アメリア会員インタビュー


遠藤 康子さん

第103回

実務は短距離走、出版はマラソン 異なる分野の翻訳を組み合わせて活躍遠藤 康子さん

Yasuko Endo
出版翻訳でのデビューを足がかりに 仕事の幅を広げようと実務翻訳にも挑戦

濱野 :本日お迎えしたのは、出版と実務の両方の分野の翻訳を手がけていらっしゃる遠藤康子さんです。実務ではマーケティング資料や時事ニュース、出版ではロマンスからノンフィクション、各種ビジネス書まで幅広いジャンルでご活躍です。また、7月には最新訳書『伝わるWebライティング スタイルと目的をもって共感をあつめる文章を書く方法』(ビー・エヌ・エヌ新社)を上梓されたばかり。出版と実務の掛け持ちとなると、日々お忙しいとは思いますが、現在はどのような比率でお仕事を請け負っているのでしょうか?

遠藤 :波はありますが、平均すると実務が6〜7割、出版が3〜4割といったところでしょうか。毎週3〜4日ほど定期的に時事ニュース翻訳の仕事が入るので、残りの時間にほかの案件を組み込んでいくことになります。出版のほうで大きな仕事が入ったときには、実務翻訳のエージェントの方に頼んで、スケジュールを調整してもらうようにしています。みなさんとても理解がある方々ばかりで、出版の仕事が終わった頃に「最近の空き状況はどうですか?」と声をかけてくださるので、すごく助かっています。

濱野 :なるほど、ニュース翻訳やほかの実務翻訳、出版翻訳をうまく両立できる環境が整っているんですね。プロフィールを拝見したところ、2006年から翻訳の仕事を開始されたとのことですが、実務と出版のどちらがさきだったのでしょうか?

遠藤 :最初に依頼を受けたのは、出版のリーディングです。もともと出版翻訳の通信講座を受講しており、トライアルやオーディションにも挑戦していたんです。そのうちにリーディングのお話をいただいたり、下訳や共訳の仕事を依頼されたり……。その後、出版オーディションに合格して、初めて小説の翻訳を丸一冊担当できることになりました(『秘められた恋の行方』(マグノリアロマンス、2011年)。ちょうどその頃は、子供ふたりの手が離れてきた時期でもあったので、さらに仕事の幅を広げて将来に備えたいと考えるようになり、実務翻訳の会社のトライアルに挑戦。運よく何社か登録できることになりました。

濱野 :ということは、実務翻訳の学習はしていない?

遠藤 :そうですね。もちろん、何社か受けてダメだったり、受かったりでしたが……。ただ実務と言っても、私が請け負っているのは研修資料、マニュアル、パンフレットなど、いわゆる「読み物」が多いので、自分としては「翻訳」という同じくくりであって、「実務翻訳に挑戦するぞ」というような強い気概があったわけではありません。

濱野 :とはいえ、実務翻訳の勉強をしたことがないのにトライアル合格というのは、そうそうあることではありませんよね。すごいと思います。