【アメリア】対談の部屋 9-6 翻訳小説にタイトルをつけよう!
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第9回 翻訳小説にタイトルをつけよう!

翻訳は“愛”か“仕事”か……もちろん両方です

平田:共感する部分が自分の中にあると訳しやすいというのはよくわかります。では、共感する部分のまったくない、全然違う世界を訳さなければならない場合はどうするんですか?

桜田:それが私の場合は、全然違う世界でも、何となく共感できる部分を見つけることができるんです。仕事として訳しているうちに作品に愛着が沸いてくるんですよ!

:私も桜田さんといっしょで、やっているうちに愛着が沸いてきますね。

平田:それがプロなんでしょうね。

桜田:共感するものしか訳せないとなると、仕事として成り立たないですからね(笑)。

:もちろん、沸かない本も中にはありますが、そういう本は結果として売れませんね。それとはまったく逆に、編集者の思い入れが強すぎても、独りよがりな本になってしまって、読者の共感を得られないことも多い。だから、作品の持っているポテンシャルと自分がコミットする度合い、そのバランスをとることが大切だと思っています。ものすごく特殊な本でマニアックなファンがいるのはわかっているけど三千部しか売れないだろう本と、20分もあれば読み終わる本だけど何十万部という可能性がある本と、どれも全部仕事ですから。

平田:実は、私もフランス語のエッセイを一冊翻訳したんですが、私は自分が惚れ込んだ本でないと訳せないですね。読んでいていいなと思う本があっても、訳そうとまでは思いません。今回、全部訳した本は、そうせずにはいられなかったから訳してしまった、という感じなんです。ただ、思いこみがありすぎたせいか、50、60代の男性が書いたものだったんですが、ふっと気を抜いてしまうと、いつの間にか私の言葉、つまり30代の女性の言葉になってしまって、あわてて書き直したりもしました。

桜田:そういう惚れ込んだ本を訳すというのは、翻訳者として憧れますよね。

:編集者としても、そういう仕事をしたいです。

平田:でも、惚れ込んだだけに、この本を訳すのは本当に私でいいんだろうかと悩んだ時期もあったんです。そのとき私を救ってくれたのが、村上春樹が『翻訳夜話』(村上春樹・柴田元幸著/文春新書)の中で言っていた言葉で、確か、翻訳者にとっていちばんだいじなのは作品に対する偏見に満ちた愛、それさえあれば他には何もいらない、というような内容だったと思います。私よりもフランス語ができる人は星の数ほどいるし、私よりもちゃんと訳せるという人もかなりの数いるだろう。でも、私ほどこの作品に惚れ込んでいる人はいないはずだ。そう思えたから訳すことができたんだと思います。

--最後にひとつお聞かせ下さい。今回のようなタイトル公募のコンテストは、今後も行う予定ですか?

:タイトルの公募については今のところ予定はありませんが、新しい出版社ですので、いろいろと新しいことに挑戦していきたいと考えています。アメリアのホームページで突然募集することもあるかもしれませんので、楽しみにしていてください。
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