【アメリア】Flavor of the Month 7 辰巳敏彦さん
読み物
Flavor of the Month
<第7回>   全3ページ




坂田:辰巳さんは、現在、アメリアWebサイトの翻訳プロジェクトに参加されているそうですね。

辰巳:はい、吉本先生からこのプロジェクトのお話をうかがって、ちょうど先生に教えていただいていた法律関係の英語だったことに興味を持ちましてね。実務翻訳家を目指すうえで、今までの経験を生かせる法律や経済の分野に絞って勉強を続けていきたいと思っていたので、このお誘いは僕にとって非常にありがたい機会だった。すぐに参加を決意しました。

坂田:ここで翻訳プロジェクトの担当をなさっている、アメリアの吉野さんにも加わっていただきましょう。吉野さん、よろしくお願いします。

吉野:こんにちは。翻訳プロジェクト担当の吉野です。よろしくお願いいたします。判例翻訳プロジェクトではメンバーをアメリア会員から募っているのですが、最初はどんなプロジェクトかわからないこともあってか、応募される方が少なかったんです。そこで、吉本先生から生徒さんに声をかけていただいたという経緯がありました。今では応募者もだいぶ増えているのですが、まだまだ募集していますので、皆さんどんどん参加してください。

坂田:辰巳さん、授業の予習・復習以外に、翻訳プロジェクトとなると、かなりお忙しいのではないですか?

辰巳:ええ、でも、今はもうサラリーマンじゃないから。その頃と比べると、時間はいっぱいあります。

坂田:では、たっぷり翻訳のほうに時間がとれるわけですね。判例を訳すということについてはいかがですか? 難しいのでは?

辰巳:法律関係の専門書を何冊か買いましたので、裁判独特の言い回しについては、辞書を調べれば何とかついていけます。それよりも、大陸法的な発想に縛られないアメリカの裁判官たちの自由で個性的な意見の主張の内容が、意外にも哲学的だったり、文学的だったり、難しい表現に出会って困るときがあります。でも、時にはユーモアめいたものが入っていたり、判例を通して関係している人物の人生が見えてきたり、発想も非常にユニークだし、訳していてとても楽しいんですよ。

坂田:判例にユーモアですか? もっと堅いイメージがあるのですが。

辰巳:文芸じゃないので、直接人生を語っているわけではありませんが、アメリカは基本的にコモンローの伝統が残っていて、日本のように大陸法的な堅苦しさと違って、論理の進め方とか発想などが幅広くて、そのあたりは訳していて面白いところですね。

坂田:プロジェクトでは、他の方との意見交換も活発に行われているようですが。

辰巳:ええ、僕もまだ不慣れで、今のところ、ついていくのが精一杯なのですが、続けていくうちに、きっとお互いにもっと中身のあるやりとりができるようになるのではないかと期待しています。自分が思いもかけなかった角度から指摘を受けて、なるほどと思うことがよくあります。やはり、人のチェックを受けるということはためになります。

坂田:でも、間違いを指摘されたり、厳しい言葉をもらうのがイヤで、こうしたプロジェクトに参加することに二の足を踏んでいる方もいると思うのですが、そのあたりはいかがですか?

辰巳:厳しい言葉のやりとりなんか、まだ一度もありませんよ。指摘を受けることは勉強になりますし、僕は指摘をもらってすごく参考になっています。何より独りよがりになることがない。皆で力を合わせて、少しでもましな訳例の叩き台を作るということですから、お互いに遠慮ばかりしていては何も前進がないでしょう。大人なんだから、参加者の方は皆さんわかっておられると思います。段々慣れていくうちに、もっとフランクにやりとりできるように必ずなれると思っています。

吉野:よい訳文をつくるという共通の目的に向かって、皆さん前向きに意見交換されていますよね。判例の訳文を読んでいると、ノンフィクションのドラマが描かれているようで、とても興味深いです。ちなみに辰巳さんは、判例翻訳プロジェクトでは別のお名前で参加されているんですよね。

辰巳:ええ、そうなんです(笑)。今、2例目を訳し終えて、3例目のスタートを心待ちにしています。僕は、このプロジェクトを、ずっと続けていきたいと思っています。今まで実務翻訳ばかりやってきたので、本当のことを言うと、文芸翻訳にも魅力を感じているんです。でもね、残された時間は限りあるものですから、第一もう間に合いませんし、分野を絞って深く追求していかないとね。だから、判例翻訳プロジェクトは、僕にとって大いに勉強になる場なんです。

温和な表情に、底知れぬパワーを感じさせる辰巳さんとの語らいのひとときは、とても充実した楽しい時間でした。生涯現役、常に目標に向かって前進する姿に、私もこうありたいと心の底から思いました。

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