【アメリア】対談の部屋 9-4 翻訳小説にタイトルをつけよう!
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<第9回>  全6ページ
第9回 翻訳小説にタイトルをつけよう!

タイトル考案の極意!?

- - 平田さんがこのタイトル公募に応募しようと思ったきっかけは?


平田:アメリアのホームページでこの公募を見つけたんですが、実はその時は別の公募に夢中で、こちらは後回しにしていたんです。決して“懸賞マニア”というわけではないんですよ。でも、入る予定のフランス語の仕事が延期になってしまって、どうにかして稼がなければと思っていたところで、インターネットで賞金が50万円の川柳と20万円の短歌の公募を見つけたので、そちらに力を入れていたんです(笑)。タイトル公募のほうも、あらすじを読んで少しは考えていたんですが、気が付いたら締切の当日で、もう考える時間がなくて半分諦め気分で応募しました。ただ、講評で「リズムが良い」って褒めていただいたんですが、今思うと、頭の中にずっと五七五のリズムがあったから、それが良かったのかもしれないですね。

:翻訳者になろうという人にとっては、身につまされる話ですね。仕事がこないから懸賞で稼ごうというのは(笑)。

- - 選考はどのように行われたのですか?

:最初に私が30ほどを選んで、社内のスタッフにどれがいいかアンケートをとりました。実は、この段階で私としては平田さんのこのタイトルになるだろうと思っていたんです。アンケートの結果も案の定、男性からも女性からも一番支持されていました。

- - 最終決定はどのように?


:アンケートの結果、上位5つを再検討して、最終的には担当者である私が決めました。良いタイトルかどうかは、出してみなければわからない部分もあるので、どのタイトルにすればどれくらい売れるかなんて、誰にも予測できないわけです。

- - 他にはどんなタイトルがありましたか?

:同じタイトルもたくさんあって、一番多かったのは『サラの選択』でした。

平田:同じものがいっぱいあったというのには驚きです。ちなみに、私のタイトルは、他にはいらっしゃらなかったんですか?

:はい、あのタイトルは平田さんだけでした。最終選考に残ったものは、一人だけというものが多かったです。オリジナリティは大切ですね。歌の歌詞にあったかなというような、どこかで聞いたことのあるフレーズが多かったです。今回の公募はアメリアのホームページで告知しましたが、懸賞サイトなどでも紹介されていましたし、アメリア会員以外でも応募できたので、いつもタイトルの公募に応募しているような、すごく手慣れた感じの作品もたくさんありました。

- - 一般の方がつけたタイトルを見て、編集者として勉強になったことはありますか?


:はい、いろいろと考えさせられました。一番驚いたのは横文字やカタカナが多かったことです。例えば、『バチェラー・ガールズ』といった造語や、和製英語かなと思わせるものも多かったです。昨年、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』という映画が公開されましたよね。あの影響かもしれません。

桜田:そうなんですか。私はカタカナのタイトルには抵抗があります。

:私もそうです。

桜田:例えば、村上春樹さんが『キャッチャー・イン・ザ・ライ』(J.D. サリンジャー著/白水社)を出しましたが、有名な本だから原題を知っている人は大勢いらっしゃるでしょうが、“キャッチャー”とくれば普通は野球の本だって考えるでしょう! 私は、そう思うんですよ。

:確かに、“キャッチャー”ですからね。でも、村上春樹さんにもの申すなんてすごい!

桜田:いや、一番わかりやすい例かなと思って……。

- - 桜田さんは翻訳者として決定したタイトルを聞いたときはどう思いましたか?

桜田:うまいのを考えるなって思いました。私だったら絶対に原題どおりの『花嫁候補ナンバーワン』から離れられません(笑)。実は、タイトル公募の話を聞いたときに、友達数人に応募したらって勧めたんです。そしたら、SMAPの『世界にひとつだけの花』と似ているねって言って、思いつくタイトルはみんな『ナンバーワンよりオンリーワン』みたいな感じでした。

:そうそう、SMAPの歌に影響を受けたと思われるタイトルもたくさんありました。『ひとりの私』とか。

桜田:私のまわりはみんな同じような発想だったのに、そうじゃなくて“昔の自分を思いだして、あの頃の自分で恋をしたい”という方向にいったというのが、すごいなぁ、オリジナリティがあるなと思いました。

平田:「オンリーワン」というのは、やはり私も最初は考えました。それから、できるだけ原題に沿ったタイトルにしようとも考えました。というのも、パリで翻訳を勉強していたときは「単語ではなく意味を訳しなさい」と教えられてはいたのですが、私はそれには抵抗があって、特に文学の翻訳においては言葉そのものが大切だと思っていたからです。でも今回は特に、原題にこだわりすぎるとつまらないタイトルになってしまいそうで……。最終的には、“自分だったらどんなタイトルなら本屋さんで手に取ってみようと思うかな”と考えながらつけました。その頃、ちょうどフランス大使館のボランティアで書評を書いていて、それはまさにその本を読んでみたいと思わせるための文章だったので、タイトルを考える時にもその感覚が働いたんだと思います。
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