【アメリア】Flavor of the Month 29 寺田 涼子さん
読み物
Flavor of the Month
<第29回>  全4ページ


翻訳者だから感じた文化の壁 英語圏で暮らしてみたい!


坂田:では、なぜカナダに移住することになったのですか?

寺田:仕事を始めて3年ほど経った頃、仕事が減った時期があったんです。翻訳会社に聞いてみると、仕事の全体量が減っているということでした。

坂田:ちょうど、バブルが終わった頃じゃないでしょうか。

寺田:かもしれませんね。担当者の方には、決して私の仕事の質が悪いわけではないと言っていただいたので、その点はホッとしましたが、立ち止まって考える良い機会になりました。その頃、私は国際結婚をしたばかりだったんです。夫は日本で英語を教えていたのですが、ふたりの選択肢の1つに夫の生まれ故郷であるカナダに住むということがあったんです。私は、翻訳業を続けたいという気持ちはあったのですが、仕事をすればするほど自分の未熟さが身にしみていて……。

坂田:未熟さというと?

寺田:翻訳の仕事で辞書をひくのは当たり前ですよね。しかも、駆け出しなので辞書をひく回数が多いのは仕方ない。でも、英語圏の文化がわかっていない、だから辞書をひかざるを得ない、辞書だけではわからないので調べ物にすごく時間が掛かる、ということが随分あると感じるようになってきていたのです。

坂田:具体的に言うと?

寺田:翻訳をしている時に、"Saturday Night Special"という言葉が出てきたんですよ。これを見て私は、まずいろいろと想像しました。「土曜日の夜の特別なディナーかな? カップルのために特別なカクテルが付いているとか……」。次に辞書を引いてみたのですが、"special"を引いても"saturday"を引いても出てこない。いろいろ調べた結果わかったのですが、これはある拳銃のニックネームだったんです。サイズが小さく、値段が手頃なので、犯罪のプロじゃなくても比較的簡単に手に入る拳銃。土曜日にみんなが飲んで浮かれている隙を狙って、この性能のよくない拳銃で強盗を働く。だから"Saturday Night Special"と呼ばれている。これは、アメリカでは一般的に知られていることだそうです。でも私は知らなかった。仕事の経験が増えていくにつれ、こういうこともどんどん増えていって……。私は留学の経験もなかったので、カナダに住んで、もっと英語圏の文化を知りたいと思うようになっていったんです。

坂田:それで、カナダに移住することを決めたのですね。

寺田:そうです。カナダはアメリカに比べて治安もいいので安心ですし。それで行き先をバンクーバーに決めました。それが1994年のことです。

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