出版翻訳でご活躍、訳書50冊以上の辻早苗さん Flavor
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<第111回>  全5ページ
ロマンスならではの訳し方とは? 言葉や表現の引き出しを増やすための工夫

濱野 :ロマンス小説は、ヒストリカル、コンテンポラリー、サスペンスなどさまざまなジャンルに分かれていますが、辻さんはとくにどのジャンルを手がけることが多いのでしょうか?

:初めの頃はコンテンポラリーが主だったのですが、最近はヒストリカルが多いですね。ヒストリカル作品は時代や国、背景が多種多様で、調べ物が多くて大変なのですが、実際に担当してみるとどんどん楽しくなって……。仕事をするうちに、訳者としても、読者としても、あっという間にヒストリカルも好きになっていきました。

濱野 :「ロマンスならではの訳し方がある」という話をよく耳にするのですが、辻さんはどうお考えですか?

:独特の訳し方というよりは、ロマンスの場合は「うっとりするような雰囲気」を作ることが大切だと思っています。たとえば、ラブシーンではどぎつい描写を避けたり、文章があまり固くならないように漢語を減らして大和言葉を使うよう意識したり……。そのようなことに気を配ってはいますが、基本的にはほかのジャンルと同じで、原文に忠実に訳す姿勢が重要だと思います。

濱野 :なるほど。では、翻訳力や語彙力向上のために何か実践されていることはありますか?

:やはり、本をたくさん読むことでしょうか。プライベートで本を読んでいるときにも、自分の引き出しにない言い回しや語彙を見つけたときには、書き留めてファイルにまとめたり、訳語を辞書に登録したりしています。自分の言葉の引き出しは限られているので、外から借りてきて増やしていくしかないんです。背景知識を学んだり強化したりするために、カルチャーセンターの講座を受講することもあります。

濱野 :「辞書に登録」というのは、具体的にどのようにされているのでしょうか?

:PDICというシェアウェアを使っています。英和辞書などの検索ソフトなのですが、ユーザー辞書という機能があり、自分で新たな訳語を登録できる仕組みになっているんです。私が翻訳の仕事をはじめたころから存在するありがたいソフトで、使っている翻訳者は少なくないんじゃないでしょうか。

濱野 :そうなんですね、知りませんでした。さきほどのパソコン2台の活用術のお話もそうですが、翻訳するためのPC環境をしっかり整えていらっしゃるんですね。

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