持込成功の秘訣
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第1回 60代半ばから始めた翻訳の勉強
趣味が高じて、定年退職後の夢を実現させた柏木幹男さん
Mikio Kashiwagi

2008年5月、待望の初の翻訳書が出版された。柏木幹男さん、御年73歳。翻訳は定年退職後に趣味の一環として始めた。最初は趣味だったが、次第に夢が膨らんでいった。「自分の訳書が出したい」。原書を探し、企画書を書き、みずから出版社に持ち込んだ。そして、みごと夢を実現させたのだ。

大学は工学部の出身で、石油会社に就職した。その経歴は、文芸とはかけ離れている。仕事柄、テクニカルの英文はよく目にしていた。資料として読んだり、ときには翻訳したりもした。

そんなこともあり、定年退職後には海外の文献の抄録を作成するアルバイトを始めた。まあ、仕事とはいえ定年後のこと。多趣味な柏木さんにとっては趣味の合間に仕事をするという感じだった。

「趣味ですか? 40歳の頃から始めたマラソン、テニスはゴルフを止めてからだからまだ20年くらいかな。囲碁は学生の時からだから50年ですね。あとは山登りとか、ギターとか」そう言いながらにこやかに笑う。

だが、趣味といっても半端なものじゃあない。例えば、一番の趣味のマラソンは、フルマラソンを完走した回数が75回、そのうち海外遠征24回と、玄人はだしの実績を持っているのだ。

さて、海外文献の抄録をする仕事を3年ほど続けたが、次第に抄録だけでは物足りなくなってきた。

「せっかくなら翻訳までやりたい。そう思うようになってきたのです。それにはまず基礎を勉強しないと、と思い、通信講座を受講することにしました」

翻訳という仕事を目指そうと思ったとき、柏木さんの頭に浮かんだテーマは『環境とエネルギー』だった。長年携わってきた環境やエネルギーに関する翻訳がしたい。そんな思いで、出版翻訳の基礎コースを1年、ノンフィクションのコースを1年、合計2年を勉強に費やした。