日英翻訳でご活躍のフリーランス翻訳家、松井修さん Flavor
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Flavor of the Month
<第114回>  全5ページ
サラリーマン翻訳とプロの翻訳の差を実感。プロ意識の高さは実力とプライドから。

岡田 :松井さんは日英翻訳をメインにお仕事をしていらっしゃいますね。日英を選んだのはなぜですか?

松井 :それはすごく単純で、自分の英日のスキルに商品価値が全くなかったから。訳していて面白くないし、スピードもないし、大した出来でもない。使い物にならなかった―ただそれだけ(笑)。日英は独学というか趣味というか、マニアックに勉強しながら賞もいくつかいただきました。そちらの方が商品価値があるんだろうなと思ったからです。

岡田 :日英のスキルをそこまで向上できたのは、やはり長年の実務経験と日々の勉強の成果ですか?

松井 :長年積み上げてきたというのはあるかもしれませんね。勤めていた会社は、社の方針として業務上の英語に関しては、翻訳の外注は許可されずに全部自分で一から書かなければならなかった。英語ができなければ出世どころか仕事もできない。だからみんな必死になってやっているうちに、できるようになっていきました。

岡田 :それはすごい、実践する努力が血となり肉となっていったんですね。

松井 :そうは言っても後からプロになってその視点で見ると、サラリーマンの訳はプロのレベルとはまるで違うということがわかりました。どんなにできると言われていた社内の人でも、プロとはこんなに違うんだ、と。

岡田 :その違いはどんなことなんでしょうか?

松井 :こなしてきた量の違いによる質の差です。プロは多分野に渡り、ものすごい量を書いてきていますから、圧倒的に質が違いますよ。たとえ初めての分野でも英文1万ワード程度(400字詰めで50頁強の日本語を翻訳した量)を1週間で仕上げるレベルですからね。あれだけ書けば、サラリーマンには負けません(笑)。

岡田 :やはりプロの世界は違いますね。

松井 :それに、プロの在宅翻訳者はすべて「成果」が問われる世界だから、緊張感も違います。成果物がダメだと次から仕事がこない。生活がかかってますから必死でやる。調べる執念深さも違いますね。オンサイトなら周囲に相談する相手もいますけど、在宅ではそうもいかない。しつこく執念深く自分で調べるしかないんです。でも結局はそれが質の違いにつながっていくように思います。プライドもあるのかな。

岡田 :プロとしてのプライド、ですね。

松井 :そう。どこか違和感を感じる訳だとムズムズして気持ち悪くなり、意地でも向き合うのがプロとしてのプライドなのかな。冠詞や単数、複数など、昔はわからなかった勘所のようなものが徐々にわかってきた分、気づくことで悩みが増えたというのもここ数年ありますね。最初の頃は調べても何だかピンとこないし、理解できずに結構間違えていました。今でも間違えますけど、それなりに間違いが理解できるような気がします。それなりに、ですけどね(笑)。

岡田 :松井さんのプロ意識の高さはさすがですね。プロとしてどうあるべきか考えさせられます。

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