判例翻訳プロジェクト解説

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アメリア翻訳プロジェクトトップ > 判例翻訳トップ > アメリカの裁判と判例について

I .アメリカの判例とは
1.アメリカの判例を学ぶ理由・訳す理由
訴訟社会のウソとホント
判例による理論武装
   
2.アメリカの判例の学び方・訳し方
アメリカには「六法全書」がない
判例の引用は判じ物?

II .アメリカの裁判とは
1.アメリカの裁判の特徴
陪審制
−−法廷は劇場?
答弁取引と和解
−−決着は白か黒とは限らない
懲罰的賠償
ー−人民が「悪者」を懲らしめる制度
   
2.アメリカの裁判の手続き


A-1.刑事訴訟手続き
ーー「告発・逮捕」から「公訴の提起」まで


A-2.刑事訴訟手続き
ーー「審理前手続き」から「審理(公判)」まで


B-1.民事訴訟手続き
ーー「プリーディング」まで


B-2.民事訴訟手続き
ーー「審理前手続き」から「審理」まで
C.アメリカの裁判所
   
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A-1.刑事訴訟の手続き--「告発・逮捕」から「公訴の提起」まで

アメリカの刑事訴訟手続きは、多くの日本人にとって映画や小説を楽しむ(あるいは訳す)ために学ぶものですが、アメリカへ旅行や留学に行ったときなど、実際に犯罪に巻き込まれたときのためにも流れを頭に入れておいた方がよいでしょう。

1.告発・逮捕

a.令状逮捕(arrest with warrant)(軽罪等)・告発(charge)→逮捕(arrest)→ブッキング(booking)
b.無令状逮捕(arrest without warrant)(軽罪等)・逮捕→ブッキング→告発
c.無令状逮捕(重罪等)・逮捕→ブッキング→取調べ(interrogation)→告発

原則として、何らかの犯罪に関する告発がなされた場合は、告発者(たとえば犯罪の被害者)が宣誓供述書(affidavit)を裁判所に提出して逮捕状(warrant of arrest)を発布してもらう必要がありますが、警察官が直接犯行を目撃していた場合には直接裁判所に行って逮捕状を取ることもあります。

逮捕状によらず犯人を逮捕するのは、警察官が自己の面前またはその他の場所で犯罪行為が行われたことを信じるに足る相当な理由(probable cause)がある場合です。重罪については、多くの場合、無令状による非現行犯逮捕がなされているようです。

被疑者を逮捕した後は、まず警察署へ連行し、住所氏名の確認(人定)、写真の撮影、指紋採取、身体検査などのブッキング(身柄登録。被疑者の逮捕を記録する手続き)を行った後、留置所に収容します。

この後、重罪の場合は、被疑者に対する取調べ(通常は24時間の制限あり)が行われることがありますが、これは非現行犯逮捕の場合に自白を得ることが主な目的です。

最初に私人から告発がなされた逮捕以外では、ブッキング(および場合によっては取り調べ)が終了した段階で警察官が被疑者を裁判所へ告発するかどうかを決定します。

警察官が被疑者を告発するためには、被疑者を治安判事(agistrate)のところに引致し、被疑者についての情報を記載した告発状(complaint)を裁判所に提出しなければなりません。

2.起訴前手続

a. 冒頭手続き(イニシャル・アピアランス;initial appearance)→予備審問(preliminary hearing)
b. 冒頭手続き→保釈(bail)


逮捕された被疑者が最初に裁判所に出頭する手続を冒頭手続きといいます。ここでは、治安判事が被疑者に対する容疑事実について審理するのですが、その際、逮捕について相当の理由があったかどうかも検討されるわけです。
この冒頭手続きの段階で、多くの被疑者は保釈されます。

被疑者が保釈してもらうには一定の保釈金を裁判所に納める必要がありますが、たいていの被疑者はそれだけの経済力がないので、ボンズマン(bondsman)と呼ばれる民間の保証業者(bondingagents)に保釈金の何%かに相当する手数料を支払い、代って保釈金を納めてもらうことになります。

この保釈金の借りを踏み倒して逃げた被疑者を追いかけて捕まえるのが、映画でおなじみのバウンティ・ハンターです。
保釈が認められなかった被疑者はジェイル(jail)に収容されることになります。

ジェイルは、地方自治体(多くはカウンティ)が運営していて、未決の被疑者や被告人や短期刑の受刑者などを収容する場所です。ジェイルを管理しているのは警察官ではなくシェリフ(sheriff)なので、警察官はシェリフの許可を得て被疑者に話を聞くことになります。

重罪の場合、冒頭手続きが終了してからしかる後(およそ2週間以内)、 治安判事により予備審問が開かれます。現実には、予備審問に至らず、この間に不起訴処分や軽罪事件への変更によって終結される事件が多いようです。

予備審問では、被疑者が犯行を行ったと信じるに足りる相当な理由(probable cause)が存在するかどうか(つまり被告人をトライアルに付するだけの証拠があるかどうか)が判断されます。

3.公訴の提起

a. 検察官・大陪審による正式起訴(indictment)
b. 検察官が直接起訴する略式起訴(information)
c. 大陪審の職権で行う告発(presentment)

多くの州では、予備審問の結果相当な理由があると判断されると被疑者は起訴され、裁判を受けることを義務づけられます。

ここで起訴する場合に検察官が裁判所に提起するのがinformationと呼ばれる略式起訴状ですが、元来、重罪事件については、予備審問の後、さらに大陪審(grand jury) を経て正式起訴することが必要とされていました。

現在でも連邦や東部の一部の州では、重罪事件について大陪審の正式起訴が必要とされています。大陪審(grand jury)はいわば「起訴陪審」で、起訴するに足るだけの証拠があるかどうかを審査する陪審です。

非公開で審理が行われ、判事が存在せず、検事が検事側証人に質問するだけで、被告側に有利な証言や証人などは示されません(弁護人は部屋の中に入れません)。

起訴陪審は、審理陪審の陪審員が12名以下なのに対して、16名から23名の陪審員で構成されている(連邦の場合)ために「大陪審」と呼ばれているわけです。

大陪審には、検察官が捜査を積極的にしないような事件について、独自に捜査を開始する権限があります。

この場合は正式起訴状(bill of indictment)の提出を経ずに告発が行われ、presentmentという告発の書面が裁判所に提出されることになります。