【アメリア】Flavor of the Month 91 藤田 弘美さん
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Flavor of the Month
<第91回>  全5ページ


“ビビビ”で始まった翻訳への長い道のり

濱野 :翻訳にご興味を持たれたのは20年ほど前とのことですが、メディカルの知識や英語力はもともとお持ちだったのですか?

藤田 :結婚を機に退職したのですが、独身時代は大阪の国立病院の循環器科で看護師、それから神戸の教育施設に養護教諭として勤務しました。ですので、メディカルの知識はそれなりにあったと思います。ただ、英語のほうは一般教養で学んだ程度ですね。

濱野 :なるほど。看護師としての資格と経験をお持ちというのは有利ですね。結婚後、子育てに専念されていた藤田さんが、翻訳に興味を持つようになったきっかけはなんだったのでしょうか? 

藤田 :主人の転勤の都合で鳥取、岡山、東京、広島と各地を転々とする生活が続いたのですが、翻訳に目覚めたのは東京にいたときのことで、幼稚園児だった次女の友達のお母さんとの出会いがきっかけです。とても溌剌としているお母さんで、話を聞いたら、翻訳の勉強中だと言うんですよ。それで、「エッー、それって英語話せなくてもいいよね? 医学もあるの??」と訊くと、「あるよ!!」と彼女。その瞬間、“ビビビ”と来ました。その感覚はいまでも忘れられません。翌日、書店で高校3年分の英語の問題集を購入し、さっそく勉強を開始しました。

学習を始めたころの資料はいまでも手元に

濱野 :おぉ〜、いきなり学習スタートとは、すごい行動力……。では、まずは英語の勉強を一通りして、それからメディカル翻訳の学習をスタートですか?

藤田 :はい。当時、3歳、5歳、8歳の3人の子育て中でしたが、結婚後は専業主婦でしたので、勉強すること自体が楽しくて楽しくて……。英語の勉強をしたあとは、フェロー・アカデミーのマスターコース「メディカル」を2回受講しました。講座の内容はバイオ関連だったので、サイエンス誌や「日経メディカル」を読んで知識を得ていました。講座を終えると、運よく先生から仕事の依頼をいただきました。電子顕微鏡による病理所見や医学生向けのテキストの一部の下訳でした。

濱野 :3人の子育てをしながら、学習スタート。さらに、すぐに仕事にまで繋げるとは。でもたしか、お子さんは4人でしたよね?

藤田 :そうなんです。そこから、長い長いブランクが始まるんですよ(笑)。講座を受講後、下訳や翻訳チェックのお仕事をさせていただいているときに、第4子の妊娠が発覚しました。正直、悩みました。ただ、悩み悩んだ末の最終的な結論はあっけなくて、「案ずるより産むが易し」ということでした。このときも、翻訳学習のきっかけを作ってくれた例の友人の存在は大きかったですね。悩んでいる私に、「これ食べながら、ご主人ともう一晩、話し合ってみて」と差し出してくれた和菓子。脳は騙されやすいということですが、私の脳はとくにその傾向があるようです(笑)。妊娠中は学習を中心に続け、そうこうしているうちに臨月を迎えました。

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