ニュース翻訳など実務翻訳と出版翻訳を両立する鈴木和博さん Flavor
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Flavor of the Month
<第120回>  全4ページ
3つの講座で翻訳修行

加賀山 :鈴木さんが翻訳を始められたきっかけは?

鈴木 :フルタイムのシステムエンジニア(SE)として会社で10年間、その後フリーで5年間働いていたのですが、あまりにも拘束時間の多い忙しさに、何か別のことはできないだろうかと考えたのが始まりです。

加賀山 :そこで本の仕事が頭に浮かんだ?

鈴木 :はい。もともと本を読むのが好きで、日本語の本はすぐ読めてしまうので、英語の原書を読みはじめていました。

加賀山 :いつごろからですか?

鈴木 :大学生から社会人になるころですね。最初に読んだ原書は『ハリー・ポッターと賢者の石』で、ちょうど話題になりはじめた時期でした。そのときにはPrivet Driveが住所であることもわからず、ゆっくりと辞書を引きながらでしたが、だんだん速く読めるようになりました。
 もうひとつのきっかけは、社内で個人の目標を立てることになって、TOEICを受験したことですね。それも何度か受けるうちに点数がよくなってきて、そういうかたちで英語にはかかわっていました。

加賀山 :システムエンジニアの仕事をしながら翻訳の下準備をしていた感じですね。翻訳の学習はどのように始めたのですか?

鈴木 :最初からフリーランスという形で仕事をしたいと思っていましたが、翻訳の学習経験はほとんどなかったので、じっくりと学べるフェロー・アカデミーのカレッジコースを1年受講しました。

加賀山 :最初から実務翻訳家をめざしていたのですか?

鈴木 :そうですね。システムエンジニアの経験がありましたし、翻訳の仕事を始める取っかかりにはなると思ったので、カレッジにかよっている途中からアメリアで実務関連の仕事を探していました。

加賀山 :トライアルを受けたり?

鈴木 :はい。トライアルに合格して、卒業直前には2社から最初の実務の仕事をいただけるようになっていました。

加賀山 :その仕事をしながら翻訳の学習も続けたのですね?

鈴木 :そうです。将来的には出版翻訳に携わりたいと思っていましたので、その年の4月から加賀山先生の「フィクション」の講座で3年間学びました。同時に高橋聡先生の「IT・テクニカル」の上級クラスも半年受講しました。

加賀山 :学習中に印象に残ったことはありますか?

鈴木 :フィクションのクラスでは、わかりにくいところでも、とにかく原文の解釈をしっかり確立してから訳文に取りかからないと日本語がぶれてしまうという指摘が腑に落ちました。これは実務翻訳にも当てはまることです。テクニカルのクラスでは、高橋先生に仕事先を紹介していただきました。その会社とのおつき合いはいまも続いています。
 その後、ナショナルジオグラフィック社の翻訳者養成コースが隔週でありまして、それも1年半ほど受講していました。

加賀山 :集中していろいろ学んでいたのですね。そのナショナルジオグラフィックでいまやっておられるのは、どういう仕事ですか?

鈴木 :いまはおもに自然科学系のニュース記事を週に2回訳しています。火星探査などの宇宙関連や、生物学や、考古学上の発見など、内容は多岐にわたります。興味深いエジプトの遺跡発掘の記事も訳しました。

加賀山 :分野が広いと、訳すのがむずかしくありませんか?

鈴木 :むずかしいこともありますが、基本的にはプロのライターがアマチュアの読者に向けて書く内容なので、とてもうまく書かれています。むしろ実務の、エンジニアが同じエンジニア向けに書く文書のほうがわかりにくいと感じることもあります。

加賀山 :お互い理解できればいいという前提ですからね。仕事の依頼はどういう感じで来るのですか?

鈴木 :だいたいその日の朝に原稿が届いて、訳稿を夕方までに送信します。そのあと編集の手が入って、翌々日ぐらいにサイトに掲載されます。分量はそのときどきでちがいます。

加賀山 : 訳す際に心がけていることはありますか?

鈴木 :仕様書などの翻訳とちがって、ウェブのニュース記事という「読み物」ですから、「読ませる」工夫が必要だと感じます。サイトに載った編集後の記事にはそういう工夫が加えられていて、いつも感心しています。

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