【アメリア】Flavor of the Month 63 福市恵子さん
読み物
Flavor of the Month
<第63回>  全5ページ


新機種登場でますます活況なゲーム業界

坂田:ゲーム翻訳は何人かのチームで行うことが多いと聞いたことがありますが。

福市:そうです。ゲームはストーリーがいくつも用意されていて、プレーヤーが選ぶことによって何通りにも展開するので、テキストの量が膨大なんですね。ソフトウエアの発売日はあらかじめ決まっていることがほとんどなので、締め切りは動かせない。そうなると複数の翻訳者で分担せざるをえない、ということになります。
 となると、誰がどの部分を訳すか、コーディネーターさんが振り分けるわけですが、その振り分け方は翻訳会社によって、担当者によって、あるいはソフトの種類によってさまざまです。つい最近受けた仕事では、キャラクター毎に振り分けられました。翻訳者ごとに担当のキャラクターを割り振られて、そのキャラクターがメインで活躍する場面を訳すというかたちです。おそらく、コーディネーターの方は翻訳者の特性を考えて割り振っていると思うのですが、私はヤンキー風の女の子だったんですよ。どうしてこのキャラクターなんだろう、とちょっと考えましたね(笑)。単純に前から順番に区切っていくという場合もあるし、分け方はいろいろです。

坂田:最近のゲームの傾向はどうでしょう?

福市:アメリカで受けているゲームと日本で受けているゲームはやはりちょっと違うんですよ。日本では最近は“ほのぼの系”が人気で、畑を耕して収穫する、といったゲームがはやっています。あとは片手間にできる携帯ゲームとか。こういうものがはやるというのは、日本人はみんなちょっとくたびれているのでしょうか。一方、アメリカでは、ゲームをするのは20〜30代の主に男性。女性は少ないようで、従ってFPS(First Person shooter)と呼ばれるシューティング系ゲームやスポーツ系などが人気のようです。

坂田:福市さんが翻訳するのは、どのような種類のゲームが多いですか?

福市:まず、ゲームの系統でいうとRPGが多いです。スポーツ系もやったことがあります。それから、2004年にはじめた当初は圧倒的にオンラインゲームが多かったです。最近は、マイクロソフトのテレビゲーム機Xboxが360という新機種を発表したので、このゲーム機用のソフトが増えてきています。少し前まではゲームというとゲーム機もソフトも日本のメーカーのものがメインで、それを英語にローカライズするというのが多かったのですが、Xboxの次世代機が出てからは、ソフトも海外から入ってくるものが増えているようです。

坂田:フリーランスとなると、スケジュール管理も難しいのではないでしょうが?

福市:そうですね。その辺はかなり恵まれていて、ここ1年くらいはずーっと途切れずに仕事が続いています。先にも言ったとおり、今はゲーム翻訳の会社と、ビジネス翻訳全般の会社の2社からの仕事を主に受けています。ゲーム翻訳は長期の仕事が多く、それが終わったら数日でできるWeb翻訳など短いものが入り、そのうちに次のゲーム翻訳の仕事が決まって、短納期のものが終わると同時にそちらをはじめる、といったような感じです。ときには、スケジュールが合わずにお断りすることもありますが、そんなときは「いついつからなら大丈夫です」と伝えておくと、そのタイミングでまた声を掛けていただいたりします。

坂田:ゲーム翻訳は分量が多く、長期にわたるものが多いのですね。

福市:ゲームによってまちまちで、1週間ほどの短いものから、長いものだと2カ月ほどになることもあります。ただ、長期の場合も1週間ごとに分納になることが多いですね。ですから「週に○ワードのペースで翻訳してください」という依頼のされかたが多いです。翻訳期間はすべて開発のスケジュールに左右されるので、「今日すぐに始められますか」と打診されることも。すぐに始めて2カ月間同じペースで毎週納品し続けるというのは、正直いって結構大変です。どの分野の翻訳でも同じでしょうが、納期はもちろん絶対に厳守です。体調管理もしっかりしないと納期を守り続けられません。

坂田:ゲーム翻訳以外では、どのような内容の翻訳のお仕事が多いのですか?

福市:企業のWebサイトに載せる商品説明の文章などが多いですね。ときには動画の字幕だったりもします。会員登録制のエクササイズサイトでは配信するヨガポーズの動画のナレーションとか。読者に対してアピールするマーケティング系の文章が多いですね。

坂田:動画の字幕翻訳は経験があったのですか?

福市:いいえ、ありませんでした。セミナーに参加してルールを学び、それからお仕事を受けるようになりました。商品紹介の動画は、ゲーム翻訳と多少似ているところがあると思うんです。詳細はテキストで説明して、動画のほうはCMに出ている有名人が使用感を伝えるなどイメージ的なものなので、ぱっと見て字幕を流し読みし、全体のイメージが伝わればいい、という感じ。だから、そのような読み方でも視聴者の意識に残るよう気をつけて言葉を選んで訳しています。全体が短いですし、視聴者は何度も見直すことが可能ですので、字数制限はそれほど厳しくありません。

坂田:今の仕事にやりがいを感じていらっしゃるようですね。今後の夢は何かありますか?

福市:ゲーム翻訳は自分でも大好きなので、これからもずっと続けていきたいと思います。不況で暗い話も多いなか、ゲーム関係は次世代機が出てきたりと明るい話題もあり、まだまだ伸びていくんじゃないかという期待も持てます。
 それから、翻訳からは少し離れますが、自分でゼロから何かをつくり出す力もつけたいなと思っています。急には無理なので少しずつ勉強を積んで、10年あるいは20年後でもよいのですが、自分で文章を書いて物語をつくれるようになるのが夢です。ゲーム翻訳でセリフを書く訓練を日々行っているので、シナリオの書き方を学んでみたいなと思っています。

坂田:そうですか。ゲーム翻訳がきっかけで、さまざまな方向に持てる力を伸ばしていけるというのは素晴らしいですね。頑張ってください! 今日はどうもありがとうございました。


 
   

ゲームに出てくる文章、何気なくさらりと読んで先に進んでいましたが、さらりと読ませるためのさまざまな工夫をゲームの翻訳者はしているのですね。ちなみに、部屋にこもって翻訳をする時間が長い福市さんのストレス解消法は、中学の頃に始めて、数年前に再開したエレキギターの演奏だそうです。ときどきライブにも出るほどの腕前だとか。発散できそうですね! 

 
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