【アメリア】Flavor of the Month 55 佐藤 志緒さん
読み物
Flavor of the Month
<第55回>  全5ページ


孤独な暗黒時代には短期講座でカツを入れて

坂田:出版翻訳の勉強を実際に始めてみていかがでしたか?

佐藤:勉強はすごく楽しいのですが思うように点数が取れなくて、どうしてこの訳がこの点数しか取れないんだろう、というようなことがずーっと続いていました。いま思うと、非常に思い込みの激しい訳をしていて、おそらくそのせいで良い点がつかなかったのですが、その時はそれがわからなくて……。勉強は楽しいけれど、結果が出ない、成果に繋がらないという、ちょっと苦しい時期がありました。

坂田:添削指導の赤字を読んでも納得できない、ということ?

佐藤:あまりの赤字の多さに、「そんなはずはない!」と最初の頃はそう思いました。でもやっぱり、添削する方は客観的な目で見て赤字を入れているのがわかっているので、それを拒否していたら、自分はこのまま何も進歩がないんじゃないかなと、徐々にそう思うようになって、最終的には気持ちを切り替えて、赤字の指摘を何とか理解しようと努力できるようになりました。

坂田:そういう思いになるまでには、かなり時間がかかりましたか?

佐藤:はい、時間がかかったと思います。こうしてお話しすると、自分がとても優等生みたいで恥ずかしいですが、実際にはもっとどろどろした気持ちで、「そんなはずはない!」と「受け入れなければ」を行きつ戻りつしていたような気がします。

坂田:長い葛藤の時期があったのですね。

佐藤:添削の方に質問できるシステムだったので、かなり質問をしました。すごく嫌がられていたんじゃないかと思います(笑)。相当、食い下がりましたから。

坂田:質問をして、それに答えが届くと、その内容にさらに質問をして、という感じでしょうか?

佐藤:その通りです。質問には回数制限があったのですが、それをめいっぱい使ってやりました。納得できるまで何度も、何度も!

坂田:その甲斐あって、徐々に成績は上がっていった?

佐藤:そうでもなかったです。詩、ロマンス小説、ノンフィクション等々、さまざまなジャンルの課題が出るのですが、分野によって点数はバラバラでした。

坂田:得意な分野、苦手な分野が分かってきたということですね。

佐藤:ええ、得意不得意の分野がはっきりしました。ノンフィクションは苦手で、フィクション、なかでも小説がどちらかというと得意でした。点数もよかったですし。

坂田:3年間の講座を終えてからはどうしましたか?

佐藤:その後も、いろいろな通信講座を受け続けました。フェローの短期講座オープンセサミにも参加しました。独学を続けながら、いろんなコンテストへの応募も始めました。

坂田:最初の予定では、講座を終えれば「あわよくばデビュー!」でしたよね。その目論見がうまくいかなかったとき、勉強をやめようとは思いませんでしたか?

佐藤:それは思わなかったですね。英語を生かせる仕事は他にもありますよね。日本語教師とか、子ども英会話教室の講師とか……。そういうのを目指そうかなと考えたこともあります。でも、格好悪いんですけれども、「時間もお金もかけて翻訳の勉強を頑張ってきたのに、それを諦めるのもなぁ」と思って、本当に手探りの状態で、独学を続けていました。私の中ではあの頃を“暗黒時代”と位置づけているんです。空を見てため息をついていました(笑)。

坂田:ハハハ。でも、笑っちゃいけないですね。

佐藤:いまとなっては笑い話ですよね。笑い話にできるから、すごく幸せだなと思います。

坂田:“暗黒時代”の真っ只中にいる頃は、いろいろと悩みも多かったのでは? 通学講座に通っていると、先生やクラスメートに相談することもできると思うのですが、独学となると孤独な状態ですよね。どのようにしていましたか?

佐藤:性格的に独学は苦にならないほうで、何時間も机に向かっていても平気でした。自分で洋書とその翻訳書を用意して、自分の訳と見比べるような方法で勉強していました。ミステリーが好きだったので、田口俊樹先生の訳したローレンス・ブロックなどをよく利用させていただきました。私なんかが言うのはおこがましいのですが、先生の訳はすごく読みやすくて、「ああ、こういう訳があるのか」と、とても勉強になりました。それでも、どうしても煮詰まってしまった時は、フェローのオープンセサミなど、単発の講座に出かけていました。私と同じように翻訳家を目指してがむしゃらに頑張っている人がいるんだ、ということが確認できるだけで、「私も頑張らなきゃ。空を見上げてため息ついている場合じゃない!」と思えるんです。自分にカツを入れる意味で参加していました。
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