濱野 :翻訳力向上のために、何か取り組んでいることはありますか?
遠藤 :なんといっても基本は読書ですね。先日も、ヨーロッパ史を一度きちっと学んでおきたいと思い立って、塩野七生さんの「ローマ人の物語」シリーズ全15冊を読み終えたばかりです。大の歴史ファンというほどではなかったのですが、読みはじめたらすっかりハマってしまいました。そのあと読んだ『赤毛のアン』や、たまたま観た映画にもローマの逸話やラテン語が出てくる場面があり、以前よりも深く理解できた気がしました。
濱野 :なるほど、読書でつけた知識が次の読書にも活かされ、それが翻訳の仕事の糧になるということですね。ほかにも何か心がけていることはありますか?
遠藤 :いまでもタイミングが合えば、短期の翻訳講座を受けたり、講演に出向いたりするようにしています。先日も翻訳家の井口耕二さんの講演を聞きにいき、出版翻訳でも仕事量を増やすためには、パソコンの機能やツールを上手に活用することが大切だと痛感しました。
濱野 :井口さん、もともと実務翻訳の出身だけあって、かなりツールを活用されているようですね。今後、出版翻訳の仕事を増やすためには、どのように活動していくお考えでしょうか?
遠藤 :出版翻訳に関しては、いまのところエージェント経由のお仕事がすべてなので、今後は自ら企画を持ち込むなどして、仕事の量を増やしていければと考えています。実際、訳したい本を何冊か温めてはいるのですが、なかなか時間が取れなくて行動できずにいます。今後は、アメリアの「出版持込ステーション」を活用したり、自らコネクションを作る努力をしたり、積極的にアピールしていきたいと思います。
濱野 :たとえば、どんな本を訳したいとお考えでしょうか?
遠藤 :実務翻訳やニュース翻訳も好きなせいか、私は背景や歴史を調べるのが好きなんです。ひとりの人間なり、会社なり、国なりが、何かをやり遂げるその過程に強く惹かれるので、物語性のあるノンフィクションをぜひ翻訳したいですね。『ジョン・F・ケネディ ホワイトハウスの決断 ケネディ・テープ 50年後明かされた真実』(世界文化社、2013年)では、私は黒人運動の章を担当したのですが、歴史的背景を調べることが何よりも楽しかったのを覚えています。
濱野 :最後に、今後の夢をお聞かせください。
遠藤 :出版の仕事を増やすことはもちろんですが、なんと言っても、歳を取っても翻訳の仕事を続けることがいちばんの夢です。翻訳は定年がない仕事だと思うので、死ぬまでとは言わないものの、60〜70歳まで仕事を続けていきたいですね。できれば最後は海外移住して……これはまだ夢のまた夢ですが(笑)。
濱野 :海外移住、いいですね〜。どこに住んでもできる仕事――それこそ、翻訳の魅力でもありますよね。今日は貴重なお話、ありがとうございました。出版翻訳だけでは将来が少し不安だと感じる学習者の方も多いと聞きますので、実務と出版の仕事を上手に組み合わせる遠藤さんの仕事スタイルは、理想的といえるかもしれません。これからも、筋トレ、短距離、マラソン……ぜひがんばってください。