実務翻訳と出版翻訳の両立。在宅翻訳者の金成さん Flavor
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<第105回>  全5ページ
仕事受注の秘訣は「丁寧さ」人とのつながりを大切にしたい

濱野 :翻訳者、ミュージカル俳優、文学者……大学生のころの3つの夢が、数十年の時を経て実現しつつある。

金成 :ええ、自分でも驚きです。途中、10年以上忘れていたのに(笑)。

濱野 :学生時代の夢をあとになって思い出したとしても、実現できる人はとても少ないと思います。さらに、それを3つも叶えたというのがすごいです。それに、バレエは健康維持にもつながるでしょうし、俳句は語彙や表現の勉強にもなりますよね。そういう点では、翻訳業にとってもメリットが多いのでは?

金成 :初めから意図したわけではありませんが、結局すべてが運命の糸のようにつながってくるものですね。とくに、俳句は翻訳にとても役立ちます。俳句というものは、17文字の限られた文字数でより多くのことを表現しなくてはいけない。推敲するときには、同じ意味の別の単語を探したり、言葉の順序を入れ替えたりしながら、読み手に伝わりやすい最も効果的な方法を探る。そういう意味では、翻訳と同じなんです。英語と日本語では語順もちがいますし、ただ字面を訳しただけではうまく伝わらない場合が多い。たとえば、関係代名詞を訳し上げるのか、訳し下げるのか。形容詞が重なったときにどの語順にするのか。読者によりわかりやすく中身を伝えるために、単語を変えたり、順序を入れ替えたりする。俳句の推敲ととても似ていると思います。

濱野 :なるほど。「情報を読者に簡潔にわかりやすく伝える」という点では、俳句と翻訳はとても似ているということですね。フリーになって以来、順調にお仕事を受注されている金成さんですが、仕事をするうえで大切にしていることは何かありますか?

金成 :そうですね……やはり「丁寧な仕事」に尽きると思います。そのためにも、推敲を怠らないことが大切だと考えています。推敲するときには、文章を眼で追うのはもちろんのこと、必ず音読して確認します。さらに、調査内容、語彙、用語、言いまわし、表現……すべてを徹底的に確かめる。丁寧に取り組むことこそが翻訳の質の向上になるし、最大の営業にもなりますよね。「この翻訳者なら次の仕事も任せられる」と相手に思わせる仕事をすれば、必然的に次の受注につながるわけですから。あとは言うまでもなく、納期を守ること。そのために、余裕を持ってスケジュールを組むことが大事だと思います。

濱野 :丁寧な仕事こそが、次の仕事につながる最大の営業。とくに学習中の方には、とても有益なメッセージだと思います。最後に、今後の抱負などをお聞かせいただけますか?

金成 :翻訳をしながら、大好きなバレエと俳句にも打ち込める―これは私にとって、とても幸せな状況です。私がこのようにフリー翻訳者として働くことができるのも、これまで多くの人の手助けがあったおかげです。翻訳の世界に入ってたくさんの人と出会い、さまざまなことを教わりました。ときに注意もしてくれたし、褒めてもくれた。そういう人とのつながりを、これからも大切にしていきたいですね。そのつながりのなかで、新しい夢や今後の課題が出てくるのだと思います。

濱野 :やはり、基本は「人とのつながり」ということですね。今日は貴重なお話、ありがとうございました。翻訳だけでなく、バレエと俳句の世界でのご活躍を心よりお祈りしています!

■淡々とした語り口調ながら、夢への情熱を熱く伝えてくださった金成さん。お話を聞きながら、「ぼくも何かを始めたい」と強く感じました。「学生時代の夢ってなんだったっけ」と。何歳になっても、夢を追いかけることはできる。そう、金成さんが教えてくださった気がします。ありがとうございました!

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