【アメリア】みんなで作るインタビュー3・伏見威蕃さんインタビュー編2
  みんなで作るインタビュー


 [インタビュー編 2]
読み物  

第3回 伏見威蕃さん
<第3回> 紹介編インタビュー編 1|インタビュー編 2  全3ページ

 
これまで読んだなかで、とりわけこれは好き!という海外ミステリ(または冒険小説)を教えてください。できれば、どのように好きなのかも解説してください。(RM さん)

たくさんあるので難しいですね(笑)。あえてひとくくりにするなら"イギリスの冒険小説のクラシックなもの"でしょう。ハモンド・イネス、ジャック・ヒギンズ、アリステア・マクリーン、セシル・スコット・フォレスターといった作家の作品です。
ひとつには国柄もあると思います。基本的にアメリカのこのたぐいの作品は、純然たる冒険小説とはいいがたいような気がします。アメリカという国はナショナリズムが強い面もあり、またそれを旗印にひとつの国にまとまっています。ところが、イギリスはそうではなく、冒険はもっと個人の利害にまつわる要素が濃い。それに、スコットランド、アイルランド、イングランドが複雑にまじりあって、イギリスという国をこしらえています。そうした英国人気質とでもいうものが、冒険小説に色濃く出ています。
そのあたり、上記の作家たちの冒険小説を読んでいないひとには、説明のしようがありません。好きな作品の気に入ったところもしかりです。象について何人もが説明するジョークを知っていますか? あれといっしょです。映画でもそうでしょう? 見たことのあるひとには、ほらあそこが……と話ができる。でも、そうでない相手には、どこがおもしろいのか、うまく伝えられません。好きな冒険小説を列挙しますから、とにかく読んでみてほしいと思います。アメリカ


の作品も混じっています。自分が訳したものは入れません。興味を持ったなら、文庫目録で調べてみてください。ここでは内容には触れません。

ジャック・ヒギンズ『鷲は舞い降りた』
ハモンド・イネス『北海の星』
アリステア・マクリーン『女王陛下のユリシーズ号』
セシル・スコット・フォレスター『海軍士官候補生』をはじめとするホーンブロワー・シリーズ
ディック・フランシス『利腕』
デズモンド・バグリイ『ゴールデン・キール』
ギャビン・ライアル『もっとも危険なゲーム』
ジョン・ル・カレ『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』をはじめとするスマイリー三部作
トレヴェニアン『シブミ』
クレイグ・トーマス『ファイアフォックス』
J・C・ポロック『樹海戦線』
トム・クランシー『レッド・オクトーバーを追え』
ブライアン・フリーマントル『消されかけた男』
マイケル・バー=ゾウハー『エニグマ奇襲指令』

……まだまだありますが、挙げきれません。一冊も読んでいないとしたら、人生をだいぶむだにしていますよ。

 
好きな翻訳家、お手本にしている文章家はいらっしゃいますか? (JD さん)

文章家? 翻訳家と対照させるなら、「作家」でしょう。むろん多大な影響を受けた作家や尊敬する翻訳家はいますが、手本はありません。原書と対峙するときに、そういうものが介在する段階ではありませんから。ただ、つねに言葉を吸収し、咀嚼してはいます。


また、たんなる好みの問題ではなく、読んでいて安心できる文章が好きです。文章を読んだときに、"自分と波長が合う"と思うことがあります。合わなければ合わないで、おもしろがることもできます。その両面を楽しみながら読みます。

 
料理に目覚めたのはいつ頃ですか? プロの料理人になろうと思ったことは?(りょう さん)

"目覚めた"とはどういうことでしょう? 「それが必要であると悟る」「心の迷いが解けて本心に立ち返る」それとも「隠れていた本能が働きはじめる」--?
受験勉強のころに夜食を作ったのが、おそらく料理をはじめた最初だと思います。家族は寝てしまい、自分でつくらなければならない--だれでもやっていたでしょう。でも、これが料理といえるかどうか……。
自宅に友人を呼んで、自分で料理を作るということをはじめたのは、四、五年前です。たまたま料理をこしらえたら評判がよくて、それがい


までもつづいているというところでしょう。ひとに出してよろこんでもらえるのは、うれしいものです。
味付けの濃いものや化学調味料を使ったものは食べたくないというのも、料理をやる理由のひとつです。美食ではなく、健康管理のための料理です。
プロの料理人になるなど滅相もない。馬鹿な質問をしないでください。料理人になるには、十代から修行しなければいけません。帝国ホテルのシェフも、最初は鍋磨きからはじめます。考えたこともありません。

 
ギターを弾くということですが、どんな音楽が好きですか? 音楽に関する話を聞かせてください。 (黒牛 さん)

音楽はジャンルを問いません。ひとつの種類しか聴かないというのは狭量すぎます。本もおなじでしょう。この世には面白い本とつまらない本の二種類しかないと、モームがいっていませんでしたか?
先日亡くなった好きなギタリスト、チェット・アトキンスは、ジョージ・ハリスンも敬愛していて、ビートルズの初期はおなじメーカーのギターを使っていました。チェットはナッシュヴィル・サウンドによってカントリー・ミュージックの隆盛の基礎を築いたひとですが、クラシックのギタリ


ストとも、ロックのギタリストとも競演していますし、アール・クルーのようなフュージョンのギタリストを見出してプロデュースするというようなこともやっています。音楽とはそういうものです。私のバンドはカントリーですが、みんないろいろな音楽に通暁しています。
音楽は遊びではあるのですが、バンドはチームプレイなので、いいかげんなことはできません。どこかで聞いた文句ですが、腕はプロ、心はアマチュアというのが理想です。

 
 
伏見先生は高校時代から原書を読んでいらしたとのことですが、とくに学校英語以外の勉強をされていたのですか? (ペッカー さん)
学校英語というものがあるのかどうか、よくわかりません。学校数学というのはありませんよね。勉強は学校でするものだから、英語の勉強は学校でやっただけです。原書を読むというのは読書(ちなみに、中学から『星の王子様』程度のものは読んでいました)で、これを勉強というなら、ただぶらぶら歩くのがマラソンの練習になってしまいます。
高名な翻訳家のT口先生は、どうして翻訳がそんなにうまいのかときかれて、「おれは天才だから」と答えたそうです。
友だちのS野画伯は、美術学校に行っていないのにイラストレーターとして成功しているのはなぜかときかれて、「おれは天才だから」と答えました。誤解しては困りますが、これはけっして傲慢な発言ではありません。この場合、天才とは、豊かな性能にめぐまれ、なおかつその才能を磨くのに最大限の努力をはらっている

が、それを苦痛に感じないし、そうした努力をひとに自慢もしないひと、という意味です。それに、馬鹿な質問をするな、という揶揄がふくまれています。
昔、母がよく、「玉も磨かずば光るまい」とか「能ある鷹は爪を隠す」といいました。わかりますか? こういう質問には、まともに答えられないのです。くわしくいえば自慢になる。それで、「おれは天才だから」と答えるのも、ひとつの方策でしょう。
さて?学校英語?ですが、よい先生に恵まれれば、高校時代の英語の勉強はそれでじゅうぶんではありませんか? probablyは「たぶん」ではなく「十中八九」である、wetは「濡れている」ではなく「びしょびしょ」である、といったようなことを、リーダーの先生が教えてくれました。それはいまも役立っています。知らなかった? 辞書を引きなさい。

 
 
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