持込成功の秘訣
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第1回 児童書はシリーズ物が採用されやすい!?
児童書のシリーズ9冊を持ち込みで翻訳した中井さやかさん
Sayaka Nakai

出版社から良い返事が届いたのは、原書を送ってから2週間ほど経った頃のことだった。中井さんは4冊の原書を持ち込んでいた。

「すべて大英博物館のミュージアムショップで見つけたものです。恐竜の本、お城の話、歴史マンガ絵本、そして今回採用になった探し絵の本の4冊でした」

探し絵ツアー」は全部で10巻ある(日本での発売は9巻の予定)子ども向け大型絵本だ。例えば、第1巻の“世界一周”では、モロッコの市場、タイの水上マーケット、アイスランドの温泉など、見開きごとに世界の名所が中央の大きなイラストに描かれている。周辺には小さなイラストがいくつも並び、そこに描かれている絵と同じものを、中央の大きなイラストから見つけ出そう、という仕掛け絵本だ。“世界一周”を皮切りに、“街じゅうをひとめぐり”“歴史をひとめぐり”“海の中を大冒険”などシリーズが続く。

「今回、企画を採用していただいた文溪堂さんは、以前1冊、図鑑要素もある、ポップアップの恐竜絵本を訳したことがあり、編集者の方と交流がありました。翻訳したい本を見つけてぜひ持ち込みを、と言われていたので、出版社の条件に合う原書を、ずっと探していたのです」

文溪堂は児童書、教育書や、学校用教材を発行する出版社だ。中井さんが編集者より聞いていた採用しやすい本の条件のひとつは“シリーズ物であること”だった。原書自体がシリーズ物であるか、あるいは文溪堂の既にあるシリーズの中にうまく収まるようなジャンルの本であることが望ましい、という。

出版社が販売戦略を考える際、本を単独で売ることは難しい。シリーズであれば、既に書店に並んでいるスペースに追加することができる。また、シリーズ展開があると学校図書館で採用されやすいという事情もあるのだそうだ。

「以前、恐竜の本を訳しているので、そのシリーズとして、今回持ち込んだ4冊の中でも、私としては恐竜本が有力候補だろうと思っていました。歴史マンガ絵本もシリーズですごく面白いので、これにはまだちょっと未練がありますが、絵柄が個性的すぎたようです」

一方、持ち込みを検討した文溪堂編集者の国頭さんは、こう振り返る。

「確かに弊社では恐竜本を何冊か出しており、興味はありました。ただ、その興味はノンフィクションとしてのものです。しかし、今回持ち込んでいただいた恐竜の本は、途中ノンフィクションっぽい記述があるものの、基本はフィクションで、中途半端な感じが拭えなかった。それが不採用の理由です。探し絵の本も、採用するかどうかかなり迷いました。絵本としての出来はよいのですが、弊社では類書がなく、これ1冊でどこまで子ども達にアピールできるか……。決め手がないまま、とりあえず版権確認をしてみると全10巻のシリーズであることがわかり、これならいけるかもしれないとゴーサインを出しました」