持込成功の秘訣
File.007
第1回 どうしても翻訳したい本に出会ってしまった
児童文学の持ち込みを続ける横山和江さん
Kazue Yokoyama
好きな作家や画家は、普段から作家の公式サイトやネット書店などで新作をチェックして情報を仕入れている。今回、横山さんが持ち込みをして翻訳出版に至った作品『サンタの最後のおくりもの』と出会ったのも、イギリスの挿絵画家であり絵本作家であるクェンティン・ブレイクの公式サイトだった。

「ブレイクは、ロアルド・ダールなど有名な児童文学作家の本の挿絵のほか、絵本も数多くてがけています。わたしは、ブレイクの絵が大好きで、昔から憧れの存在でした。原書は、もともとフランスの作家が書いた物語をブレイクが英語に翻訳して絵を描いた作品です」

さっそく原書を取り寄せて読んでみた。すぐに「この本を日本に紹介したい」という強い思いが湧き上がってきた。

でも、ブレイクはあまりにも有名だ。まだ駆け出しの自分が翻訳できるのだろうか。いや、でも試しに翻訳してみるだけなら自由なはず。そうだ、自分なりに訳文を作ってみよう。

ところが、実際に翻訳してみると、ますます愛着を感じるようになり、持ち込みしたい気持ちがより強くなった。

持ち込んでもいいものだろうかと躊躇する気持ちと、どうしても翻訳したいと身体の奥から湧き上がってくる思い。勝ったのは後者だった。

以前からつながりのある出版社があったので、そこに持ち込むことにした。地方在住の横山さんがその出版社を訪れたのは、持ち込みをする今回が初めてのこと。せっかくだから、以前から読みためていた本数冊も一緒に持参した。刊行会議にかけてもらえるという。

持ち込んだのは日差しが強く照りつける暑い季節だった。落ち葉の季節を過ぎ、サンタの季節も過ぎ、年が明けてすぐのこと。これこそ、ちょっと遅れてきた“サンタの贈り物”だったのか、1本の電話がかかってきた。出版社から、この本の刊行を決めたという知らせだった。翻訳も頼みたいという。あまりの嬉しさに、受話器を持つ手が震えていた。

「以前にも2度ほど持ち込みをしたことがありました。1度は数冊持ち込んだものの保留のまま2年が過ぎ、結局出版には至りませんでした。2度目は持ち込んだうちの1冊を気に入っていただいたのですが、まだ正式な出版決定には至っていません」

流行に左右されない児童書の場合、検討も慎重に行われ、決定までのスパンが長くなることも多い。何度か持ち込みを経験した横山さんも、「持ち駒をたくさん用意して、これがだめなら次と気持ちの切り替えをしたほうがいいかも」と言う。
>>次へ
「出版持込の秘訣」に戻る