【アメリア】Flavor of the Month 29 寺田 涼子さん
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Flavor of the Month
<第29回>  全4ページ


専門分野ではない実務翻訳にも挑戦


坂田:カナダに行ってから、翻訳の仕事はどうなりましたか?

寺田:翻訳はどこにいてもできる仕事です。でも、当時はまだインターネットがありませんでしたので、カナダで日本の会社から映像の仕事を受けることは無理でした。だから最初のうちはあきらめていました。1年ほど経って、今度は現地で翻訳の仕事を探してみることにしました。私の希望としては映像でなくても、とにかくエンターテインメント系の翻訳がやりたかったのですが、そういう仕事はそう簡単に見つかりません。結局、実務翻訳の仕事を始めました。バンクーバーのあるブリティッシュ・コロンビア州は森林が多いので、材木、建材関係の会社が多いんです。ログハウス用の木材やドアといった商品を日本に売り込みたい会社がたくさんあるので、そうした会社のパンフレットなどの翻訳の仕事が見つかったのです。

坂田:まったく違う分野に挑戦ですね。

寺田:はい。まさに180度違う分野でしたね。それで、しばらくログハウスなどの関係の実務翻訳をしていたのですが、たまたま私が日本に里帰りをするときに、あるクライアント企業の方から「ちょうどその時期に日本で材木関係のトレードショーがあるから、行って見てきてレポートしてくれないか」と頼まれ、引き受けたんです。トレードショーの名前と日程がわかっていて、東京のどこかでやっているということだったのですが、日本に帰って会場を調べてみると、なかなか見つからなくて……。

坂田:大変ですね! それでどうしましたか?

寺田:書店でログハウス雑誌を探して、その編集部に電話をかけてみたんです。その編集部でも最初はわからなかったのですが、問い合わせ先を教えていただいて、ようやく見つけることができました。その電話をかけたときに、「どうしてそんなトレードショーを探しているのですか?」と逆に編集部の方に質問されて、事情を話すと今度は「一度、編集部に遊びに来ませんか」と。つまり、その編集部では、ログハウスの本場であるカナダに取材に出かけることがある。カナダ在住でそうした関係にも詳しいのであれば、今後、取材をお願いしてもいいか、というお話しだったんです。

坂田:思いがけない展開ですね。

寺田:そうなんです。でも、私もフリーランスですし、それにそもそも書くことが大好きなので、「機会があればお願いします」と喜んでお引き受けしてカナダに帰ってきました。

坂田:その後、その雑誌のライターのお仕事をなさったのですか?

寺田:はい。あまり期待はしていなかったのですが、ある日突然ファックスが届き、カナダで開かれるログハウスのトレードショーのレポートを依頼されました。それを引き受けたまではよかったのですが、何しろ取材は初めてなので、まったく自信がなくて……。翻訳は原文がありますが、取材となると何をどう始めていいのかもわからず、おなかは痛くなるし、その前日は眠れませんでした。

坂田:結果はいかがでしたか?

寺田:なんとか無事ライターデビューを果たして、その後も何度かその出版社からお仕事をいただきました。でも、ライターの仕事は定期的に来るわけではなかったので、以前からやっていた実務翻訳の仕事もずっと続けているという状態でした。

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