判例翻訳プロジェクト解説

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アメリア翻訳プロジェクトトップ > 判例翻訳トップ > アメリカの裁判と判例について

I .アメリカの判例とは
1.アメリカの判例を学ぶ理由・訳す理由
訴訟社会のウソとホント
判例による理論武装
   
2.アメリカの判例の学び方・訳し方
アメリカには「六法全書」がない
判例の引用は判じ物?

II .アメリカの裁判とは
1.アメリカの裁判の特徴
陪審制
−−法廷は劇場?
答弁取引と和解
−−決着は白か黒とは限らない
懲罰的賠償
ー−人民が「悪者」を懲らしめる制度
   
2.アメリカの裁判の手続き


A-1.刑事訴訟手続き
ーー「告発・逮捕」から「公訴の提起」まで


A-2.刑事訴訟手続き
ーー「審理前手続き」から「審理(公判)」まで


B-1.民事訴訟手続き
ーー「プリーディング」まで


B-2.民事訴訟手続き
ーー「審理前手続き」から「審理」まで
C.アメリカの裁判所
   
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陪審制--法廷は劇場?

アメリカの裁判が映画によく登場するのは、アメリカが「訴訟社会」だからというだけでなく、アメリカの法廷という空間がすぐれて「劇場的」だからという理由もあるでしょう。

丁々発止と繰り広げられる検事と弁護士、あるいは双方の代理人による弁論がなによりも観る者の心を熱くする(あくまで映画の場合ですが)わけです。そして法廷を劇場的にしている理由の最たるものは、そうした弁論を厳しくチェックする一般の人々の存在、すなわちご存知の陪審制にあるとおもわれます。

陪審裁判は裁判への国民参加を理念とする合衆国憲法によって保障された制度で、民事事件では、原告が陪審裁判を要求する権利があり、被告はそれを拒否できないことになっています。

しかし、アメリカの裁判といえば必ず陪審制によるわけではありません。

民事裁判、刑事裁判のどちらについても、裁判官による審理(judge trial)と陪審員による審理(jury trial)があり、陪審による審理が必要でない場合には、裁判官の判断だけで略式判決(サマリージャッジメント;summary judgment)を出すことがあります。

もともと、陪審員は素人ですから、 法律の専門的事柄については判断できないはずです。したがって、法律問題(たとえばある特定の行為が特定の犯罪に相当するかどうか)について判断するのは裁判官で、事実問題(たとえば被告がその特定の行為をしたかどうか)について認定するのは陪審ということになります。
また、陪審の下した判決が万能かというと、そうではなく、JMOL(陪審の評決と異なる判決;judgment as a matter of law)という判決もあります。

これは、陪審が出した評決とは反対の判決をすることで、陪審の評決が間違いと言える場合(つまり、合理的な通常の陪審ならそのような評決を下すはずがない、と裁判官が判断した場合)には、陪審の評決が原告に有利なものであった場合は被告に有利な、被告に有利なものであった場合には原告に有利な判決をすることもあるのです。

もちろん、陪審の評決がきちんとした証拠と正しい法的基準に基づいていれば、JMOLは認められません。また、JMOLは陪審の評決が不利である当事者からの申し立てに応答して裁判官が出すことができますが、その当事者は審理に入る前に、サマリージャジメントの申し立てをして却下された場合に限られます。

日本でも大正時代に陪審制度がありましたが、現在、その効力は停止状態(事実上は、廃止のようなものですが)にあり、事実認定も法律問題も裁判官が行う審理だけが行われています。

しかし、とくにえん罪事件や否認事件に熱心に取り組んできた弁護士などが陪審裁判の導入を強く訴えていることから、司法制度改革の一つとして、将来的に陪審制度に似た裁判員制度が導入されようとしています。