持込成功の秘訣
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第1回 大好きなスペイン語圏の原書を持込出版
スペイン語圏の面白い作品を探し続ける宮崎真紀さん
Maki Miyazaki

アディオス、ヘミングウェイ』――かつてヘミングウェイが暮らしたハバナの屋敷で白骨死体が発見される。犯行が行われたのは、どうやらヘミングウェイがまだ生きていた頃のことらしい。果たしてヘミングウェイは殺人犯なのか。

世界的に有名な実在の作家を題材にした異色のミステリ。著者はハバナ生まれで、現在もハバナに住み作品を発表し続けている。この作品は英語やフランス語にも翻訳されているが、元はスペイン語だ。訳者である宮崎さんは、スペイン語で書かれた本作の評判を知って、知り合いの編集者に相談を持ちかけた。

「私がこの作品のことを紹介した編集者さんは、『面白そうな本だからレジュメを書いて。出版社に持ち込んでみる』と言ってくれました。でも、それから半年間、よい返事は聞けませんでした」

“ヘミングウェイ? いまどき売れないんじゃない”
出版社からはそんな反応が返ってきたという。しかし、宮崎さんも編集者も、ストーリーの面白さをわかってくれる出版社が現れることを信じた。

半年後、ランダムハウス講談社が興味を示してくれた。そして2007年9月、『アディオス、ヘミングウェイ』は刊行された。

南米の文化に興味があり、語学が好きだった宮崎さんは、大学は外国語大学のスペイン語学科を選んだ。

「そんなに深く考えて決めたわけではありません。ただ南米文化が好きだった、それだけなんです。おかげで就職するときは大変でした。今から十数年前。女性がスペイン語を生かせる仕事なんて、そうそうありませんでしたから」

昔から“書く”仕事に憧れていた宮崎さんだったが、就職した会社は、出版にも語学にもまったく関係がなかった。

「働いているうちに先が見えてきたような気がして……。キッカケは覚えていませんが、翻訳という仕事があるんだということに気付き、翻訳学校に通い始めました」

翻訳学校で学ぶのは、もちろん英語から日本語への翻訳だ。この時点でも、スペイン語の翻訳者になれるなどということは思いもよらなかった。翻訳者になれるとしたら、それはもちろん英日翻訳だろうと思っていた。

「翻訳学校には5年間通いました。友人ができ、既に仕事をしている人もいたので、下訳を頼まれるようになり、それがきっかけでリーディングや翻訳の仕事をもらえるようになりました」