持込成功の秘訣
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第1回 出版社に送った企画書は2カ月後に不採用
2年がかりの持ち込みで新たな仕事の分野を切り開いた柳沢圭子さん
Keiko Yanagisawa

この度、柳沢さんが翻訳した『自殺で遺された人たち(サバイバー)のサポートガイド:苦しみを分かち合う癒やしの方法』という本が出版された。柳沢さんとこの本の原書との出会いは、出版から3年以上前に遡る。

「当時、私は書籍の下訳・共訳などの仕事をしていましたが、専門分野と呼べるものもなく、依頼を受けた本を翻訳するだけでした。おもしろい本も訳させていただいたんですが、心の中には心理学や精神医学関連の本を手がけてみたいという思いがありました。でも、そのためにはどうすればいいのかわからなかったんです」

希望の分野の訳書を出すにはどうすればいいのか、その方法が見つからずに悶々としていた頃、ある本を読んで強い衝撃を受けた。『自殺って言えなかった。』(サンマーク出版)というタイトルの本だった。

「その本は原書でも翻訳書でもありません。自殺で親を亡くした日本の子どもたちの手記でした。自殺を阻止できなかったことに対する自責の念など、苦しい思いが綴られていました」

こんなふうに苦しんでいる人たちのための本が必要なんだ。でも日本にはその手の本はほとんどない。それならば、と柳沢さんは同じようなテーマの英語で書かれた本を探し始めた。

インターネットで検索してそれらしい本を探し、3〜4冊を取り寄せた。届いた本を片っ端から読んだが、ある本は宗教的すぎたり、ある本は学術的すぎたり……。しかし、そのうちの1冊にピンときた。

「苦しんでいる遺族に語りかけるようなやさしい口調で、わかりやすく書かれていたんです。著者はその分野の専門家で、内容も信頼できそうでした」

日本にも絶対にこの本を必要としている人たちがいるはずだ。翻訳出版に向けての可能性を感じた。かなりの自信を持って出版社への持ち込みをはじめた。それが2004年秋のことだった。

「いま思うと、やり方がまずかったんだと思います。何しろ、自分がここだと思った出版社に"編集部御中"で原書と企画書をいきなり送りつけたんですから」

しかしそのときは、これ以外の方法を思いつかなかった。そして、すぐに返事がもらえるものと信じて疑いもしなかった。

ところが、いくら待っても返事は来ない。しびれを切らして出版社に電話をかけた。

「企画書を送った柳沢ですが、検討していただけましたでしょうか」

数回の催促の末にようやく担当者と話ができ、すぐに検討してくれると約束してくれた。実際、すぐに検討してくれたのだろう。それから間もなく、「うちで出版するのは難しい」という返事をもらった。理由は特に述べられなかった。原書だけが送り返されてきた。企画書を送ってから2カ月以上が経過していた。