ご利用企業インタビュー

株式会社エンジン・ルーム

2008年から翻訳書の企画・制作を手がけているエンジン・ルームは、もともと1988年にシステム会社として設立された会社です。システム会社が、なぜ翻訳出版業に関わるようになったのか、それは代表取締役である藤田修さんの経歴と深い関係があります。

元々、コンサートやイベントの企画・制作・マネジメントを行う会社の取締役をしていた藤田さん。1988年というと、さまざまな業種でコンピュータが導入されるようになった初期の時代ですが、イベントのチケット販売やスケジュール管理などをコンピュータで管理することを考え、古巣の会社に席を置いたままエンジン・ルームを立ち上げたのです。

このシステム会社で後に、ある出版社のシステムを手がけることになったのですが、その会社が倒産しそうになり、藤田さんは経営の立て直しを頼まれました。

「出版業界は初めてでしたが、音楽業界では長年の経験がありました。音楽、演劇、舞台、放送、出版と、これらの世界は手法こそ違えども“つくる”ということでは共通項があったので、やってみようと思いました。それから10年。社員は社長兼編集者である私と経理の女性の2人だけでしたが、170冊以上の本を作りました」(藤田さん)

出版社のほうは定年を迎えて退職しましたが、本作りには魅了され、ずっと続けていきたいと思い、エンジン・ルームの新規事業として出版を手がけていくことにしました。それが2008年2月のことです。

「当社はシステム・エンジニア2名と私だけの小さな会社です。そんな規模の会社に何ができるのか。そこには限界と可能性があると思いました」と藤田社長。大手と同じ手法でやっていたのでは太刀打ちできません。そこで、大手もまだ目を付けていない良い作品がいっぱいあるはずだと海外に目を向け、翻訳書に狙いを定めました。

ただ、翻訳書とはいっても、版権エージェントからの情報を検討するだけでは、やはり情報力や資金力の違う大手にかないません。そこで、知人などに声を掛けて、海外在住の日本人から情報を送ってもらうなど、できるだけ独自ルートを開拓するようにしました。

「小規模だから多くの点数を手がける必要はなく、興味の持てる分野に絞って力を注げばいいのです。これまでにスペインの紀行本、日本の風景写真集、中国美術家の作品集、そして最近は欧米作家によるミステリ作品を発行してきましたが、いずれも独自ルートから探した本、持ち込み企画の採用、紹介された人脈から実現した本などです」(藤田さん)

アメリアを知ったのは、前の出版社で社長をしていた頃のことだそうです。
「仕事をしていた翻訳者の方に教えていただきました。英語以外の翻訳者を探していて、誰か知らないかと尋ねたところ、アメリアを利用しては、と教えられたのです」(藤田さん)。以来、リーディングスタッフ、チェッカー、翻訳者の募集など、必要に応じてアメリアを利用していただいています。

「特定の作品があるときはJOB INDEXも利用しますが、キーワードで検索できる会員プロフィール検索が便利でいいですね。いずれの場合も、会員の皆さんのプロフィールに目を通すことになります。TOEICの点数なども一応見ますが、一番重視しているのは人柄です。プロフィールの書き方、電話やメールでのやりとりから、柔軟性や協調性が感じられるような人と一緒に仕事をしたいですね」(藤田さん)

翻訳者からの企画持ち込みも大歓迎。これまでにも持ち込みによって出版に至ったケースが多々あります。既に手がけてきたミステリ、ノンフィクションに加え、今後は絵本、文学、写真集なども検討したいと藤田さんは意欲的です。また、元々システム会社という特性を生かして電子出版も視野に入れており、今後がますます楽しみです。

同社が企画・編集した本の中からアメリア会員が制作に関わったおすすめの4冊を藤田さんに紹介していただきます。

聖地サンティアゴ巡礼の旅
発行:株式会社エンジン・ルーム
発売:ぴあ株式会社 2008年10月刊

「スペインのガリシア政府視察団の依頼、協力で企画・制作した本。スペインの北西部、ガリシア地方を紹介する内容で、スペイン語原稿の翻訳部分と日本での取材で構成されています。ここには聖地サンティアゴがあり、その巡礼ルートが有名です。海外ミステリのリーディングで知り合ったアメリア会員の方がガリシア政府視察団の通訳をされていて、このお話をご紹介いただきました」。

101 回目の夜
ダグラス・ブラウン著
大田直子訳
発行:エンジン・ルーム
発売:河出書房新社 2009年7月刊

「『現代フランスにおける文学者10人とミステリー作家10人』の調査をフランス在住のフリーの研究者に依頼したことがきっかけであるエージェントと知り合いになり、紹介されて出版が決まった本です。連続101日間のセックスに挑戦した著者が、その様子をレポートしたノンフィクションです。テーマは一見過激ですが、愛と笑顔につつまれた心温まる作品です。翻訳者はアメリアで募集しました」。

消えた錬金術師』 2010年5月刊
モーツァルトの陰謀』 2010年10月中旬発売予定

スコット・マリアーニ著
高野由美訳
発行:エンジン・ルーム
発売:河出書房新社


以前アメリアで、イタリア語の短いコピーの制作をお願いできる方を募集したことがあります。高野さんはその時に引き受けてくれた方で、以来のお付き合いです。この作品は高野さんが海外の書店で見つけたと梗概を持ち込んでくれました。著者は英国の作家スコット・マリアーニ。その処女作です。世界30カ国で翻訳出版されており、映画化も決定しています。主人公ベン・ホープが活躍するシリーズもので、第二弾の『モーツァルトの陰謀』が今月中旬に発売予定。


代表取締役 藤田修さん

原文に忠実に、というのは翻訳の基本ではありますが、出版翻訳の場合は、その出来上がった日本語の文章ががちがちだと読者は楽しめません。特に弊社が手がけているようなエンターテインメント系では、哲学や純文学とは少し違い、原文に沿いすぎるのはよくない気がします。読者のことを考え、最終的に印刷される文章がきちんと日本語になっているか、この作品を日本の土でどう根付かせるかというところを意識していただきたいのです。そのため弊社では校正には5人が関わり、意見交換をするようにしています。

リーダー、翻訳者選びには、アメリアを大いに活用させていただいています。まずはプロフィールを読んで採用を検討させていただくわけですが、プロフィール文を読むとその人のセンスがある程度計れる気がします。最後にひと言、自分をアピールする文章が効果的に入っているといいですね。長すぎても逆効果です。

今後もアメリアを通して優秀な翻訳者の方と出会えることを期待しています。