室」 「翻訳者の薦める辞書・資料

この度は貴重な勉強をさせていただきありがとうございました

アメリア事務局 並木

爽やかな陽気が続いておりますね

先月受講した、日本翻訳連盟(JTF)主催による

プロが教える日本語文章の校正・リライトのテクニック

というセミナーがとても勉強になりましたのでご報告いたします。

講師は、“日本語お助け人” こと校正者/リライターの磯崎博史さんです。

磯崎さんのHPはこちらからご覧いただけますので、

ぜひ一度アクセスしてみてください

翻訳は、語学力や専門知識はもちろんのこと、

それと同じくらい日本語力が厳しく問われるお仕事ですよね。

この度のセミナーでは、日本語の奥深さとプロに求められる厳しさを再確認し、

具体的なテクニックの数々も非常に参考になりました。

磯崎さんとJTFにご許可いただいた上で講義の要約をお伝えします。

日本語の運用能力を高めることで、翻訳者として「選ばれる理由」を作りましょう!

たとえ小さな改善であっても、その積み重ねが全体的な品質向上につながります。

日本語として自然な、そして正しい文章を書くために必要なスキルを学びましょう。

具体的なテクニックの一例…

①文意にふさわしく、日本語として自然な語句を選択する

語と語の親和度を意識する

例:

×チラシを挿入する

○チラシを同封する

×謙虚な額

○控えめな額

語感がしっくりこない時は類語を調べると良い

例:「振る舞い」→「言動」にしてみる

漢語を和語にしてみる

※日本人の言語中枢の大部分は和語で成り立っているので、

漢語を和語にするだけで日本語らしさを感じてもらえる。やわらかい表現になる。

例:「~で構成された」→「~からなる」にしてみる

②重複を解消する

同一語句が連続する場合は、一方を違う表現にして変化をつける

概念の上位/下位に着目する

例:「端末」が2回出てくる文なら、例えば一方を「製品」(「端末」よりも上位概念の言葉)に置き換える。

漢語の意味範囲に留意する

例:

×心を共感しあう

○想いを共有する

※「共感」という言葉には、そもそも「~しあう」という意味が含まれているので「共感しあう」は重複表現。

同一助詞の3回以上の連続は避ける

例:

×カトリック教会の中の宗派の妥協の産物→「の」は2回くらいに抑えたい

○カトリック教会の諸宗派における妥協の産物

③適切な表記にする

文意に合わせて適切な表記を選択する

例:

×~することからはじめて

○~することから始めて

※「初めて」、「始めて」のいずれの意味なのかが明確に伝わるように、

余計なところで漢字をひらかない。漢字をひらく目安は、

十五画を超えるか否かが一つの判断基準になる。

品詞別の表記に留意する

例:

×先生はお話になった

○先生はお話しになった

※話すを動詞として使うなら送り仮名が必須。名詞として使うなら送り仮名はなしでOK。

こまめに辞書にあたり、正確な表記を確認する

例:下記は全て表記の誤り

×優しさの込もったお手紙

×例えどんな時も

×名声を欲しいままにする

×言葉を散りばめる

④正文に仕上げる

主語と述語の対応関係を意識する

例:

×彼の小説の特徴は、青春ではなく晩年を描く。

○彼の小説の特徴は、青春ではなく晩年を描くところにある。

語句間の修飾関係に過不足が生じないように留意

例:

×オランダの司令塔スナイダー対策を巡って試行錯誤していた。

○オランダの司令塔スナイダーへの対策を巡って試行錯誤していた。

※×のままだと、「司令塔」が指し示すものが「スナイダー」なのか「スナイダー対策」

なのかがはっきりしないので、複合格助詞「への」を入れて修飾関係を明確にする。

読み手の理解を助けるための語順変更や、

必要に応じての補完語を考慮する

以上となります。

いかがでしたでしょうか?

もっともっと知りたい!学びたい!と感じた方は

ぜひ今後、磯崎さんのセミナーを受講してみてくださいね。

私はセミナー当日に内容の復習はしたものの、

その後日頃の業務に応用することの難しさを実感しています。

日本語力アップへの道は一日にしてならず、ですね!

時間はかかっても少しずつでも向上していくと良いのですが…。

磯崎さん、日本翻訳連盟様、この度は貴重な機会を誠にありがとうございました

アメリア事務局 並木

今回は、事務局スタッフが参加したJTF翻訳セミナーの様子をお伝えいたします。

【日時】2014年12月18日(木)

【テーマ】あなたの翻訳は大丈夫? ~翻訳者による品質保証を考える~

【講師】齊藤 貴昭氏 翻訳コーディネーター・社内翻訳者

【概要】「質の良い翻訳」にするためには何をどうすればよいのか?

①「翻訳後チェックすればいい」という考えはダメ。ミスを★最初からしない★という考えを持つこと。

ミスがある翻訳物=不良品である。そういう不良品を作っていることに罪の意識を持つこと。なぜなら、翻訳者とは職人であるから。

②ミスの大半はヒューマンエラーである。

スペルミスや数字の転記ミスなど。どんなにいい訳文でもこういうポカミスがあると「翻訳物の品質が悪い」と判断される。

③では、どうやってミスを防ぐか

1.翻訳環境を整える

例えば、モニターを2台そろえたり、大型モニターを用意するなど、物理的に間違った操作をしにくくする環境にする。難しい単語は口に出しながらタイプする、など。

2.翻訳前の事前準備をしっかりとする

スタイルガイドの確認、あいまいな点は翻訳会社へ確認し事前にクリアにしておくこと。

3.翻訳中のミスはすぐ気付き、すぐつぶす

転記はせずに、コピペを多用する。数字はパソコンに発音させるようにして耳でもチェックする、など。

4.翻訳後は人間の知覚をフル活用し、集中する箇所を絞って検出力を上げ、ミスゼロにする。

漠然とチェックするのではなく、チェックポイントをその都度絞って、そこに意識を集中してチェックすること。 もちろんここでツールを使うのはOK。ただ、自動検出ツールの場合はその精度の検証を行うこと。また自動検出に頼りっきりになるとチェック感性が鈍る可能性があるので、使い方はよく考えて!

<河原感想>

職人、翻訳者としての心構え、ミスを出さない方法、翻訳会社と翻訳者との責任の線引き、等についてお話されていました。 繰り返しおっしゃっていたのは、「ミスをしないためには、視覚、聴覚、触覚といった人間の知覚をフル動員して対策をしましょう」ということです。会員の皆さんは意識の高い方ばかりだと思いますが、もし「翻訳後チェックすればいい」とか、あるいは「最終的にチェックはコーディネーターさんとチェッカーさんがしてくれるので、多少こちらのチェックが甘くてもまあいいか」とお考えになる方がいらっしゃいましたら、ぜひ参考にしていただければと思います。

齊藤さんご自身が開発したツール、WildLightはこちら→http://wordwildlight.wordpress.com/

数字の認識と色のパターン認識を同時に使ってチェックをするものです。

無料でご利用いただけるそうなので、ぜひお試しくださいね!

アメリア事務局 河原

弊社スタッフが2014年2月13日に行われたJTF翻訳セミナーに参加してきました。

その際のテーマは「メディカル翻訳:クライアントの要求にどうこたえるか

~翻訳会社・翻訳者に求められる対応と、翻訳会社から翻訳者へ向けてのメッセージ~」でした。

講師は、アメリアの「定例トライアル」2014年5月号 日英(メディカル)でも審査をご担当いただく

株式会社ウィズウィグの川原氏です。

その講義内容は、メディカルのみならず、全分野の翻訳志望者の方に幅広くお役に立ちそうな

内容だと思いましたので、レポートの中から特にお伝えしたい項目を厳選し、

シェアさせていただきます。

【講義概要】

トライアルに合格できる翻訳者と、合格できない翻訳者とでは何が違うのか。

仕事が減ってしまう翻訳者と、常にトップ翻訳者として活躍し続ける翻訳者との違いは何か。

様々なクライアントの声に応え、多様なプロジェクトに向き合ってきた翻訳会社の

コーディネータが、メディカル翻訳市場の最前線を語ります。

【講義のポイント】

翻訳者に求められること

・納期厳守。

・体調管理。

・見直しを徹底し、訳文のクオリティを高く保つこと。

・参考資料に合わせる

 ※注:参考資料をよく読み込む。基本的には参考資料の訳語を踏襲するという意味ですね。

・オリジナリティあふれる訳文は控える。文学調の訳文もNGだそうです。

・訳出時に疑問/不明点があれば、コメントを残す。

・契約している翻訳会社のソースクライアントの領域に精通すること。

・稼働時間の延長/変更可な場合はマメに連絡を

 ※注:夕方発注→朝納品が多いので、夜間翻訳できる人は有利だそうです。

トライアルに合格できる翻訳とは?

ズバリ、こんな訳文ならトライアルに合格できるそうです

・誤訳がない。

・訳抜けがない。

・数値に誤りがない。

・文書の種類に応じた適切な訳語を使用できている。

・内容が理解できている。

・参考資料が適切に使用されている。

・原文の誤りに気付いてコメントが残せる。

トライアル応募時の注意点

・必ずファイルの受領報告のメールを送りましょう。

・原文を上書きするのか等、提出時の体裁も確認します。

・実務経験があるなら、その実績も伝えましょう。

・取引希望価格は高すぎると仕事がもらえない可能性があるので、

 まずは希望額を伝えて様子を見ましょう。

・原稿を公共の場で広げる等、他人の目に簡単に

 触れられる状況は作らない方が無難です。

・ネット上に原稿や用語集を上げる等の行為は言語道断!

複数の翻訳会社との契約について

複数社との契約は、仕事の幅やカバーできる領域が広がると共に、

翻訳会社の倒産等のリスクヘッジになるもなる一方、

依頼が重なった際に断ることが増えることで、逆に仕事の依頼が減ってしまう、

仕事を断りたくないがために許容量以上の仕事を引き受けてしまい、

結果仕事が粗くなるといったデメリットも考えられます。

基本的なことですが、デメリットへの対策としては、

依頼が重なった時にも断るのではなく、いつならまたどのくらいの分量なら

対応できるのかを提案してみるのが有効そうです。

翻訳者に今後より一層求められること

・参考資料を適切に使用すること。

・テンプレートに対応出来るだけの高いWord操作能力。

・恒常的な知識/用語のアップデート。

以上、個人翻訳者の方にとってご参考となる項目も多いように思いましたが、

いかがでしょうか。講師の方や主催団体であるJTFにも許可をいただいた上で

ブログに掲載させていただきました。

なお、本レポートはあくまで聴講者の見解であり、

必ずしも講師の方のお考えそのものをお伝えできているとは限りませんので、

その旨どうかご理解いただけますと幸いです。

アメリア事務局 並木

5月13日に行われたJTF翻訳環境研究会に参加してきました

今回のテーマは「金融分野日英翻訳―農林中金総合研究所の金融論文英訳、

The Nikkei Weekly英文記事を日英翻訳に生かす」です。

講師は、金融翻訳者でJTF理事でもある佐藤晶子氏と、異文化経営コンサルタントの

冨永信太郎氏です。今回も中身の濃い研究会でしたので、そのエッセンスを

ぎゅぎゅっと搾ってブログ読者の皆さまにお届けしたいと思います。

佐藤晶子氏といえば、アメリアの「定例トライアル」<日英>の審査員でも

いらっしゃいます。6月開催分は、5月下旬~6/21(月)18時まで訳文を受け付けますので

張り切ってご応募ください

第一部:農林中金総合研究所の金融論文英訳

第一部では、佐藤晶子氏が実在の金融論文の英訳をライブでご講義くださいました。

単語一つを訳すにしても、その分野の専門家が読んでも不自然ではない訳語か?

英語社会でその語が広く使われているか?等を徹底的に調査する必要があります。

佐藤氏はGoogle検索を駆使して、より精度の高い裏付け作業を行っているそうです。

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例)「個人消費」を最適な英語に訳出するには?

(1) まず辞書(英辞郎、金融辞典など)を引くと「consumption」という語が共通で使われて

いることがわかる。

(2) Google検索する。 

検索例) site:go.jp 個人消費 consumption filetype:pdf

※信憑性のある文献にピンポイントで到達するため、日本政府機関(site:go.jp)の文章に限定して検索。

(3) 検索結果から「personal consumption」が適当な訳語だと見当をつける。

(4) 次に、その語が英語社会で広く使われているかを確認するため再びGoogle検索。

検索例) site:edu “personal consumption” filetype:pdf

※今度は米教育機関(site:edu)の文章に限定して検索。

(5) 多くの用例がヒットすればOK。ここまで調べてはじめて使用する訳語を決定する。

※表記に関しては「The Chicago Manual of Style」等を参照。

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~ 佐藤氏が考える日英翻訳の基本姿勢 ~

1 サービス業としての翻訳-顧客の意図を汲む

・作者の思想を曲げない。

・常にクライアントに目を向ける。

2 翻訳者としてのリスク管理を徹底する

・自分の能力で何ワード対応できるか把握する。

 佐藤氏にとっては時間管理がリスク管理そのもの。

・自信を持ってこの訳語で間違いないと断言できる単語とできない単語をはっきりさせ、

 クライアントから質問された際に説明できるようにする。

3 価格競争の中で継続受注するには何をするべきか

・品質を高める努力がすべて。それが継続受注につながる。

第二部:The Nikkei Weekly英文記事を日英翻訳に生かす

第二部では異文化経営コンサルタントである冨永信太郎氏が、

下記の議題を中心にさまざまな興味深いお話を聞かせてくださいました。

1 翻訳を超える仕事とは何か

・ただの逐語訳ではなく、相手への思いやりを伝えること。

・自然でやわらかい表現を目指す。適切な英語表現が信頼関係を生む。

2 日本企業四半期業績国際電話会議説明録音の英訳

・最初に決済書類を精読して重要語句を英語でインプットすることで、

 スピードと品質を維持。

3 医療器具製造会社『朝日インテック』の会社案内英訳

・あいまいな日本語表現の中から書き手の思想を汲み取り、最適な英語にする。

・時には文書の構造自体を思い切って変えることも必要。

・英語では、最も伝えたい主張を最初に持ってくるようにする。

4 The Nikkei Weeklyの日英翻訳及び国際ビジネス活用法

・同紙には1週間分のニュースの中から厳選された記事が掲載されるので、

 これを精読し、使えそうな単語や表現を頭にインプットしておくと

 非常に役立つ。

また、冨永氏は、ただのIT(Information Technology)ではなく

ICT(Information and Communications Technology)をフル活用しているそうです。

例えば、Skype、Youtube、LinkedIn、Facebook、Myspace、Twitter、ブログ(英語・日本語)等。

それらのツールから発信する情報がきっかけとなり、仕事を受注することもあるとか。

ブログ読者の皆さんも積極的にICTを取り入れてみてはいかがでしょうか!?

個人的になるほど!と思ったのは、Twitterの本来の意味は「さえずり」なのに、

日本語では「つぶやき」と訳されている点。Twitterの本来の面白さは、

相互にさえずりあうように意見を交換しあうことにあるのに、日本では「つぶやき」と

訳されているためにただの独り言…で終わっている人が多い。

博識なお二方の講師から、今回も多くを学ばせていただきました!

品質を維持するため、たゆまぬ努力を積み重ねていらっしゃるお二方の姿勢は、

まさにプロフェッショナルそのものだと感じました。

アメリア事務局

並木

先週の3月11日に行われた、JTF翻訳環境研究会に参加してきました。

今回のテーマは「製薬会社開発の翻訳最前線・求む!スタメン翻訳者」です。

講師は製薬会社であるグラクソ・スミスクライン株式会社で

開発部門の翻訳チームに在籍されている加瀬 淑子氏です。

翻訳会社へ外注するソースクライアントでありながら、

個人(社内)翻訳者でもある加瀬氏。

受発注双方の事情を熟知した方ならではの貴重なお話を伺いました。

製薬業界の情報、そして「スタメン訳者」とは…というポイントを中心に、

抜粋してご紹介いたします。

製薬業界のお仕事とは…?

品質関連、非臨床、臨床薬理、薬事行政関連、申請関連の論文等々多岐におよぶ。。

海外カウンターパートとのやり取りの関係で翻訳依頼が夕方~夜にかけて

発生することがとても多い。また、世界の動向や各国スケジュールの影響を

常に受けるため、突発的な発注やスケジュールの組みなおしは日常茶飯事。

翻訳が申請スケジュールに影響を及ぼすことはできず、

チェックに割く時間も限られているため、スピード・質ともに

非常に高度な水準が要求される環境。

※同社の場合には業界内でも特に多数の翻訳(なんと年間1,800件・約2万ページ)が

 発生するのだそうです!

「スタメン訳者」とはどんな方?

・安定した基本翻訳力(文法、読みやすさ)、スピードと品質が伴う方

 ⇒直訳でなく、意訳しすぎず内容は落とさないのが理想。

  英文を彷彿とさせる日本語は論外。

・フレキシブルな対応ができる方

 ⇒申し訳ないとは思いつつ、スケジュールが不確定の中で発注せざるを

  得ないため、気軽に割り込みを受けてくれる方には非常に助かっている。

  同社では、発注量が少量になり過ぎないように手配するなど、

  翻訳者の方のメリットとなるように工夫しているとのこと。

・参考資料から適切に表現を引用できる方

 ⇒活用してもらうために多数の資料を渡すので、必要に応じた流用は不可欠。

  経験を積めば要所が掴めるようになるが、依頼者の意図を汲み取れるとベスト。

・悪文の原文を超越する翻訳力を持っている方

 ⇒ロジックも理解し、原稿の矛盾も指摘くださる方は大歓迎。

・依頼主の顔が想像できる方

 ⇒依頼側からのクレーム第1位は「理解して訳していない」というもの。

  「翻訳」として合っているのは当然のこと、日本語のみを読んで

  依頼者および実際にその文書を利用し業務に従事する担当者が

  理解できる仕上がりになっているかどうかが非常に重要なポイント。

「こんな翻訳よみとうなかった!」NG訳文例(抜粋)

・助詞、係り受けが誤っているなど基本的な日本語力の欠如。

・「~における」「関する」など学生の和訳のような冗長さ。

・長文(5行以上は完全NG)、受動態の多用。

・参考文献・ガイドラインを参照せず、特定の言い回しが使えない。

・複数の訳者さんによる用語の不統一。

また、会場に出席されていた方からはこんな質問が。

Q.フリーランスは定年がないといいますが、

  現在御社で活躍されている翻訳者さんの平均年齢は?

A.おそらく40代前後~50代の方が中心です。

  英語の場合には60代までかと思いますが、

  独、仏では70代の方でご活躍されているかと思われます。

  体力さえあれば上限は設定していません。

「スタメン翻訳者=求められる翻訳者」特に強調されていたのは

スピード感・フレキシビリティ」と「読みやすさ」の2点。

製薬業界特有のスピード感はあったとしても、

顧客満足度を高めるためにはどの分野でも

求められる要素は同じなのですね

常に“更なる高み”を目指し

それぞれが求められている役割を的確に遂行するべし

というプロ意識がひしひしと感じられる講演でした。

アメリア事務局

中川

先日10月8日(木)に、社団法人日本翻訳連盟(JTF)が主催する

【翻訳環境研究会】に参加してきました

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【翻訳環境研究会】とは、翻訳者・翻訳会社・発注企業間で発生する

課題を共有し解決策を探る目的で、年10回開催されています(開催地は東京です)。

第136回目となる先日の研究会では、

「リーマン・ショック後の金融翻訳」~厳しい環境をバネに~というテーマで

講演が行われました。講師は、有限会社アールスクエア 代表取締役でもある金融翻訳者の

松永 宏昭(まつなが・ひろあき)氏です。

松永さんは、第一線でバリバリ活躍されている金融翻訳者さんで、

ソースクライアントから金融のウィークリーレポート(英日)を定期受注されているそうです。

分野を越えて活用できそうな情報を沢山いただきましたので、

印象に残ったポイントを箇条書きにしてみます。

もしよろしければご参考にしてみてください。

リーマン・ショックの影響で2008年第4四半期あたりをピークに一時的に受注量は減ったが、

現在ではほぼ回復している。クオリティの高い仕事をしていれば、

仕事量が減少する一方だったり単価が下がることは決してない。

クライアントから評価される訳文を作るためには、

英語力、専門知識、日本語力のすべて充実させることが大切である。

原文読解の段階では、自分の意図を入れずに徹底的に内容を咀嚼することが大切。

訳文が単なる訳語の置き換えになっていたり、安易にカタカナを使っていないかチェック。

そうなっている場合は、自分では理解しているつもりでも実は原文の意図を汲み取れて

いないことが多い。

 

金融翻訳の場合は、翻訳するドキュメントが誰の立場から書かれたものなのかという基本を

踏まえた上で、世界中の経済、社会、政治的な動向まで把握する必要がある。

賞味期限が短い生ものの情報であることも多く、常に勉強が必要。

実際の仕事を通して、基本的な事柄から一つ一つ自分の頭で考えながら吸収することで

専門知識は蓄積されていく。

翻訳された文書を読むのは機関投資家など金融のプロフェッショナルがほとんどのため、

プロフェッショナルが読んで不自然ではない訳語の選定が必要。日頃から新聞等でどのような

日本語表現が使われているのかをチェックする必要がある。

商品価値のある日本語を書く訓練も必要。

一言で金融といってもさらに分野は細分化されているので、広く浅くカバーするより、

特定分野を極めて自分のウリを明確にした方が良い。

ソースクラインアントとの直接取引のメリットは、単価が高いことと、さまざまな業界情報を

入手できること。デメリットは仕事を断りにくい点。

どれほど経済状況が厳しくなっても、真の実力が身に付いている方はお仕事に困っていないようです。これからはより一層、翻訳力を磨くことが最大のリスクマネジメントになりそうですね

事務局 並木

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