岡田:今後はどのようにお仕事を展開したいと思われますか?
武藤
:今後はゲーム翻訳とも付き合いつつ、もっと出版翻訳の道を広げたいとと思っています。小説やノンフィクションなど、文章量の多いものを長いスパンでひとりでコツコツやるような仕事をしたいですね。そのうちの一文、もしくは一生のうちで一文でも、会心の翻訳ができれば本望です。
岡田:武藤さんが目指している、または心がけている翻訳はどのようなものですか?
武藤:誤訳をなくす努力をするのは当然ですが、しっかりした日本語できちんと表現したいと思っています。前述した田口先生のゼミに参加して実感したのが、翻訳は「多数決」ということですね。いかに多くの読み手に受け入れられるか……読み手の市場が何百、何千、何万となったとき、一人でも多くの方に受け入れられ、選ばれる訳をすることが大切だと思います。小説家は10人にひとり共感する読者がいればやっていける、と言いますが、翻訳はそうはいかない。僕としては10人中7人以上に受け入れられる翻訳を目指したいと思っています。
岡田:多くの方に受け入れられる訳……確かに、一見きれいな訳でも、頭に入ってこない場合もありますからね。
武藤:僕の翻訳は「これでどうだ!」みたいなところがいまだにあるような気がします。よく翻訳者は黒子に徹すべきだと言いますよね。訳す時には自我や主張をどんどん消していって、最後に残ったわずかな何かが翻訳者の個性……そんな訳ができればいいなと思います。だから「俺はこんな表現を知っているんだぜ!」という主張が強いのはちょっと……。
岡田:「ドヤ顔翻訳」ですか(笑)。
武藤:アハハ、そうです。「すっきりとしたシンプルな翻訳」というのが僕の中では理想かなと思っています。
岡田:最後に読者のみなさまにメッセージをいただけますでしょうか?
武藤:自分はまさにゲーム世代で、青春時代の多くの時間をゲームに費やしたことでずっと後悔がありました。同じように感じている人は少なからずいると思います。しかしゲーム翻訳という仕事に出会えたことで、やっと過去を肯定できるようになりました。つくづく「人生に無駄なことなんてない」と実感しています。夢中になれることを大切にして、何かにつなげていくことで未来が開けていくのかなと思います。
岡田:これからもゲーム翻訳、そして出版翻訳でのますますのご活躍が楽しみです。今日はお忙しい中、ありがとうございました。