
岡田 :本日のゲストはミステリーやファンタジー小説などフィクションを多く訳されている大友香奈子さんです。訳書には『ジェニーの肖像』、『本の町の殺人』、『魔法使いになる14の方法』 (すべて創元推理文庫)、『ぼくとルークの一週間と一日』 (創元ブックランド)などがあります。ヤングアダルト層が読みやすそうな作品が多いですね。書籍はこれまでに何冊くらい訳されていますか?
大友 :10年間で10冊ほどです。出産などで休んだ時期もありましたが、平均すれば1年に1冊のペースです。
岡田 :大友さんは30代になってから再び大学に通われ、子育てしながらのお仕事と聞きました。卒業後の10年間、子育てしながら10冊の訳書を仕上げるのは容易ではありませんね。
大友 :そうですね。怒濤の子育てでした(笑)。今は2人の子供ももう小学校に入ったので、以前よりは楽になりました。子供が小さい頃は、編集者の夫と時間を調整しながら、幼稚園のお迎えや習い事などに行って、いろいろ慌ただしかったですが……。
岡田 :子育て中はお仕事できる時間も限られますね。
大友 :はい。でもどうやら私は暇なのが苦手なようで、考えてみるといつも働きながら翻訳学校へ通ったり、大学行きながら仕事をしたり、子育てしながら翻訳の仕事をしたりと、2足か3足くらいわらじを履いていないと何かやりたくなってくるんです(笑)。
岡田 :それはすごいバイタリティー! 2足3足のわらじを楽しみながら暮らしていらっしゃる様子がうかがえます。
大友 :逆にもし子どもがいなかったら、仕事のしすぎで体を壊していたかもしれません。以前は13時間でも15時間でもずっと机に向かったまま仕事をすることもありましたから。子どもがいると自然と規則正しい生活になるので、体力的には充実します。
岡田 :たしかに子どもがいると生活が朝型になるし、3度の食事も用意しなければならないし……。
大友 :生活が健康的になりますよね。そして気晴らしという意味でも助かります。時には子どもと遊ぶのが仕事の気晴らしになり、また時には仕事が子育ての気晴らしになる。子どもの相手を長時間してから仕事に向かうと「あー仕事って楽しい!」って(笑)。仕事だけやっていたらそう思わなかったかもしれませんから。
岡田 :プラスに相互作用しているんですね。
大友 :そうですね。子育てを通じて学んだこともたくさんありますし。子育ての経験、お母さんの経験、子どもの気持ちなどがわかるようになったことで広がった世界があるように思います。
岡田 :そうした経験が翻訳にも役立っているのかもしれませんね。
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